児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ画像のweb掲載を販売頒布罪として処罰する必要が生じて4項提供罪を設けたという経緯

 主に島戸さんがそう説明していましたよね。

島戸「児童買春・ポルノ法の施行状況、児童の性的搾取等を防止するための国際的動向」警察学論集56巻2号
この考え方とは別に、現行法の解釈としても、電磁的記録そのものを児童ポルノと構成し、その頒布等を処罰する立場も考えられ、そのような立場に立ったと解される下級審裁判例16) も存在するが、このような考え方が一般的であるとまではいい難い状況にある。
また、いずれの立場に立つにせよ、特定かっ少数の者に児童ポルノを取得させる行為については犯罪とされていない。
そこで、児童買春・ポルノ法について、サイバー犯罪条約を踏まえたものとするためには、記録媒体によることなく電磁的記録を送信する方法により頒布する行為等についても処罰を可能とする法整備が必要となってくるように思われる。


② インターネット上等における児童のポルノを内容とする電磁的記録の提供行為の処罰化(7条1項後段,4項後段)
  電子メール等により児童のポルノを内容とする画像データ等を不特定多数の者に送信する等の行為について法7条1項の「頒布」,「販売」に当たるか否かについては,必ずしも明確ではなかった。たとえば,奈良地判平成14年11月26口(公刊物未登載)が,インターネット上の送信行為をもって「販売」行為があると認定したものの,控訴審である大阪高判平成15年9月18高刑集56巻3号1頁は,「児童ポルノ」とは有体物を指し,インターネット上の送信行為は「児童ポルノの販売」には当たらないとしてこれを破棄した(上告後。上告棄却により確定している。)。
 このように。インターネット上における児童のポルノを内容とする画像デ一タ等の送信行為について,適用の可否に疑義が生じていたところ,このような行為について,有体物としての児童ポルノと同様に処削の対象とする規定の整備を行う必要があった。
      そこで,情報送信による場合については,2条3煩が定義する有体物としての「児童ポルノ」そのものとして規律するのではなく,記録媒体と離れ,「電気通信回線を通じて第2条第3項各り・のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した悄報を記録した電磁的記録その他の記録を提供」する行為を処罰することとした(7条1項,4項)。

島戸 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 研修676
④ 「提供
「提供」とは,当該児童ポルノ又は電磁的記録その他の記録を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいう(刑法第163条の4,薬物四法による資金等提供,売春防止法第8条,第11条,第13条における「提供」と同義である。)。
具体的には,児童のポルノを内容とする電磁的記録を電子メールで相手方に送信し,プロパイダ内の相手方の受信箱に入れる行為,ホームページにアップロードする行為(もっともこの場合,公然陳列罪と一罪の関係に立つことが考えられる。)等がこれに当たる。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」捜査研究636号
サイバー犯罪条約が、コンピュータ・システムを通じて児童ポルノを内容とするデータを頒布(不特定多数の者に対する送信)し、又は特定(かつ少数)の者に送信する行為等の犯罪化を締約国に義務付けること(ただし、留保可能な部分を除く。)を考慮し、児童の権利の擁護を一層促進するため、以下の三点について犯罪化を行うこととした。
(1)インターネット上等における児童のポルノに係る行為の処罰についての改正
 趣旨
児童のポルノに係る電子データを記録媒体に記憶させ、これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧させた場合には、記録媒体である児童ポルノについての公然陳列罪が成立していたところであ
るが、電子メールにより児童のポルノを内容とする電子データを不特定多数の者に送信する等の行為については、有体物である児童ポルノを頒布する行為と実質的には同様の行為であるにもかかわらず、第七条の適用の可否に疑義が生じている(注4)ことから、これを処罰の対象とする規定(注5)の整備を行う必要があった。
今回の改正では、①既に記録媒体が本法の 「児童ポルノ」 に含まれることは、裁判実務上ほぼ確定しており、これを前提とすべきこと、②記録媒体と離れた形態で新たに規制すべきは、送信(提供含まれる) と保管 (他人の記録媒体に保存する場合) のみで、有体物である 「児童ポルノ」 とは規制の対象にすべき客観的行為態様が異なることを考慮し、本法の 「児童ポルノ」 に児童のポルノに係る電磁的記録を含ませるのではなく、児童のポルノに関する電磁的記録に関する構成要件を別途規定することとした。

ウ児童のポルノを内容とする電磁的記録等の提供の処罰化
前記②の観点から、前記の記録媒体自体の提供又は公然陳列の行為とは別個に、電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供する行為を新たに処罰化することとした(これが七条一項後段、四項後段にあたる。)。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
ウ罪数
Webサーバーのコンビュータのハードディスクに児童ポルノの両像データ(電磁的記録)を記憶・蔵置させて不特定多数の者がそのデータの画像を認識できる状態を設定した場合(当該ハードディスクにアクセス可能な状態にした場合)、当該コンビュータのハードディスクが、児童ポルノを内容とする電磁的記録に係る記録媒体に該当し、児童ポルノの公然陳列罪が成立する(最3小判平成13年7月16日刑集団巻5号317頁参照)。
その際、不特定多数の者が、当該画像データを閲覧するために、当該ハードディスクにアクセスして、その児童ポルノの画像データを自己のコンビュータにダウンロードした場合に、当該不特定多数の者の行為を介して、同人らのコンビュータに児童ポルノを内容とする画像データを提供したこととして、児童ポルノを内容とする電磁的記録の提供罪が成立するか否かについては、様々な考え方があり得るところであるが、混合包括ー罪として児童ポルノの公然陳列罪ー罪の法定刑の範囲内で処理されることになると考えられる。

警察実務重要裁判例H16
コンピュータの記憶装置内に記z億,蔵置された児童を相手方する性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を撮影した画像データは,それ自体「児童ポルノJに該当するか。
3 なお.児童買春児童ポルノ禁止法については,本年6月11日成立,18 日公布の改正法案により,電気通信回線を通じて2 条3 項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供する行為を処罰することとされており,本件のような「送信」行為に着目した処罰が可能になるものと思われる。