児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

間柴泰治「盗撮行為を規制する刑事法をめぐる論点」

阪高裁も「そのような被告人の行為によって,被害者が自己の裸体,性交場面等をだれかに撮影させ,さらにはホームページ上で公開させるような人物であるなどという,被害者に対する否定的評価が生じる」と言っています。プライバシー侵害罪ではなく名誉毀損罪である限りはこうなるでしょう。

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/pdf/073007.pdf
4 名誉毀損
 近年、女性の着替えや入浴中の姿態を盗撮した映像が、販売目的で編集され、販売される事例が多く見られる。しかし、このような販売行為については、直接これを処罰する法令は存在しない。そこで、盗撮写真又はビデオ映像を大量に頒布する行為は、被害者の全裸の姿態が記録されているという事実を摘示することによって、そのようなビデオ等の被写体となった被害者がそのようなビデオ等に自ら進んで出演したとの印象を与えかねない場合に、当該被害者に
ついて否定的な評価を生じかねないとして、当該被害者の名誉を侵害する行為だと解し、名誉毀損罪(刑法第 230 条)の成立を是認する判例がある(41)。この罪に該当する場合は、3 年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処せられる。
 ただし、このような法適用は、盗撮行為によって得られた映像等を頒布する行為に着目するものであり、したがって、盗撮行為それ自体を処罰対象とはできない。また、上記判例の立場からは、「被害者がそのようなビデオに自ら進んで出演したとの印象を与えかねない場合」でなければ成立しないとも解され、適用できる事案は限られるとも評価し得る。

(41) 東京地判平成 14 年 3 月 14 日公刊物未登載(裁判所ウェブサイト掲載)。この判例の評釈として、浦田啓一「実務刑事判例評釈(102)」『KEISATSU KORON』58 巻 2 号 , 2003.2, pp.67-74.

阪高裁平成20年10月29日
第3 奥村主任弁護人の控訴趣意のうち,訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第3)について
 論旨は,これもやや判然としないが,要するに,本件公訴事実の名誉毀損に関する部分には,上記第1において主張したのと同様に,被害者の社会的評価を低下させる事実の記載がなく,本件公訴事実には,他人の名誉を毀損する事実に関する訴因の特定を欠いているのにもかかわらず,原審は実体判決を言い渡しているのであるから,このような原審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある,旨いうものと解される。
 しかし,本件公訴事実は,被告人が被害者の裸体や性交場面等を撮影した本件動画を公開したというものであって,そのような被告人の行為によって,被害者が自己の裸体,性交場面等をだれかに撮影させ,さらにはホームページ上で公開させるような人物であるなどという,被害者に対する否定的評価が生じることは明らかであるから,本件公訴事実には,名誉を毀損する事実に関する訴因の特定に欠けるところは存しない。
 論旨は理由がない。