児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

法廷 内と外/損害賠償命令制度/利点を強調、活用は低調

 申し立てた被害者は被害額330万円を主張したんでしょうね(弁護士費用10%)。代理人弁護士がいることが分かりますが、この程度の事件で330万円の慰藉料が認容された裁判例は知りません。
 刑事裁判所は損害額165万円(うち弁護士費用15万円)と判断して、100万円が履行済みなので、65万円認容。
 名宛て人は元被告人だけなので、元被告人に請求することになります。

法廷 内と外/損害賠償命令制度/利点を強調、活用は低調
2011.03.08 河北新報記事情報 (全885字) 
法廷 内と外/損害賠償命令制度/利点を強調、活用は低調
 2009〜10年に盛岡市内の入浴施設などで30代の男が13歳未満の少年3人の下半身を触るなどした強制わいせつ事件をめぐり、盛岡地裁で初めて「損害賠償命令制度」が適用された。
 刑事裁判で懲役2年6月、執行猶予4年の判決を言い渡された被告に対し、被害少年1人が230万円の損害賠償金を請求。地裁は3回の審理を経て65万円の支払い命令を決定したが、被告が異議を申し立てた。
 被告の弁護人は「被害者3人には既に各100万円の慰謝料を支払った。さらに65万円の損害賠償命令は不当に高額だ」と主張。賠償請求は地裁民事部に移され、争いが続いた。

 3名への強制わいせつ罪(176条後段)でよく執行猶予が付いたと思いましたが、1人100万円ずつの被害弁償(示談ではない)をしたことが分かります。刑事裁判所の感覚としては十分金額と評価されていると思います。
 奥村の勘としては、慰藉料というのは、死亡慰謝料3000万円を上限とするので、特に後遺症(傷害とかptsdとか)が無ければ、裁判所の認容額としては100万円以下程度になると予想します。
 民事訴訟に持ち込まれることもあまり無いので、裁判例がないのかも知れません。
 となると、165万円というのは、「既に100万円の慰謝料を支払った。さらに65万円の損害賠償命令は不当に高額だ」ということになるのですが、民事裁判所は早期に和解を勧めると思います。
 被害者も「追加65万円」というのは、立証も刑事記録に限定されるし、怒っているんだから不服だと思うんですが、そっちは通常手続の申立してないんでしょうか。これくらいの民事訴訟で、さらに後遺症などの立証をするのは大変で、代理人ご苦労様という感じです。

 文献としてはこれくらいしかありません。弁護士へのアンケートの集計。

慰謝料算定の実務(H20 千葉県弁護士会編・ぎょうせい)p344
2 強制わいせつ罪
示談金額としては、ほぼ100万円の範囲内であり、上限は300万円であった。50万円未満のものが20件と半数近くあり、5万円1件、10万円3件、20万円7件、30万円7件、40万円2件と、10万円単位での金額分布が認められた。いくらが適正金額かは本章の目的ではないので言及しないが、こうした分布は相場を探るという意味では参考になろう。
今回のアンケート結果の範囲内ではあるが、示談が成立した場介には、刑処分も寛大な傾向にあるといえる。
なお、示談が不成立となった原因としては、被害者の要求額と加害者の提金額との不一致というよりは、被害感情の強さによるところが大きいと推察される

判例はいろいろ。

東京地方裁判所判決平成21年10月28日
LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 1 被告らは原告X1に対し,連帯して72万円及びこれに対する平成19年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 3 訴訟費用は,原告X1に生じた費用の3分の1と被告らに生じた費用の3分の1を被告らの負担とし,原告X1に生じたその余の費用は同原告の負担とし,被告らに生じたその余の費用と原告X2及び同X3に生じた費用は同原告らの負担とする。
 4 この判決は,1項に限り仮に執行することができる。
2) 本件事件の発生
    被告Y1は,強いてわいせつな行為をしようと考えて,平成19年2月1日午後4時ころ,原告らが当時居住していたマンションのエレベータ内において,帰宅途中の原告X1に対し,「何年生?」と声をかけて,後方からいきなり同女の口を塞ぎ,ズボンの上から陰部付近を触るなどして,「痛い目見るよ。」などと言って脅迫し,さらに,同女の頬や唇に無理やりキスをするなどした。(争いのない事実,甲1,5,弁論の全趣旨)

東京地方裁判所判決平成19年10月1日
       主   文
 一 被告Y1は,原告に対し,金300万円及びこれに対する平成15年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 二 原告のその余の被告らに対する本訴請求をいずれも棄却する。
 三 被告学校の反訴請求を棄却する。
 四 訴訟費用中,原告に生じた費用は本訴反訴ともにこれを4分し,その1を被告Y1の,その1を被告学校の,その余を原告の各負担とし,被告Y1らに生じた費用はこれを2分し,その1を原告の,その余を被告Y1の各負担とし,被告学校に生じた費用は本訴反訴ともにこれを2分し,その1を原告の,その余を被告学校の各負担とする。
 五 この判決は,第一項に限り,仮に執行することができる。
第二 事案の概要
 一 事案の要旨
  1 本件本訴は,原告が,平成15年7月1日午後6時から午後6時40分ころまでの間,被告Y1から,京王井の頭線富士見ヶ丘駅(以下「富士見ヶ丘駅」という)付近で刃物様の物を示すなどして脅迫され,同駅女子トイレ内に連れ込まれ,強いてわいせつな行為をされたことにより(以下「本件加害行為」という。なお,詳細は後記〈原告の主張〉記載のとおり),精神的,肉体的に大きな苦痛を被ったと主張して,(ア)被告Y1に対しては前記のとおり本件加害行為を行ったことにより,また,(イ)被告Y1の両親である被告Y2及び被告Y3(以下,被告Y2と被告Y3を併せて「被告両親」という)並びに被告学校に対しては,被告Y1が本件加害行為を行うことはいずれの被告も予見可能であったから,被告両親は未成年者を監護教育すべき義務を負う親権者として,被告学校は生徒に対し安全保持義務を負う者として,これを阻止すべき注意義務があったにもかかわらずこれを怠ったことに過失があるとして,被告らに対し,共同不法行為に基づき,連帯して慰謝料300万円及びこれに対する不法行為日の翌日である平成15年7月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
  1 本件加害行為の有無
   〈原告の主張〉
 被告Y1は,原告に対し,強いてわいせつな行為をしようと企て,平成15年7月1日午後6時ころ,東京都杉並区久我山2丁目所在の富士見ヶ丘駅付近で,下校途中の原告を待ち伏せし,「こっちへ来い」などと同行を促したが,原告がこれを拒否すると,同区(以下略)●●出入口前路上で,所持していた刃物様の物を示し,「大声を出したら殺すぞ」などと申し向け,さらに,原告の背中を押しながら,原告の首筋に刃物様の物を当てるなどし,「お前がどうなろうと知らない。俺の気にくわないことをしたら刺すぞ」,「コンドームが余っているから使い切るまで相手をしろ」などと申し向け,原告を富士見ヶ丘駅女子トイレ内に連れ込むなどして脅迫し,原告の反抗を抑圧した上,同日午後6時25分ころから同日午後6時40分ころまでの間,同所において,嫌がる原告にキスし,ブラジャーの上から乳房を両手で揉み,胸にキスし,右手をパンティの横隅から入れて陰部を弄び,陰茎を出して口淫させるなどし,もって,強いてわいせつな行為をした。

東京地方裁判所判決平成18年10月13日
LLI/DB 判例秘書登載

       主   文
   1 被告は,原告X1に対し,275万円及びこれに対する平成16年7月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
   2 原告X1のその余の請求を棄却する。
   3 原告X2及び原告X3の各請求をいずれも棄却する。
   4 訴訟費用は,原告X1に生じた費用の2分の1と被告に生じた費用の14分の5を原告X1の負担とし,原告X1に生じた費用の2分の1と被告に生じた費用の14分の5を被告の負担とし,原告X2に生じた費用と被告に生じた費用の7分の1を原告X2の負担とし,原告X3に生じた費用と被告に生じた費用の7分の1を原告X3の負担とする。
   5 この判決は,主文第1項に限り,仮に執行することができる。
第2 事案の概要
   本件は,被告が,走行中の電車内において,通学途中の原告X1に対し,右手をスカートの上から原告X1の陰部に押し付けたり,スカートをたくし上げ,右手をパンツの中に入れて指で陰部を触ったりするなどのわいせつ行為(以下「本件わいせつ行為」という。)を行ったとして,原告X1において,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料500万円及び弁護士費用50万円の合計550万円並びにこれに対する上記不法行為の日である平成16年7月12日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,また,原告X1の両親である原告X2及び原告X3において,被告に対し,それぞれ,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料100万円及び弁護士費用10万円の合計110万円並びにこれに対する前同日から支払済みまで前同様の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

旭川地方裁判所判決平成14年3月12日
判例タイムズ1169号274頁
       主   文
 1 被告は,原告に対し,金957万9509円及び内金857万9509円に対する平成11年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを4分し,その3を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
 4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

       事実及び理由
第2 事案の概要
 本件は,医科大学医学部看護学科の学生であった原告が,同学部医学科の学生であった被告から性的暴力を受け,心的外傷後ストレス障害を負ったなどとして,不法行為に基づき損害賠償を請求した事案である。

 対象罪名に、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律・児童福祉法は入っていません。

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO075.html
第六章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例
    第一節 損害賠償命令の申立て等
損害賠償命令の申立て)
第十七条  次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項 の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。
一  故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪
二  次に掲げる罪又はその未遂罪
イ 刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百七十六条 から第百七十八条 まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦)の罪
ロ 刑法第二百二十条 (逮捕及び監禁)の罪
ハ 刑法第二百二十四条 から第二百二十七条 まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪
ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)
2  損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  請求の趣旨及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実その他請求を特定するに足りる事実
3  前項の書面には、同項各号に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。