児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3号ポルノは絵面で判断する話。

 警察から聞かれたので、再掲しておきます。
 絵面で判断するのだから、下着もだめで、盗撮のパンチラ画像も3号ポルノ
ということになります。

論題 児童ポルノ禁止法の問題点--「児童ポルノ」とは何か (児童ポルノ
禁止法を考える)
著者 園田 寿(ソノダ ヒサシ)
雑誌名 法学セミナー
出版者・編者 日本評論社
巻号・年月日 55(11) (通号 671) [2010.11]
ページ 34〜36
みなさんは、「児童ポルノ」と聞いてどのようなイメージをもつだろうか。
最近、私は、6歳の女児に対する強制わいせつ等被告事件の弁護人から、被告
人が携帯電話のデジカメで被害児童を撮影した画像が、児童ポルノ禁止法にお
ける「児童ポルノ」であるかどうかについての意見を求められた。問題となっ
た画像1)は3枚。1枚目は、背景から公園の公衆トイレの中と分かるのである
が、被告人の手で口をふさがれている被害児童の顔の写真[写真?]、2枚目
は、下着を脱がされて足を広げてトイレの床に座っている被害児童を正面から
写した写真[写真?]、3枚目は、頭部から顔面にかけて精液をかけられた被害
児童の顔の写真[写真?]であった。何とむごいことをするのかと憤りを感じる
とともに、胸が詰まりそうになった。しかし、児童ポルノ禁止法の定義に照ら
せば、児童に対する性的虐待行為が行われへその過程が記録されたにもかかわ
らず、これらの画像が「児童ポルノ」であるかどうかについて解釈上の疑問が
生じるのである。裁判所は、結果的に[写真?]を「児童ポルノ」と認定したも
のの、[写真?]と[写真?]については、「児童ポルノではない」としたヘ[写
真?]についてはともかく、[写真?]を「児童ポルノ」とできないのは、現行
法の重大な欠陥であるといわざるをえない。

 こういう事件はよくあるので、弁護人はいちいち

何とむごいことをするのかと憤りを感じるとともに、胸が詰まりそうになった

なんて言ってないで、正確な事実認定と適正な量刑を実現するために、淡々と
証拠を検討する。

事実関係は原判決認定の通り。

原判決
罪となるべき事実=公訴事実
被告人は
第2 平成20年4月 1日午後 3時30分ころ,市公園公衆トイレの女子トイレ内
において,b(6歳)に対し,同女が 13歳未満の児童であることを知りながら,
・・・同女に対し,そのズボンと下着を脱がせて下半身を裸にして,同女の陰
部を露出させる姿態をとらせ,これを携帯電話機付属のカメラで撮影し,さら
に,同女の頭部等に射精した上,これを同カメラで撮影し,その電磁的記録を
同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録して,もって, 13歳未満の女子に対
し,わいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であっ
て性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法に
より電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

問題なのは
  頭部から顔面にかけて精液をかけられた被害児童の顔の写真
で、
原判決では

さらに,同女の頭部等に射精した上,これを同カメラで撮影し,その電磁的記
録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録して,もって, 13歳未満の女子
に対し,・・・・衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又
は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係
る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

とされてるんだから、これも、3項製造罪とされていることは間違いない。

 そこで弁護人の主張。服の下は裸だといって3号ポルノになると、児童の写
真は着衣でも児童ポルノになる。

(2)児童ポルノ該当性は当該画像のみから判断される。
 児童ポルノの定義については2条3項が規定するが、物の性質の問題であ
るから、対象となった画像のみから判断される。
 すなわち、法文を組み合わせると、「3号児童ポルノ」とは、「写真、
電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識すること
ができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供
されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、衣服の
全部又は一部を着けない児童の姿態であって、性欲を興奮させ又は刺激するも
のを視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。」と定
義されるところであって、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であっ
て、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法
により描写したもの」というのだから、画像から「衣服の全部又は一部を着け
ない」ことが認められなければならない。

 児童ポルノ該当性の判断方法を示した京都地裁H12.7.17*3も、あくまで物
としてのビデオや写真集から認識しうる限度内で判断しており、撮影状況や撮
影者の主観などは考慮していない。

京都地方裁判所判決平成12年7月17日
そして、当該写真又はビデオテープ等全体から見て、ストーリー性
や学術性、芸術性などを有するか、そのストーリー展開上や学術的、芸術的表
現上などから児童の裸体等を描写する必要性や合理性が認められるかなどを考
慮して、性的刺激が相当程度緩和されている場合には、性欲を興奮させ又は刺
激するものと認められないことがあるというべきである。


 このように画像のみから判断することは、実際上、重要なことである。
 例えば、画像外の状況を考慮するとすると、着衣の児童の写真が、スカー
トの下にパンツをはいていなければ、児童ポルノとなり、パンツをはいていれ
児童ポルノではないことになる
? パンツをはいていない→3号ポルノ
セーラー服と機関銃薬師丸ひろ子の写真)
http://asiabiz.jp/newsasiabiz/photos/08121518.JPG
? パンツをはいている→3号ポルノに該当しない。
セーラー服と機関銃薬師丸ひろ子の写真)
http://asiabiz.jp/newsasiabiz/photos/08121518.JPG

 これでは同じ画像が、児童ポルノであったり、なかったりすることになっ
て、もともと児童ポルノ該当性が物の属性であることに矛盾する。
 さらには、一見着衣であるが故に児童ポルノに該当しないと思って複製・
販売等している者が、着衣の下が裸だったなどと判明すれば、児童ポルノ罪に
問われる恐れが生じ、法的安定性を欠くことになり、表現活動を阻害する。こ
れは法3条でも注意喚起されているところである。

(3)証拠の精液を掛けられた児童の姿態は3号ポルノに該当しない
 画像から判断する限り、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」と
は言えないから、3号ポルノに該当しない。
 
 撮影状況からすれば、被害者はこのとき、下半身裸であるが、それが撮影
されていないから、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態・・・を視覚
により認識することができる方法により描写したもの」に該当しないのであ
る。

 これは説得力があったようで、この写真は、3号ポルノではないと判示され
た。

高松高裁H22.9.7
原判決破棄
第2 事実誤認の主張について
 論旨は,原判示第2の事実につき,原判示の日時場所においては,携帯電話
機に挿入されたマイクロSDカードに画像が記録され,その後いずれかの日
時,場所において,これが携帯電話機本体に移動されたから,原判示の日時場
所において,被告人が児童ポルノを製造したと認定した原判決には,判決に影
響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある,というのである。
 しかし,上記のとおり,携帯電話機本体に挿入されたマイクロSDカード
も,「携帯電話機に内蔵する記録媒体」であるから,本件画像が所論のような
経緯をたどって記録されたとしても,原判示の日時場所すなわち撮影時に児童
ポルノが製造されたことが否定されるものではない。原判決に事実の誤認はな
い。論旨は理由がない。
第3 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,?原判決は,原判示第2の事実において,「同女の頭部等に射精し
た上,これを同カメラで撮影し,その電磁的記録を同携帯電話機に内蔵する記
録媒体に記録して,もって(中略),衣服の一部を着けない児童の姿態であっ
て性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法に
より電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した」と認定し,
児童ポルノ等処罰法7条3項,2条3項3号に該当するとしているが,同画像
は,判文によっても,実際の画像をみても,児童ポルノを定義した同法2条3
項3号に該当しないから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法
令適用の誤りがあり,理由不備,事実誤認もある,?児童ポルノ等処罰法2条
3項3号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」は,一般人を基準として判断
するものであるところ,原判示第2の事実において,被告人が撮影,記録した
画像は,6歳の児童に対するものであり,一般人を基準とすれば,性欲を興奮
させ又は刺激するものではないから,児童ポルノに該当しないのに,これらを
児童ポルノに該当するとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな
法令適用の誤りがある,?原判示第2の児童ポルノ製造罪と強制わいせつ罪と
は混合的包括一罪ないし児童ポルノ製造罪は強制わいせつ罪に吸収されると解
すべきであるのに,両罪を観念的競合とした原判決には,判決に影響を及ぼす
ことが明らかな法令適用の誤りがある,?略 というのである。
 しかし,?の被害者の頭部等に射精した画像が児童ポルノに該当しないとの
点は,たしかに,同画像は,児童ポルノ等処罰法2条3項1号の「児童を相手
方とする性交類似行為に係る児童の姿態」の画像に該当する可能性はあるが,
被害者の衣服を着けない状態が,画像上は必ずしも判然としないから,同項3
号には該当しない。しかし,原判決は,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を
観念的競合として,一個の事実の中で両罪に該当する事実を記載しており,頭
部等に射精した上,これを同カメラで撮影した行為は,強制わいせつ罪に該当
する事実でもあるから,原判決が,当該画像を記録したことをもって,児童ポ
ルノ製造罪に該当すると認定,判断したとまでは断定できない。仮に,原判決
が,これをも児童ポルノ製造罪に該当するとしているとしても,これにより処
断刑に差異を生じるものではなく,本件の犯情に照らしても,その誤りが判決
に影響を及ぼすことが明らかとはいえない。

しかし、
原判決では

さらに,同女の頭部等に射精した上,これを同カメラで撮影し,その電磁的記
録を同携帯電話機に内蔵する記録媒体に記録して,もって, 13歳未満の女子
に対し,・・・・衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又
は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係
る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

とされてるのに

原判決が,当該画像を記録したことをもって,児童ポルノ製造罪に該当すると
認定,判断したとまでは断定できない

とはよくいうよな。
 結局、公訴事実からして、どれが児童ポルノ製造罪の事実なのかがよくわか
らないんだから、訴因不特定も主張しとくべきだったかもしれない。

 警察検察への注文としては、強制わいせつ罪(176条後段)と3項製造罪は
観念的競合だが、児童ポルノの要件はきっちり検討してから裁判所に持って来
てほしいところだ。