児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ダウンロード販売の事例(熊本県警)

 大阪高裁にはダウンロード販売は提供罪にあらず公然陳列罪であるという判例が2件あるのですが・・・
 大阪高裁に言わせれば、ダウンロード販売が「わいせつ電磁的記録頒布罪」「児童ポルノ提供罪」だというのは奥村弁護士独自の見解なんですが、大丈夫か?

http://www.police.pref.kumamoto.jp/kouaniinkai_HP/teirei%20H24/240426.htm
(5) 全国初の仮想通貨を利用した児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件の検挙について
【報告の要旨】
 少年課及び熊本北警察署は、4月11日、仮想通貨を利用した児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件につき、
   宮崎県西都市居住 会社員 A(18歳、男性)
   三重県四日市居住 無職   B(30歳、男性)
   東京都大田区居住 大学生 C(20歳、男性)
を、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童ポルノ提供)違反、わいせつ電磁的記録頒布などで通常逮捕した。
 被疑者Aは、仮想通貨利用による児童ポルノ等の販売サイトを開設し、被疑者B、Cは、同サイトに児童ポルノを出品して不特定多数に児童ポルノ等のファイルを販売し、もって児童ポルノ等を提供したものである。
 仮想通貨を利用した児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件の検挙は、全国初である。

【委員からの質問及び警察からの説明等】
 委員から、「仮想通貨ということであるが、換金するのか。」旨の質問があり、警察から「直接現金化はできないが、サイト内で売買したり、ネット上のポイントに交換している。」等の説明が行われた。

児童ポルノ提供、18歳少年に容疑 仮想通貨使ったサイト 【西部】
2012.04.12 朝日新聞 
 仮想通貨を使った児童ポルノサイトを運営したとして、熊本県警熊本北署と県警少年課は11日、宮崎県西都市の少年(18)ら3人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)の疑いで逮捕し、発表した。3人とも容疑を認めているという。同署によると仮想通貨を使った児童ポルノサイトの摘発は全国で初めて。
 同署によると、少年は児童ポルノ画像を売買するインターネットのサイトを立ち上げた疑い。両容疑者は昨年10月中旬ごろ、少年が立ち上げたサイトに画像を投稿した疑いがある。サイトは仮想通貨を使い、画像を投稿したり、ダウンロードしたりすることで、1ポイントを0・1円とするポイントの授受ができる。たまったポイントは現金に換金する仕組みもある。サイトには約6千枚が投稿されていた。

阪高裁H23.3.23(神戸地裁H22.11.29)→上告中
 1  法令適用の誤りの主張について
 刑法175条が定めるわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい(最高裁平成13年7月16日第三小法廷決定・刑集55巻5号317頁参照),児童ポルノ法7条4項前段の児童ポルノ公然陳列罪における「公然と陳列した」との要件についてもその文言に照らしてこれと同旨であると解するのが相当であるところ,本件は,児童ポルノを含むわいせつ図画の画像情報が記憶,蔵置された, わいせつ物であり児童ポルノに当たるハードディスクを内蔵したパソコンをインターネットに接続してファイル共有ソフトの共有機能を作動させ,不特定多数のインターネット利用者にこれらの画像が閲覧可能な状況を設定したというものであるから, わいせつ物陳列罪ないし児童ポルノ公然陳列罪が成立することは明らかである。なお,弁護人の主張にかんがみ,付言するに,児童ポルノ法の平成16年改正で,電磁的記録の提供(同改正後の同法7条4項後段)を新たに処罰の対象として新設し,かつ,児童ポルノの定義(同法2条3項)に「電磁的記録に係る記録媒体」を明記した趣旨は,同改正前の同法において,児童のポルノに係る電磁的記録である画像情報を記録煤体に記憶,蔵置させ,これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧可能な状態にした場合には,裁判実務上,上記画像情報が記憶,蔵置された記録煤体を有体物としての児童ポルノとし,その公然陳列があったとして児童ポルノ公然陳列罪が成立すると解されていたところ,改正法では,そのような解釈を前提として,同改正前の同法では処罰の対象として含めることに疑義があった電子メールにより児童のポルノを内容とする電磁的記録を送信して頒布する等の行為の処罰規定を新設するとともに,この改正に伴い,解釈上の疑義が生じないように児童ポルノの定義中に「電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明らかにしたもの,すなわち記録媒体自体の公然陳列等の行為が電磁的記録に係る記録煤体に係る罪, つまり有体物である児童ポルノに係る罪により従来通り処罰されることを明示したものと解される。このような同法の改正の趣旨・内容にかんがみれば,本件で児童ポルノ公然陳列罪が成立することは明白である。以上と異なる弁護人の主張は,結局のところ,独自の見解に基づくものであって採用できない。