児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

交番に相談して逮捕された事例

 逮捕事実は犯罪による収益の移転防止に関する法律26条2項の罪だと思います。
 譲渡目的の口座開設は、通帳とキャッシュカードの「詐欺罪」になることもあります。(最三決平成19・7・17 刑集61巻5号521頁)
 最終的には「自首」として扱われる可能性はありますが、ぶらっと交番で相談すると、逮捕される恐れがあるということです。最寄りの弁護士に相談すれば結果は変わっていたと思います。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/110104/crm1101041836017-n1.htm
口座譲渡の疑いで男を逮捕 「代金が振り込まれない」と交番に相談して発覚
2011.1.4 18:36
 同署によると「カードの代金が振り込まれない」と自分で交番に相談したのが発覚のきっかけ。
 逮捕容疑は昨年9月、自分名義の二つの銀行口座のキャッシュカードなどを東京都内の男に郵送し、約6万円を得ようとしたとしている。
 同署によると、口座の一つは振り込め詐欺に使われていた。容疑者は「知らない男から携帯に電話があり、話を持ち掛けられた。カードを渡した後、電話で残高を確認したら数十万円入っていた。何かの罪に当たる気がして怖くなり交番に行った」と話している。

逮捕事実は犯罪による収益の移転防止に関する法律26条2項の罪だと思います。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO022.html
犯罪による収益の移転防止に関する法律
第二十六条
1 他人になりすまして特定事業者(第二条第二項第一号から第十五号まで及び第三十二号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。)との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、五十万円以下の罰金に処する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2  相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
3  業として前二項の罪に当たる行為をした者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4  第一項又は第二項の罪に当たる行為をするよう、人を勧誘し、又は広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も、第一項と同様とする。

 詐欺罪は重い罪で、罰金刑がありません。

刑法第246条(詐欺) 
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

最高裁判所刑事判例集61巻5号521頁
裁判所時報1440号303頁
判例タイムズ1252号166頁
判例時報1985号176頁
金融法務事情1824号43頁
LLI/DB判例秘書登載
研修717号15頁
ジュリスト1347号63頁
法学セミナー52巻10号112頁
立命館法学323号235頁
刑事法ジャーナル11号119頁
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=34955&hanreiKbn=01
最高裁判所第3小法廷詐欺被告事件平成19年7月17日
2 以上のような事実関係の下においては,銀行支店の行員に対し預金口座の開設等を申し込むこと自体,申し込んだ本人がこれを自分自身で利用する意思であることを表しているというべきであるから,預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘して上記申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,これにより預金通帳及びキャッシュカードの交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである。被告人の本件各行為が詐欺罪の共謀共同正犯に当たるとした第1審判決を是認した原判断に誤りはない。