児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

不正指令電磁的記録供用罪における「電子計算機」の定義

 電子計算機の定義規定がありませんが、携帯電話とかスマートフォンも電子計算機に該当するらしいです
 昭和の刑法改正の時の解説があります。

米澤慶治「刑法等一部改正法の解説」p66
ここに「電子計算機」とは、いわゆるコンピュータと同義であり、自動的に計算やデ−タの処理を行う電子装置のことである。汎用コンピュータをはじめとして、ミニコンピュータ、オフィスコンビュ夕、パーソナルコンピュータ等がその代表的なものであるが、その規模、性能等に関する限定は設けられていないから、他の機器に組み込まれているマイクロコンピュータもここにいう電子計算機に当たる。したがって、例えば自動販売機や自動改札機等に組み込まれているマイクロコンピュータもここにいう電子計算機に当たり、これに用いられるプリペイドカードや切符等の磁気記録面等も電磁的記録に含まれることとなる。なお、電子計算機の計算方式には、データを通常二値(オンとオフないし0とl) で扱うディジタル方式、データを連続量として扱うアナログ方式、両者を組み合わせたハイブリッド方式があるが、一般の事務処理に広く使用されており、電磁的記録の不正作出・供用罪や電子計算機使用詐欺罪の成立が問題となるのは、通常ディジタル方式による電子計算機である。
なお、電子計算機についての定義規定が設けられていない理由は、電子計算機といえば、自動的に計算やデータ処理などの情報処理を行う電子装置であるという一般的な理解が既に定着していると認められるからであり、現に他の法令においても、電子計算機自体についての定義規定を設けている例はない。電子計算機について、例えば、あらかじめ定められた一定のプログラムを順次自動的に実行して情報処理を行う電子装置というように、その情報処理の方式の面から定義を設けることも考えられないではないが、現在でこそ右のようないわゆるノイマン型コンピュータが主流となっているものの、既にいわゆる人工知能あるいは第五世代コンピュータといわれるような、より柔軟に人間の思考形態に近い情報処理を行う電子計算機の研究も進んでいることにかんがみると、現時点における特定の情報処理の方式をもって電子計算機を定義することは相当ではない。また、電子計算機の性能や利用形態といった観点から定義規定を設けることも考えられないではないが、電子計算機には、いわゆるスーパーコンピュータや汎用大型コンピュータから他の機器に組み込まれたマイクロコンピュータのようなものまで種々の性能や利用形態のものがある上、電子計算機に関する技術の進歩には著しいものがあるため、現時点で考えられる性能(演算速度や主記憶容量等)や利用形態(パッチ・システムかオンライン・システムか等)等を前提として一律にその範囲を限定したのでは、個々の場面において具体的な法益の保護に欠けることともなりかねず、やはり相当ではないと考えられる。なお、個々の構成要件における電子計算機は、例えば、電磁的記録の不正作出・供用罪においては、それが権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を使用するに足る規模、性能を有するか、電子計算機損壊等業務妨害罪においては、それ自体が電子計算機としての一定の独立性をもって業務に使用されているか等、それぞれの保護法益との関係からおのずとその具体的な範密を異にすることとなるのは当然である。

刑法第168条の2(不正指令電磁的記録作成等)
正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120518-00000029-mai-soci
<情報流出アプリ>都内IT会社など家宅捜索
毎日新聞 5月18日(金)11時9分配信
 スマートフォン(多機能携帯電話)の電話帳データを勝手に外部に流出させるアプリケーションソフト(アプリ)が出回った問題で、警視庁が東京都内のIT関連会社の事務所や同社役員の自宅など数カ所を不正指令電磁的記録(ウイルス)供用容疑で家宅捜索していたことが分かった。この会社の関係者が流出に関与したとみており、流出先などについて詳しく調べる。

 捜索容疑は今年4月5〜13日、グーグルが運営する公式のアプリ販売サイトでウイルスが仕組まれたアプリを無料公開したとしている。このアプリをダウンロードすると、利用者の個人情報や電話帳に登録されている個人名、電話番号、メールアドレスなどのデータが外部のサーバーに送信されていた。

 サイバー犯罪対策課によると、情報セキュリティー会社から提供を受け、ウイルスが仕組まれていた15種のアプリを解析したところ、個人情報データの流出先が、すべて国内の同じレンタルサーバーだったことが判明。このサーバーにIT関連会社や同社役員宅、別の個人宅など数カ所にあるパソコンからの接続履歴があることが分かった。警視庁は17日に家宅捜索し、パソコンや書類など関係資料を押収した。

 情報セキュリティー会社などによると、問題のアプリはアンドロイド端末向け人気ゲームなどを動画で紹介する内容。実在するゲーム名の末尾に「the Movie」などと付けられ、これまでに28種類が確認されている。ダウンロードした人は7万〜30万人と推定され、数百万人分の個人情報が流出したとみられる。