児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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整体師による準強制わいせつ罪1罪の量刑理由(水戸地裁H21.10.6)

 こういう主張でも不合理弁解とされています。

判例秘書
(量刑の理由)
 本件は,整体師である被告人が,自らの営む施術院において,整体の施術であると誤信させて女性にわいせつ行為を行った準強制わいせつの事案である。
 被告人は,一人で施術院にいる際に若い女性が来院したことを奇貨として劣情を催し,性的欲求を満たすため,被害者が明確に拒絶,抵抗をしないことに乗じて犯行に及んだものと認められ,犯行に至る経緯やその低劣な犯行動機に酌量の余地は全くない。
 犯行態様は,整体の施術を装いながら,卑わいな言動を織り交ぜて,着衣越しに被害者の乳房や陰部周辺をなで回し,被害者が整体施術か否か半信半疑の状態で明確に拒絶,抵抗しないことに乗じて犯行をエスカレートさせ,性交類似の動作をして自らの陰部を着衣越しに被害者の陰部にこすりつけたり,直接被害者の胸を触ったりし,さらに,いったん帰ろうとした被害者を呼び止め,胸や下腹部を触るなどしたもので,自らの職業を悪用し,約1時間半もの間断続的に行われた,巧妙,卑劣かつ執拗な犯行で悪質である。
 被害者の精神的打撃は大きく,犯行後眠れなくなって精神科に通うことを余儀なくされ,また,被告人に似た人を避けたり,密室に一人でいるのが怖くなるなどの影響も出ており,本件犯行の結果は重い。
慰謝の措置は全くとられていない。
被害者の処罰感情が厳しいのも当然である。
 被告人は,不合理な弁解に終始し,反省の態度は全く窺えない。
 以上によれば,被告人の刑事責任は到底軽いものではない。
 他方,わいせつ行為の多くが着衣の上からのものであるなどその程度が強烈なものとまではいい難いこと,被告人にはこれまで前科がないことなど,被告人のために斟酌すべき事情もある。
 そこで,諸般の事情を考慮し,主文の刑を量定した。
 よって,主文のとおり判決する。
(検察官衣笠利彦,私選弁護人安江祐(主任),同谷萩陽一,同長瀬佑志各出席)(求刑 懲役2年)
平成21年10月6日    
水戸地方裁判所刑事部            
            裁判官 増尾 崇
(別紙)
       争点整理表
1.争いのない事実
 ? 被告人の施術院の経営状況,本件当日までの被告人とAとの関係,本件当日のAの来院状況及び公訴事実記載の日時ころにAと被告人が本件現場にいたこと,その間,備品レンタル会社の男性従業員1名が施術院を訪れたことがあったことについては,争いがない。
 ? 弁護人は,仮に検察官が主張する,乳房に触れる等のわいせつ行為の存在が認められた場合、その行為が正当なカイロプラクティック施術ではなく,わいせつ行為に当たることについては争わない。
2.争点
 ? 被告人が,本件犯行当時,Aに行った行為の具体的態様
 ? 犯行後の被告人とAとのやりとりの内容
 ? Aの本件直後の実母,上司,交際相手に対する言動の内容
 ? 被告人が,本件以外にわいせつな言動をするなどの苦情を複数回受けていたことの有無
 このうち,?は,?及び?の直接証拠たるAの供述の信用性の判断に関わる事実である。
 また,?は,A及び被告人の各供述の信用性に関わる事実である。
以上