児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

小学校長、教室で女児のスカート内盗撮 京都府綾部市

 被害者は強制わいせつ罪(176条後段)で告訴を検討すべきです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110515-00000533-san-soci
小学校長、教室で女児のスカート内盗撮 京都府綾部市
 市教委によると、校長は今月11日、教室で下校準備をしていた女児のスカートの中を自分のデジタルカメラで盗撮。女児は気づかなかったが同級生が目撃し、保護者に報告。保護者から連絡を受けた市教委などが梅田校長に確認したところ、校長は盗撮を認め、画像も見つかった。
 市教委の久木章平教育長は「子供や保護者、市民の信頼を失墜させ、心からおわび申し上げます」としている。

 窃視罪は場所の要件でだめ

軽犯罪法
第1条〔軽犯罪〕
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

迷惑条例は放課後の教室が「公共の場所」なら可能。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20110421#1303371836

http://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/a3001388001.html
京都府迷惑行為防止条例
(卑わいな行為の禁止)
第3条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しくしゅう恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(1) みだりに、他人の身体の一部に触ること(着衣の上から触ることを含む。)。
(2) みだりに、物を用いて他人の身体に性的な感触を与えようとすること。
(3) みだりに、他人に、その意に反して人の性的好奇心をそそる姿態をとらせること。
(4) みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(次号において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、若しくは着衣の中が見える位置に鏡、写真機等を差し出し、置く等をすること。
(5) みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を見、又は撮影すること。
(6) みだりに、他人に、異性の下着を着用した姿等の性的な感情を刺激する姿態又は性的な行為を見せること。
(7) みだりに、他人に、人の性的好奇心をそそる行為を要求する言葉その他の性的な感情を刺激する言葉を発すること。

 強制わいせつ罪(176条後段)については判例

東京高裁H22.3.1
2 原判示第2の女児の下着の撮影行為について
 所論指摘のとおり,原判決が,原判示第2の女児(当時8歳。以下,単に「第2の女児」という。)のスカートを手でまくり上げた上で,その下着(パンツを指す。以下同じ。)をカメラ付き携帯電話機で撮影した被告人の行為(以下「本件撮影行為」という。)がわいせつ行為に当たると判断していることは明らかである。

 しかしながら,第2の女児のような小学校低学年の女児の下着は,スカート等の形状や女児の動作によって,日常の生活の中で他者の目に触れることがしばしばあり得るものであって,学校,公園その他の場所で,この年代の女児の下着を目にしたとしても,社会一般には,いたずらに性欲を興奮,刺激させ,性的羞恥心を害して性的道義観念に反するとはとらえられていないと思われる。無論,このような下着を単に目にする行為と,記録化する目的でこれを撮影する行為とでは,その意昧合いが異なり得るが,上記のようなこの年代の女児の下着を目にすることに対する社会通念のほか,一定のわいせつ性が認められ得る成人女性のスカート内の下着を撮影する行為(盗撮行為)であっても,強制わいせつ罪より刑の軽い迷惑防止条例違反として検挙,処罰されているのが通例であることにもかんがみると,この年代の女児の下着を撮影する行為は,通常,刑法176条の「わいせつな行為」には当たらないと解するのが相当である。そして,本件についてみても,第2の女児が犯行当時着用していたスカートは丈が短く,公園等で遊んだりしている際に,他者に下着が見えることもあり得ることが容易に想像される形状のものであって,本件撮影行為も,同女児のスカートをまくり上げて同女児が着用している下着をそのまま1回撮影しただけで,特に執ようであるなど別異の評価が問題となり得るような特別の態様のものではないから,本件撮影行為は,わいせつ行為には当たらないというべきである。

 なお,検察官は,当審公判において,女児の下着の撮影行為そのものを取り出してみると,それがわいせつ行為といえるか疑問がないではないが,被告人の内心の意図と,その余のわいせつ行為と一連のものとして行われたものであることにかんがみると,本件における下着の撮影行為及び下着内に手を入れて陰部を触る行為が全体として強制わいせつ罪の実行行為に該当すると主張するが,わいせつ行為に当たるかどうかは,社会通念に照らして客観的に判断されるべきものであって,社会通念上わいせつ行為に当たらないものが,被告人の特別の内心の意図によってわいせつ行為となることはないというべきであり,また,女児の下着の撮影に引き続いて下着内に手を入れて陰部をなでるわいせつ行為に及んだからといって,本来わいせつ行為に当たらない下着の撮影行為までがわいせつ行為に当たることになるものでもない。検察官の上記主張は採用できない。

 以上のとおり,原判決は,原判示第2につき,第2の女児の下着を撮影する行為がわいせつ行為に当たるとした点で,刑法176条の解釈適用を誤ったものといわざるを得ず,これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。

 以上によれば,上記の所論??とは趣旨が異なるものの,論旨はこの限度で理由があることとなる。

追記 5/18
 校長室だと「公共の場所」じゃないと思うんですが、教室は多数出入りしますから「公共の場所」になる可能性がある。 

校長、女児スカート内盗撮 京都・綾部 教室でしゃがみ込み
2011.05.16 読売新聞
 発表では、校長は11日午後、授業後の高学年の教室で、下校準備をしていた女児の後ろにしゃがみ込み、私物のデジタルカメラで盗撮したという。教室には担任も含めて約10人がおり、複数の児童が目撃。13日夜、うち1人が保護者とともに市教委に訴えた。
 市教委が14日、校長に事情を聞いたところ、「校内風景の撮影でデジカメをよく使う」と否定した。しかし、デジカメを提出させると、消去された画像が34枚あることが判明。スカート内を写した2枚が復元され、校長は「すみません」と事実を認めた。同日の別の21枚も復元され、全て同じ女児が写っていた。
 市教委は、同様の行為が過去になかったか事情を聞く方針。府迷惑行為防止条例違反容疑での告訴や告発などについては、「保護者に意向を聞き、府教委とも協議する」としている。