児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

脅迫して撮影・送信させる行為(強制セクスティング)は強要罪と3項製造罪の併合罪である。

 併合罪説の起訴状と観念的競合説の起訴状があるので、ちょっともんでみます。訴因不特定で公訴棄却しろという主張になります。

 例えばこういう訴因

平成22年9月11日ころから同月12日ころまでの間,被告人方において,A(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,携帯電話機の電子メールにより,「援交してるって書き込みする」などと申し向けて脅迫し,同児童をしてこれに応じなければ,自己の名誉,身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨畏怖させ,同月12日から同月14日ころまでの間,別表2記載のとおり,6回にわたり,同児童をして,大阪府内所在の同児童方において,その所有する携帯電話機のカメラ機能で,同児童の着衣を着けない乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、撮影記録させ,さらに,その携帯電話機から電子メールで,被告人の所有に係る携帯電話機あてに同撮影に係る画像3枚及び動画3個の電磁的記録をそれぞれ送信させ,そのころ,前記被告人方において,前記画像3枚及び動画3個の電磁的記録を被告人の所有に係る携帯電話機で受信した上,同携帯電話機内に記録蔵置しもって,同児童をして,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態をとらせるなどして義務なきことを行わせるとともに,同姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。

 強要罪は脅迫行為で着手があり、撮影・送信させた時点で既遂となり、その後は被告人の行為なので、そこで強要罪は終了。

 判例によれば、「姿態をとらせ」は3項製造罪の実行行為ではないので、重なり合いの検討対象とはならない。
 3項製造罪の実行の着手は、被害児童をして撮影させた時点である。既遂時期は被告人が受信して被告人の携帯に記録蔵置した時点である。
 とすると両罪の実行行為が重なるのは、「被害児童に撮影・送信させた」部分だけである。
 ところで3項製造罪と他罪との関係については、最決H21.10.21が

児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。

と判示しているところ、両罪の実行行為が重なるのは、「被害児童に撮影・送信させた」部分だけであることや、両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,製造罪の核心は記録行為にあること、両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはないというべきである。