児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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賠償訴訟:性犯罪被害者に示談強要「違法」 弁護士に支払い命令−−富山地裁

 普通、「弁護人限り」ということで被害者の連絡先が伝わってきますので、被告人の関係者に教えてしまうのはまずいですね。被告人の関係者が謝罪のために会うとしても、弁護士事務所とか、弁護士会とか、警察署とかです。家を知られると怖いから。

http://mainichi.jp/kansai/news/20120121ddn041040004000c.html
賠償訴訟:性犯罪被害者に示談強要「違法」 弁護士に支払い命令−−富山地裁
 富山県で03年に起きた性犯罪の被害者の女性が加害者の男(33)=強姦(ごうかん)罪などで実刑判決=やその弁護人の男性弁護士(44)を相手取り、執拗(しつよう)に示談を迫られ精神的苦痛を受けたとして880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があり、富山地裁が弁護士の行為を「違法」と認定していたことが分かった。判決は12月14日。男と弁護士に計583万円の支払いを命じた。弁護士は「守秘義務があるので話せない」とコメントしている。
今回の判決などによると、女性は示談を強く拒否していたが、弁護士は加害者の家族に女性の住所を伝え、家族が女性宅を10年7月に訪問。さらに、刑事裁判開始後の同年8月、女性の家族に「女性は検察官に都合よく利用されているが、裁判が終わると不要品を捨てるように相手にされなくなる」などと、示談を迫る手紙を送った

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120122-00000206-mailo-l16
 「とやま被害者支援センター」(富山市牛島町)の高野佳子・犯罪被害者直接支援員は「性犯罪の被害者は事件のことを一切断ち切りたいと思っている。加害者の関係者が謝罪に来ると言っても、一切顔も見たくない状態だ」と語る。また、県警犯罪被害者支援室の女性心理カウンセラーは「性犯罪の被害者は、世の中に対して不信感を抱いてしまい、それが何カ月たっても消えない」と話す。性犯罪の場合は被告との言い分が食い違う場合も少なくないといい、法廷で証言せざるを得ない場合があるが「同じ場に加害者がいる、同じ空気を吸っていると思うだけでもつらい」と指摘する。
 一方で、被害者に対して示談や弁償を申し入れるのは、被告の刑事罰を少しでも軽くするための「弁護活動」だ。県内のある弁護士は「弁護人になったら、被害者への被害弁償は必ずするよう被告に勧めている。刑を軽くしてもらうためでもあるし、被告本人の反省をうながすためでもある」と話す。しかし、被害者が断ればそれ以上は深入りしないという。
 高岡法科大学の関根徹准教授(刑事法)は「弁護士として、何回か示談をお願いして相手方に折れてもらうというやり方はある」としたうえで、「うそをついたり不利益が生じると言うなどその方法が詐欺的であったり、威圧的だと取られかねないものであれば問題になる。被害者を被害者として尊重しつつ、丁寧にお願いすることが大切だ」と指摘している。

前例があるので、こういうことはできません。

高松高裁H17.12.8
判時 1939号36頁
  (3) 不法行為の成否についての検討
 上記(1)で認定した事実関係をもとに、一審被告Y2のした弁護活動が、一審原告に対する関係で不法行為を構成するか否かを検討する。
 ア まず、一審被告Y2が一審原告に対し、示談、面談を強要した等の点について検討する。
 上記(1)認定の事実によれば、一審被告Y2は、平成一三年四月二五日の午前〇時(深夜)、一審原告が一審被告Y1の人格を無視した行為によって傷ついており、他人に会うことや親に知られることを嫌がっていることを認識しながら、一審原告に対し、執拗かつ強引に面会を求めた上、親との面会を求めたり、裁判の公開をことさら強調して、告訴の取下げと示談を強硬に迫っている。更に、一審被告Y2は、同日、B課長から、「一審原告は一審被告Y2にはもうこれ以上会いたくないと言っている。」と告げられながら、同月二七日には、嫌がる一審原告に対し二回にわたり電話をかけ、一審原告の困惑に付け込んで、強引に一審原告との再度の面会を実現させ、一審原告に対し、再度、告訴の取下げ等を強硬に迫っている。そして、一審被告Y2は、一審原告がどうしても告訴を取り下げないとみるや、同年五月七日には、一審原告を虚偽告訴罪で告訴し、告訴理由書(甲六)を提出している。
 一審被告Y2のこれら一連の行為は、一審原告の心情を全く理解することなく、強引かつ一方的なものであって、起訴前の弁護活動であるとはいえ、社会常識に照らし、明らかに行き過ぎであるというほかない。
 また、一審被告Y2は、一審原告やB課長に対して面談を申し入れた際、わざわざ広島から来ているとか、一審原告が面会に応じないのは人道に反しているなどと述べているが、一審被告Y2が広島から来ているか否かは、一審原告にとっては全く関係のない事柄であるから、一審被告Y2の「わざわざ広島から来ている。」云々の点は、遠隔地で身柄を拘束された被疑者の弁護を引き受けた一審被告Y2の身勝手かつ自己中心的な考えというほかない。加えて、一審原告は、そもそも、一審被告Y1との間で示談を成立させるべき法的義務を負っていないばかりでなく、示談交渉に応じるべき法的義務も負っていないのであるから、一審被告Y2の「一審原告が面会に応じないのは人道に反する」云々の点もまた、刑事弁護人たる一審被告Y2の身勝手かつ自己中心的な考えというほかない。
 なお、文献である「刑事弁護の手続と技法」には、起訴前弁護の在り方について、被害者が存在し、親告罪であったりした場合には、被疑者が冤罪の訴えをしていない限り示談した方がよいと指摘した上、被害者のもとへ直接足を運び、親や被疑者の家族を同行して謝罪に行くのが基本であり、どうしたら示談できるかについては、誠意を見せる、時間をかけるくらいで王道はないが、差し当たり示談の意思のあることと、当面はこの程度しか資力がないという謝罪の手紙を出し、振込口座名と今の気持ちなりを記入してほしいという回答書を返信用封筒で送ると、通常は八〇%くらい返事は返ってくる、旨の記述(一三四頁ないし一三五頁)がある。
 しかし、一審被告Y2の上記一連の行為は、上記文献の記述に照らしても、一審原告の心情を全く理解することなく、強引かつ一方的なものであって、およそ一審原告に対し誠意を示したとは到底評価できない。
 以上検討したところによれば、一審被告Y2の上記一連の行為は、社会的相当性を逸脱したものとして違法性を帯び、これにより一審原告は精神的苦痛を受けたものと認められるから、不法行為を構成するというべきである。
 イ 次に、一審被告Y2が一審被告Y1の代理人として一審原告を虚偽告訴罪で告訴した手続(当審追加主張)について検討する。
 上記(1)認定の事実によれば、一審被告Y2が一審被告Y1の代理人として一審原告を虚偽告訴罪で告訴したのは、一審被告Y1が強姦罪で勾留中(勾留延長後のもの)である平成一三年五月七日であり、しかも、一審被告Y2は、同年四月二八日には一審被告Y1から告訴手続に必要な委任状の交付を受けていたことからすると、上記告訴は、一審被告Y1の刑事処分を有利に図るためになされたものであるといわざるを得ない。
 しかし、上記二(2)で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第三の一(2)説示のとおり、一審被告Y1が一審原告と性交渉を持つ過程で、一審被告Y1が一審原告に暴力を振るったり、明らかに脅迫的な言辞を用いてホテルに連れ込んで性交渉に及んだことを窺わせる事情は見当たらないのであるから、一審被告Y2が、強姦罪の構成要件の一つである、姦淫の手段としての暴行又は脅迫の事実があったと認められない以上、強姦罪が成立しないものと考え、一審原告の強姦の申告への対抗上、一審被告Y1の代理人として一審原告を逆に虚偽告訴罪で告訴したとしても、直ちに違法性を帯びるものと断ずることはできない。
 また、上記虚偽告訴罪で告訴した後に提出した告訴理由書(甲六)は、一審原告の人格や名誉を損なう表現を用いており、弁護士として努めなければならない高い品性の保持(弁護士法二条)という観点からみて、不適切であると非難することはできるが、全体としてみて社会的相当性を大きく逸脱しており、正当な弁護活動の範囲を超えていて違法であると断することまではできない。
 したがって、一審被告Y2が一審被告Y1の代理人として一審原告を虚偽告訴罪で告訴した手続が、不法行為を構成するものとは認められない。
 ウ 次に、本件訴訟及びこれに先立つ本件仮処分事件及び本件保全異議事件において、一審被告Y2が一審被告Y1の代理人として答弁書や準備書面等を提出した点(当審追加主張)について検討する。
 上記(1)認定の事実のとおり、本件訴訟及びこれに先立つ本件仮処分事件及び本件保全異議事件において、一審被告Y2が一審被告Y1の代理人として提出した答弁書や準備書面等は、基本的に告訴理由書(甲六)の記載内容と同趣旨の記載がなされているものがあり、一審原告の人格や名誉を損なう表現を用いていると認められるから、上記イと同様、やはり不適切であると非難することはできる。
 しかし、本件事案は、一審原告と一審被告Y1との間において、一審被告Y1が一審原告と性交渉を持った意味(強姦罪の成否)、その前後の経緯について、事実関係や法的評価が激しく争われている事案であることが記録上明らかであり、そのような事案において、一審被告Y2が一審被告Y1の代理人として、自己の主張の正当性を明らかにするとともに、一審原告の主張の不当性を明らかにするため、上記のような表現を用いたものであるともいうことができることからすると、上記答弁書や準備書面等の提出が、全体としてみて社会的相当性を大きく逸脱しており、正当な弁護活動の範囲を超えていて違法であると断することまではできない。
 したがって、一審被告Y2が、一審被告Y1の代理人として、上記答弁書や準備書面等を提出したことも、不法行為を構成するものとは認められない。
 エ 次に、告訴手続、一審原告代理人弁護士の受任後の一審被告Y2の弁護活動(上記イ及びウを除く。当審追加主張)について検討する。
  (ア) 一審原告は、一審原告代理人弁護士が一審被告Y2に対し、平成一三年五月三日到達の内容証明郵便で、一審原告が現時点で示談する意思のないこと、一審原告やその家族に直接面会することを拒否するなどを通知したにもかかわらず、一審被告Y2は、その旨を一審被告Y1の父に周知せず、同人が一審原告の家に直接電話をかけ、一審原告の母に本件被害事実を暴露するのを放置したのであり、一審被告Y2の上記行為は、弁護士倫理四九条の規定又はその趣旨に反し、不法行為を構成する旨主張する。
 弁護士倫理四九条は、「弁護士は、相手方に弁護士である代理人があるときは、特別の事情のない限り、その代理人の了承を得ないで直接相手方本人と交渉してはならない。」と規定しているところ、同条の趣旨は、一方の当事者の代理人が、他方の代理人に無断で、直接相手方本人と交渉したとすれば、それは相手方に代理人を選任した意味を失わせることとなり、相手方を不利益に陥れるおそれが大きく、公正の精神に反する行為であり、また、そのような行為は、相手方代理人を依頼者との関係で窮地に陥れかねず、弁護士間の信義にももとることによるものと解される。
 しかし、一審被告Y2は、一審被告Y1の依頼を受けて弁護活動を行っていた者であるから、一審原告代理人弁護士から受任通知を受け、一審原告及びその家族に直接面会することを拒否する旨の通知を受けたことにより、委任関係のない第三者(一審被告Y1の家族)に対しその旨を周知させる方が望ましいとはいえるものの、法的に周知義務があるとまで解することは困難である。
 したがって、一審被告Y2が一審被告Y1の父に対して周知させなかったことにつき、不法行為を構成すると認めることはできない。
  (イ) 一審原告は、「一審被告Y1は、平成一三年七月二三日の刑事公判廷において、自らがコレクションしている裸体の写真等に強い執着心を示し、起訴事実に関する写真以外は所有権放棄しない意思を示したところ、一審被告Y2は、弁護人としてこれを諭すどころか、一審被告Y1に対し、本件フィルムについて所有権放棄をしないよう指示し、更に、一審被告Y1が有罪判決を受けた同年八月六日、徳島地方検察庁に出向き、現実に本件フィルムの還付を求めたのであり、一審被告Y2の上記行為は、もはや正当な弁護活動の枠を超え、一審被告Y1の一審原告に対する人格権侵害に積極的に加担するものというほかなく、不法行為を構成する。」旨主張する。
 しかし、弁論の全趣旨によれば、一審被告Y2は、一審被告Y1が一審原告と性交渉を持ったことが合意によるものであり、いわゆる「和姦」であることの証拠であるとの考えのもと、強姦の事実を否認し、自己が被害者であると主張する一審被告Y1に対し、本件フィルムについて所有権放棄をしないよう助言したにとどまるものと認められ、一審被告Y1が本件フィルムの還付を受け、これを第三者に公開することを想定した上、一審原告主張の指示をしたとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
 したがって、一審原告の上記主張は採用することができない。
   (4) 一審原告の被った損害額
 一審被告Y2は、一審原告に対する示談、深夜の面談の強要の不法行為によって一審原告の被った精神的苦痛を金銭で慰謝すべき義務のあるところ、一審被告Y2の上記不法行為の態様、程度、方法に加え、一審被告Y1の不法行為によって一審原告の受けた心の傷(外傷後ストレス障害)は、一審被告Y2の上記不法行為も少なからず影響しているものと考えられること、一審被告Y2は、当審口頭弁論終結(弁論再開前のもの)の間近になって、一審被告Y1の代理人として、本件訴訟と争点、事実関係をほぼ共通する別件訴訟を広島地方裁判所に提起し、一審原告に応訴の負担を強いていることをも併せ考慮すると、一審原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は、八〇万円と認めるのが相当である。
 また、本件事案の内容、請求額及び認容額、その他本件に現れた事情を総合すると、一審被告Y2の上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の損害は、一〇万円と認めるのが相当である。
   (5) 小括
 したがって、一審原告の一審被告Y2に対する請求は、九〇万円(慰謝料八〇万円及び弁護士費用一〇万円の合計額)及びこれに対する不法行為の後である平成一三年八月六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余(当審予備的追加的附帯請求を含む。)は理由がないことになる。
第四 結語
 以上によれば、一審原告の一審被告Y1に対する請求は、損害賠償請求(附帯請求につき主位的請求)及び面談強要等禁止請求をいずれも認容し、当審選択的請求(本件フィルムの廃棄請求につき当審追加請求)のうち、一審被告Y1に対し、本件フィルムを廃棄するよう求める請求を認容し、一審原告の一審被告Y2に対する請求は、九〇万円及びこれに対する(附帯請求につき主位的請求である)平成一三年八月六日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で認容し、その余(当審予備的追加的附帯請求を含む。)を棄却すべきものである。
 よって、一審原告の一審被告Y1に対する控訴(当審選択的追加請求を含む。)及び一審被告Y2に対する控訴に基づき、原判決主文第一項及び第三項を上記判断に従って変更し、一審被告Y1の一審原告に対する控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 紙浦健二 裁判官 熱田康明 島岡大雄)