児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童を売春勧誘罪の被疑者として逮捕する話

 奥村弁護士がちょくちょく池袋警察に出かけるのは理由があります。
 援助交際少女は「被害児童」「被害者」であって、逮捕しないというのが、児童買春法の趣旨で、立法者もそう説明してるんですけど。
 被害児童を保護するという体制はいまだにできず、立法者の声も聞こえなくなりました。最初からやる気がなかったか、やる気がある人が居なくなったんでしょう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110408-00000523-san-soci
 駅前の路上で売春を勧誘したとして、警視庁生活安全特別捜査隊が売春防止法違反(勧誘)の現行犯で、無職少女(17)と当時中学3年生だった少女(15)の2人を逮捕、家裁送致していたことが7日、捜査関係者への取材で分かった。15歳以下の少女が同法の勧誘行為で逮捕されるのは異例。
 捜査関係者によると、少女らは「短時間でお金をたくさん稼げるのでやろうと思った」などと供述しているという。同隊は少女らが売春に関わった経緯や背後関係を詳しく調べる。
 逮捕容疑は、3月9日午後5時50分ごろ、東京都豊島区西池袋のJR池袋駅前の路上で、17歳の少女が警戒中の捜査員に「私は20歳。ホテルで遊ぼうよ。1万5000円でどう」などと声をかけた上、近くにいた15歳の少女を紹介。15歳の少女も「18歳だけどいいですか」などと年齢を偽って誘ったとしている。
 捜査関係者によると、15歳の少女は2月初めごろ家出。アルバイトを探していた際に17歳の少女と出会い、「『売り』なんだけどいい?」などと売春の仕事を紹介された。17歳の少女は「今年に入ってから池袋周辺で売春して稼ぐようになった」と供述しているという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110408-00000524-san-soci
警察当局は明らかな勧誘行為は少女でも積極的に摘発する構えだ。
 今回の事件では少女が捜査員に声をかけたため売春防止法違反(勧誘)を適用し現行犯逮捕できた。だが、出会い系サイトやプロフィールサイト(プロフ)などネットを利用した場合では、誰が書き込んだか特定が困難で、少女側から勧誘しても児童買春の「被害者」として扱われることが多いという。
 警察庁によると、平成22年に全国で18歳未満の児童買春の被害少女は718人。一方で売春防止法違反(勧誘)で摘発された20歳未満の少女はわずか16人だけにとどまっている。捜査幹部は「アルバイト感覚で売春は犯罪であるとの認識が希薄だ。勧誘は厳しく取り締まる」としている。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
Q58 児童買春、児童ポルノ等の被害にあった児童が救われるどころか、逆に犯罪者扱いされたり、傷つけられたりするといったことがないようにしなければならないと思いますが、この法律ではどのように担保されているのでしょうか。
A この法律の第12 条第1 項は、この法律に規定する罪に係る事件の捜査及び三公判に職務上関係のある者に対し、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならないことを定めています。また、同条第2 項では、関及び地方公共団体にこれらの者に対し児童の人権、特性等に関する現解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努める義務を課しています。
事件の捜査及び公判に職務上関係のある者が捜査や公判において関係者の名誉や尊厳を害しないように注意、を払うべきことは、もとより当然のことですが、児童については、未だ成長過程にあって、精神的に未熟である上、その人権を自ら守る能力にも自ずと限界があることから、特にこれらの点に十分な配慮をすべきとともに、これらの職務上関係のある者に対して、訓練及び啓発を行うよう努めるべきことを本条によって明らかにしています。

売春防止法
第5条(勧誘等)
売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第14条(教育、啓発及び調査研究)
国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。
第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする