児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

連続性犯罪について、裁判所が、裁判員対象の「性犯罪」と非対象の「性犯罪」とに弁論を分離したことの当否について(東京高裁H23.3.14)

 非対象事件の控訴審判決。
 被告人側から言えば、結局、刑期を足して、重すぎなければいいということみたいですよ。
 対象事件の控訴審判決としては、広島高裁H22.10.19(速報番号H22年10号)があります。

東京高裁H23.3.14
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書2通に記載のとおりであるから,これらを引用するが、論旨は訴訟手続の法令違反,事実誤認、法令適用の誤り,量刑不当の主張である。
第1訴訟手続の法令違反の主張について
所論は,被告人は,平成年月日○地方裁判所で別件の裁判員裁判対象事件である「性犯罪」により懲役○年に処せられ,確定しているが,原審は,この別件「性犯罪」被告事件の弁論といわゆる連続「性犯罪」等である本件(原判示各事実)の弁論を併合することが可能で、あったにもかかわらず,併合しないままそれぞれに判決をしており,併合審理の利益・仮釈放の要件の点で,被告人に不当に不利益を科すものであるから,原審が別件「性犯罪」事件の弁論と本件の弁論を併合して審理をしなかったことは,憲法14条に違反するものであって,原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼす法令違反がある,というのである。
そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せ検討すると,被告人は,「性犯罪」被告事件で○地方裁判所に最初の起訴がされて以来最後に起訴されるまでの間,10回にわたり,「性犯罪」被告事件で、○地方裁判所に起訴されており,これらが本件であるが,この間,本件以外にも,○地方裁判所に,裁判員裁判対象事件である「性犯罪」被告事件が起訴されている。
しかし,この別件「性犯罪」被告事件と本件とは弁論が併合されないまま,別々に審理判決がされた。この別件「性犯罪」被告事件と本件とは,裁判員裁判対象事件と,非対象事件であるとの違いはあるものの,弁論を併合して審理することが可能であり,審理方法として,
1)本件につき,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律4条1項の決定をした上で,別件「性犯罪」被告事件と弁論を併合して,審理すること,
2)同様に,弁論を併合した上で,さらに,本件につき,同法71条1項の区分審理決定をするなどして,審理すること
などの選択肢が考えられる。しかし,同一の被告人に同時期に係属した数個の被告事件を各別に審理するか又は弁論を併合して審理するかのどちらを適当と認めるかは,実体的真実の発見,事件の性質,審理の円滑な進行,妥当な刑の量定,被告人の権利保護等を考慮しながら,裁判所が自由に判断することであるから,原裁判所が裁判員裁判非対象事件の本件と対象事件の別件「性犯罪」被告事件の弁論とを併合して審理をしなかったことは,違法ではなく,憲法14条に違反するか否かの問題でもなし、から,所論は失当である。
その他所論が種々主張する点を検討してみても,原判決に訴訟手続の法令違反はない。論旨は理由がない。