児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

坪井祐子「被害者・関係者・第三者の落ち度が量刑に及ぼす影響」判例タイムズ1223号93ページ

 法益侵害や拡大に関係するような被害者本人の態様も一応分析検討して主張しておく。

被害者等の落ち度が量刑に影響を及ぼす程度についての理論的な検討はまだ不十分なものに留まっているが,結論に代えて実際の裁判例の検討からうかがえる大まかな傾向を指摘しておきたい。
2 被害者の落ち度とそれ以外の関係者の落ち度とでは,量刑に及ぼす影響が質的に異なるということがいえるように思われる。実際の裁判例でも,被害者の落ち度を積極的に軽くなる量刑事情として取り上げる例は相当数存するが,それ以外の関係者の落ち度を取り上げて,顕著に量刑を軽くしている例は希有である。したがって,弁護人や被告人側としては,被害者ではない関係者の落ち度を量刑事情として指摘しでもこれを斟酌してもらえる可能性は乏しくかえって「責任逃れ」という非難を受ける危険もある。
3 理念的には,被害者が任意に自身の法益を危険にさらすような落ち度ある行為に出た場合,すなわち「危倹への接近」「危険の引き受け」等の場合には量刑が引き下げられると考えられる。
しかし,それが大きな争点になった裁判例はそれほど多くはない。
4 これまでの裁判例では,犯罪の動機や経緯において被害者の落ち度ある行為が認められる場合,その落ち度を量刑において考慮したものが多い。特に「忍従反動型」の殺人などの類型では,被害者の落ち度は大きな量刑事情となる。
過剰防衛,誤想過剰防衛が認められる事例でも被害者の落ち度は相応に考慮されるが,量刑を引き下げる程度は一様でなく,被害者からの法益侵害の大きさそのものもさることながら,経緯や被告人の犯罪行為の質(暴行の危険性等)との比較によって左右されるようである。
挑発・誘発のケースでは,被害者の落ち度の有無・程度より,暴行の態様や弁償の有無等の他の事情の方が量刑上重視される傾向にある。
5 裁判実務では,性犯罪の被害者が不用意かどうかは量刑事情として重視されている。特に「声を掛けられて誘いに乗ったj というような事情は量刑を左右することがある。他方,財産犯では,被害者が不用意であったかどうかは,少なくとも判決文において明示されるような量刑事情にならないことが多い。
6 本来は被告人の犯罪の危険性が少ないにもかかわらず,被害者の行為が介在するために結果が拡大した場合には,本来は危険性が低かったという事情が有利に斟酌される。逆に被告人の行為の本来の危険性が大きければ,たとえ被害者の行為が介在していようとも重く処罰されることになり,そのような事案で「被害者の落ち度」を弁護人や被告人側が持ち出してもあまり第三者の落ち度(例えば医療過誤)によっ容が拡大した場合にも全く同様に考えることきる。