児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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撮影型強制わいせつ罪(176条後段)で懲役12年(京都地裁H22.3.5)

 こういう性的虐待事案にこそ3項製造罪をくっつけないとだめなんですが、署内の担当部署が違うようです。

京都地方裁判所平成22年3月5日
 被告人を懲役12年に処する。
 差戻し前第一審における未決勾留日数中270日を本刑に算入する。
 差戻し前第一審における訴訟費用は被告人の負担とする。
第6 (平成20年3月28日起訴分)
  自己が指導する少林寺拳法の道場の生徒であるF(平成11年○月○○日生,当時8歳)が13歳未満であることを知りながら,同児にわいせつな行為をしようと企て,同年9月4日午後7時30分ころ,前記C指導室において,同児が着用していた道着を脱がせてパンツ一枚の裸にし,道着の帯で同児に目隠しを施した上,その姿をデジタルカメラで撮影し,さらに,同児を抱き寄せてその右頬に接吻し,もって,わいせつな行為をし
(量刑の理由)
1 本件は,被告人が,いずれも13歳未満の児童5名に対し,計6回にわたってそれぞれ強いてわいせつな行為をし(判示第1,2,4ないし7),さらに,うち1名に対し,肛門に陰茎を挿入するなどのわいせつ行為を行い,内痔核の傷害を負わせた(判示第3)という事案である。
2 被告人は,平成17年7月から児童館に臨時職員として勤務していたが,同館に遊びに来ていた児童に性的興味を抱くや判示のとおりわいせつ行為に及び,同館を辞めた後も,自己が指導役を務めていた少林寺拳法の道場に通う児童4名に対して性的興味を抱き,判示のとおりわいせつ行為に及んだのである。被告人は,児童を指導する立場を利用して,被害児童らに接近し,被害児童らやその親らの信頼を裏切って,自己の性欲を充たすためだけに各犯行に及んだものであって,その身勝手極まりない動機に酌量の余地は全くない。
  最も悪質な判示第3,第4及び第7の各犯行についてみると,被告人は,少林寺拳法の指導役という地位を利用し,被害児童を指導室に呼び出すと,最初はキスをするなどして様子を窺い,親に告げたりする様子がないとみるや行為をエスカレートさせ,服を脱がせて全身を触ったり,口淫をし,あるいはさせ,あげくに肛門に陰茎を挿入したのである。その後も,少林寺拳法の大会に出場するために宿泊したホテルでも,被害児童の父親から痔の薬を手渡され,その投与を依頼されながら,被害児童の肛門を性具で弄び,被害児童の陰茎を口淫し,自己の陰茎を口淫させるなどし,別の機会には,被害児童に自己の陰茎を口淫させ,その様子を写真撮影した上,口内に射精するなどしたのである。以上のとおり,被告人は,被害児童に対して考え得るわいせつ行為の限りを尽くしており,極めて悪質な犯行である。前記のとおり犯行が発覚しないように徐々に被害児童に対するわいせつ行為をエスカレートさせたほか,被害児童を脅すなどして口止めもしており,こうかつでもある。性具等を準備して犯行に臨むなど計画性も認められる。
  その余の犯行も,同様に各被害児童に対する優越的な地位を利用し,周囲に人がいなくなる時間を見計らって,あるいは,指導室に呼び出すなどして,それぞれ被害児童の対応を見ながらわいせつ行為に及んでおり,口止めをするなど,悪質なものである。
  当時6歳から10歳であった各被害児童が味わった肉体的・精神的苦痛は大きく,被害から数年経った現在でも被害の記憶が生々しく残っており,長じて被告人から行われた行為の意味を理解した際には極めて大きな衝撃を受けることも予想されるなど,各被害児童の将来への悪影響も懸念されるところである。被告人を信頼して子供を預けていた各被害児童の親らの受けた精神的苦痛も極めて大きい。以上のとおり結果は重大である。各被害児童及びその親らが峻烈な処罰感情を有しているのも当然というべきである。
  にもかかわらず,被告人は判示第3及び第7の犯行の一部を否認しており,そこに真摯な反省の態度をみることはできない。
  加えて,被告人は,平成19年5月に判示第1の犯行が発覚し,警察で取調べを受けた後も,何ら反省し,自制することなく判示第2ないし第7の各犯行に及んでおり,その態様も,常習化,悪質化しているのであって,性犯罪に対する規範意識は鈍麻しきっているといわざるを得ない。
3 以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は相当に重く,長期間の矯正教育が必要である。そうすると,被告人が,判示第1,第2,第4ないし第6の各事実及び判示第7の事実についての犯罪の成立をいずれも認め,反省の弁を述べていること,被告人に見るべき前科はないこと,被告人の父親が公判廷において今後の指導監督等を誓っていることなどの被告人のために酌むべき事情を考慮しても,被告人に対しては,主文掲記の懲役刑に処することが相当であると判断した。
  よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役12年)
  平成22年3月5日
    京都地方裁判所第3刑事部
          裁判長裁判官  宮崎英一
             裁判官  佐藤洋
             裁判官  綿引聡史