児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強姦の機会のわいせつ行為は強姦罪に吸収される(名古屋高裁H22.10.26)

 ここ高裁レベルの判例がありませんでした。

これに対し,所論は,強姦の機会に行われるわいせつ行為は強姦罪に吸収されるとするのが判例であるところ,被害児童の裸を撮影する行為はわいせつ行為に他ならないから,撮影行為は,強姦罪に包括して評価されるべきである,という。
しかしながら,強姦の機会に行われたわいせつ行為を強姦罪とは別に強制わいせつ罪として評価する必要がないのは,強姦行為が強制わいせつ行為の特別の類型であり,かつ,強姦行為の際にそれ以外のわいせつ行為が付随するのが通常であって,強姦罪の構成要件によって評価し尽くされているからである。
3項児童ポルノ製造行為は,わいせつ行為でもあるが,これが強姦の際に行われた場合において,3項児童ポルノ製造罪としての評価を受けるときは,強姦罪と保護法益が異なり,一般法,特別法等の法条競合の関係にもなく,強姦行為に通常付随するものでもないから,強姦罪に吸収されるものではないことはもとより,強姦罪との混合包括一罪とみるべきものでもない。
また,所論は,児童との性交等は,3項児童ポルノ製造行為のうち,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る姿態をとらせる行為であるから,3項児童ポルノ製造行為の一部であり,撮影行為は,強姦罪の犯罪事実に含まれるから,強姦罪と3項児童ポルノ製造罪とは観念的競合となる,という。
しかしながら,被害児童の裸を撮影する行為は,裸体を他人の視覚にさらすという面において性的自由を侵害し,性的感情を害するわいせつ行為として強姦罪に包括して評価されるものであっても,姦淫行為そのものではない。
加えて,3項児童ポルノ製造における撮影行為は,電磁的記録に係る記録媒体等に描写するという行為を不可欠の要素として伴うものである。
そうすると,被害児童と性交するという点て強姦行為と3項児童ポルノ製造行為とが重なるとはいえ,ビデオカメラで撮影しMiniDVに記録して描写した点において,自然的観察のもとで,その動態が社会的見解上一個のものとの評価を受けるとはいえないから,所論は失当というべきである。