児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

【EU】児童の性的搾取・児童ポルノ等の対策強化指令

原文
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2011:335:0001:0014:EN:PDF

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/pdf/02500103.pdf
立法情報
外国の立法(2012.1)国立国会図書館調査及び立法考査局
【EU】児童の性的搾取・児童ポルノ等の対策強化指令
海外立法情報調査室・植月献二
欧州連合(EU)は、児童の性的搾取及び児童ポルノ対策の現行枠組決定を廃止し、これに代わる、より具体的な犯罪規定と重い処罰を加盟国に義務付け、ポルノのネット閲覧やセックスツアー等にも対象を拡げ、犯人の告発、被害者の保護及び犯罪の防止について強化を図り、EU加盟国全体で法の統一性を高め、協力して対処する指令を2011年12月17日に施行した。

【犯罪及び罰則】次に掲げる行為に対し、それぞれに示す期間以上の自由刑を規定すること。
?故意に性的承諾年齢未満の児童を性行為に立ち会わせた者には1年、性的虐待に立ち会わせた者には2年、性行為に関与させた者には5年。同様に、児童の信頼やこれに対する権威を利用して性行為に関与させ、又は心身障害等を有する児童を対象にした者には8年、これを強制した場合は10年。また、児童を強制して第3者と関与させた者には10年。(第3条)
?性的承諾年齢未満の児童をポルノ実演に参加させた者には5年、これを強制した場合は8年。また、児童の関与を知りながらポルノ実演に参加した者には2年。同様に、児童を買春に関与させた者には8年、これを強制した者には10年。自ら児童買春を行った者には5年。(第4条)
?児童ポルノを故意に取得し、所持し又はネットで閲覧した者には1年、その配布、送信等を行った者には2年、これを製造した者には3年(第5条)。
?性的承諾年齢未満の児童と性行為を行い又は児童ポルノを製造する目的で、チャット等の情報通信技術を用いて児童を誘引した者には1年(第6条)。なお、?及び?において性的承諾年齢以上の児童を対象とする場合は、それぞれおよそ半分程度の期間を規定している。
【措置の厳格化、再犯防止】さらに、これらの罪の教唆又は幇助及び未遂を罰することとし(第7条)、心身障害等を有する弱者に対する犯罪、同居者又は複数の者による犯罪及び組織的に行う犯罪については、国内法により更に厳しい措置をとる(第9条)。
また、児童と直接関係する専門的活動を行う者でこれらの罪を犯したものについては、再犯防止のため、その資格を一時的又は永久に剥奪することができる。児童と直接関係する活動を行う者を雇用する際に、雇用者はその当該犯罪歴又は資格のはく奪について照会する権利を有する(第10条)。
【捜査及び起訴】これらの罪は、親告罪とはせず、被害者等の告訴等が取り下げられても捜査又は訴訟を続行できるものとする。警察及び司法当局は、組織犯罪捜査に活用されている効果的な手法を利用することができる。(第15条)
児童に関係する職にある者が被害児童の存在に気づいたときに当該事実を保護担当者に通報することは、当該職の守秘義務の違反とならないものとし、こうした通報行為を奨励する(第16条)。加盟国間における司法権及び起訴手続の調整を行い、国内犯又は自国民の国外犯の裁判権を確立し、国外における犯行も訴追できるようにする
(第17条)。
【被害者の保護】当局は、児童が被害に遭っていると認めた場合は、直ちにその児童の状況等に応じた援助及び保護を与えるものとし、捜査、訴追及び公判への協力が被害者の意思に反して行われないようにする。被害者にカウンセリング及び法定代理人の支援を保障し、資金不足であればその経費は無料とする。犯罪捜査における児童への面接等の方法について保護規定を設ける。(第18条〜第20条)
【広告、セックスツアー、予防】犯罪を誘発する広告及び児童セックスツアーの企画は禁止する(第21条)。犯罪防止のための教育及び訓練を行い、注意喚起のための行動をとる(第23条)。効果的な更生プログラムを作り、刑事裁判期間や刑務所の内外を問わず利用可能とする(第24条)。児童ポルノを有し、又は発信する国内ウェブサイトに対してこれを直ちに削除させ、国外におけるものに対しては削除させるよう努力する。当該国内ウェブページへのインターネットアクセスは制限することができるが、透明な手続と適切な保護の規定が設けられなければならない。(第25条)。