児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

カジノ船

 「罰則の話」に載ってたような気がします。
 「カジノは公海の航行中に営業するため、日本、中国の法律はいずれも適用されず」というだけでは認識が甘くて、
 公然と
   「カジノ船」に乗りませんか?
と宣伝すると、結合行為の一部が国内で行われたことになって「博徒を結合して利益を図った者」になるかもしれませんから、ちゃんと警察と相談した方がいいですね。
 ラスベガスツアーでもあまり「カジノ」をうたってないと思います。

ハウステンボス、長崎〜上海でカジノ船運航へ 公海上で営業
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110107-00000600-san-bus_all
旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の参加で再建中の長崎県のリゾート施設「ハウステンボス」(佐世保市)が、長崎〜中国・上海間で運航するカジノ船の所有会社を設立したことが、分かった。今年夏の就航を目指すという。
 新会社の名称は「テンボスクルーズ パナマ SA」で、昨年12月に設立した。早ければ月内にも2万〜3万トン級のクルーズ船を購入する計画。船籍をパナマに置き、カジノは公海の航行中に営業するため、日本、中国の法律はいずれも適用されず、法的には問題ないとしている。

第186条(常習賭博及び賭博場開張等図利)
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

参考文献
外国における犯罪と刑法の適用--賭博ツアーをめぐって (国際犯罪をめぐる諸問題<特集>) / 松浦 恂
法律のひろば. 32(11) [1979.11]


伊藤栄樹ら 罰則の話 第二版 P172
こういうツアーは、現地で合法的な公認されたギャンブルをするばかりでなく、非公認の、つまり裏社会のギャンブルをするためにも組まれるらしいが、現地で公認であれ、非公認であれ、わが国で犯罪とされている行為を外国でするために集団で渡航するというこ
とが、わが国の善良な風俗習慣になじまず、道徳的にも問題であることは間違いない。そこで、進んでこのようなツアーを組んだり参加したりした者に対して、賭博罪その他の犯罪が成立しないだろうかという問題がでてくる。
まず、賭博罪が国民の国外犯ではないことは刑法三条の明文上明らかであるから、国外で賭博をした行為自体を刑法で処罰することはできない。問題は、日本国内で犯罪となる賭博をするためにツアーを組むことが犯罪といえるかである。刑法一八六条二項は、「博徒ヲ結合シテ利ヲ図リタル者」につき三月以上五年以下の懲役に処するとしているが、ここにいう博徒は、賭博の常習者をいい、もっぱら又は主として賭博によって生計を立てている者と解されているので、多くのツアー参加者はこれに当たらないだろう。仮に当たったとした場合、外国での賭博のための博徒の結合が本罪に直ちに当たるであろうか。
外国での賭博がその地で公認されている場合、当該行為は外国法上違法ではないが、わが刑法上も違法でないといえるか。ここは説が分かれるところだが、わが刑法上その行為が賭博罪に外形上該当することは否定し難い。この際の金のやりとりが民法上の不法原給付(民法七〇八条)になることはまず間違いないし、処罰しうるかしえないかは別として、日本法の目で見る限り、賭博は賭博であって違法行為であろう。そのような違法行為をするために人を結集させる行為がわが国で行われ、それによって利を図れば 刑法一八六条二項が成立することはありうるようである。もっとも、博徒結合罪の場合、賭博をすることが構成要件となっておらず、単に博徒を結合して利を図れば即時犯罪が成立するので、博徒の行うであろう賭博についてあまりその違法、合法をやかましく考えなくてもよいかもしれない。
それでは、ツアー参加者はどうであろうか。皆で外国に行って賭博をしようという共謀があり、そのための謀議もあるから、賭博行為が日本国内で行われれば、賭博に参加しなくても共謀共同正犯ということで処罰の対象となることはたしかである。ところが、共謀の結果、実行することは、現地法で合法のみならず日本法上も国民の国外犯とされていない行為である。つまり、賭博罪の定める構成要件に該当するとはいえ、処罰しえない行為である。これは、外国において賭博が非公認の場合であっても同じことである。わが国の通説、判例は、実行行為が行われない限り、共犯が成立しないという制限従属性説に立っているから、独立して共謀のみを処罰しうる規定でもあればともかく、共謀や教唆のみで実行行為がなければ共犯の処罰はできない。そして賭博という実行行為は海外で行われたものの、処罰はできないという状態である
しかし、共謀行為は国内で行われ、処罰できないにせよ違法と評価しうる実行行為(賭博行為)は国外で行われている。しかも国民の圏外犯ではないというのは単に政策の問題であって、賭博行為が刑法一八五条に該当する行為であることは否定し難く、いわば単に処罰条件であるにすぎないとするのが通説であるから、共謀者の行為を中心にして考える限り、国内においてその犯罪行為が行われたと見ることが可能となる。特に共犯者を全体として一つと見るときその感が強くなる。しかも、賭博の処罰の根拠が、「単なる偶然の事情に因り財物の獲得を相争うごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚しきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである」(最判昭二五・二・二二刑集四・二・二三八〇)とされている点を併せ考えると、賭博ツアー参加者についても、現地での合法、非合法を問わず処罰可能と解することができそうであるが、実際のところ異論も多く、いまだ起訴された事例はないようである。