児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強要+3項製造罪の事案

 被害者は性的自由を害されたとしても、犯人に性的意図が無い場合は、強制わいせつ罪は成立せず、強要罪にとどまるというのです。
 しかし、撮影された画像は、一般人基準で「性欲を興奮させ又は刺激するもの」なので、3号ポルノになるというのです。一般人は興奮するけど、犯人は興奮しない画像のようです。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/111015/kgw11101502190001-n1.htm
同級生に暴行を加えたうえ下着を脱がせたとして、香川県警観音寺署は14日、暴行と強要の疑いで観音寺市の市立中学3年の男子生徒(15)を逮捕した。生徒は被害者の生徒をふだんからいじめていたといい、同署の調べに容疑を認めているという。逮捕容疑は10月12日、授業中に同級生の男子生徒(14)に脇腹を殴るなどの暴行を加え、昼休みにトイレに連れ込み「パンツを脱げ」と強要したとしている。同署によると、逮捕された生徒は、パンツを脱がせた際に被害者の下半身を携帯電話のカメラで撮影していたという。

 強制わいせつ罪傾向犯説は、学者は最近見られないと書いてると思いますが、H22の判例でも確認されています。

岡山支部H22.12.15
 ところで,原判示第3の事実は,被告人が,当時16歳の被害者Aを脅迫し,同人に乳房及び陰部を露出した姿態等をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影させたなどの,強制わいせつ罪に該当し得る客観的事実を包含しているが,強制わいせつ罪の成立には犯人が性的意図を有していることが必要であるところ,原判示第3の事実に,被告人が上記性的意図を有している事実が明示されてはいない。
 また,原判示第3の事実にかかる起訴状には,原判示第3の事実と同旨の公訴事実が記載され,その罰条として,3項製造罪のほか,「強要 刑法223条」と記載されているのみであるから,検察官において,上記性的意図を有していることも含めて訴因を設定する意思があったとは認められず,原判決が,被告人が上記性的意図を有していることも含めた訴因であることを前提に原判示第3の事実を認定したとも認められない。なお,所論は,原判決が上記性的意図を認定している旨も指摘するが,原判決は,(量刑の理由)欄において被告人に性的欲望を満たすためという動機があった旨説示しているにすぎず,(罪となるべき事実)として性的意図の存在を認定したものではないから,原判決の上記説示が上記結論を左右するものではない。
 そうすると,原判示第3の事実だけでも強制わいせつ罪が成立するとは解されず,所論は前提を欠いており,原判示第3の事実中,強要の点に刑法223条を適用して強要罪の成立を認めた原判決に法令適用の誤りがあるとは認められない。
 なお,所論は,法条競合という実体法上の問題であるから,訴訟法上の問題は無関係であり,強制わいせつ罪を構成する事実が認定された場合には強要罪は成立しない旨も主張するが,独自の見解といわざるを得ない上,原審記録を精査しても上記特段の事情があるとは認められないから,所論は失当である。所論引用の大審院判例及び高裁判例は,いずれも訴因制度が採用される以前の旧法下の事案であるか,訴因として恐喝未遂罪と強要罪が設定されている事案又は強要罪として掲げられた訴因中に恐喝罪若しくは逮捕罪に該当する事実がすべて掲げられている事案であって,本件はその射程外の事案である。

山口厚 基本判例に学ぶ刑法各論P19
本判決は「性的意図」 が要求される根拠について何も語るところがない
学説では,本判決と同様に,強制わいせつ罪について「性的意図」を成立要件として要求する見解は少数であり,多数の見解は性的意図」といった,被害者の性的自由という法益の侵害と関係のない要件を要求する理由はないと解している27。
本判決の後,女性を従業員として働かせる目的で同女を全裸にして写真撮影をしたという事案について強制わいせつの意図」があったとして強制わいせつ致傷罪(181条l項)の成立を認めた下級審裁判例があるが、そこでは,そのような怠図はわいせつ行為の認識から肯定されている。これは,実質的には本判決の立場を否定したものであるといえよう。こうした裁判例や学説の動向を考えると,本判決に現在どの程度の先例的価値があるか疑問があるように恩われる。