児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

教員による児童ポルノ・児童買春事件の実刑・執行猶予の分水嶺

 報道の事件について実刑かどうかを聞いてくる人がいるのですが、何件起訴されるかが最低限必要な情報です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100615-00000573-san-soci
同課によると、容疑者はインターネット上のモデル募集掲示板で女子高生と知り合い、昨年8月から1回約2万円で計5回にわたり、みだらな行為を繰り返していたとみられる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100615-00000106-jij-soci
同課によると、容疑を認め、「写真撮影が趣味で、若い子を撮りたかった。ほかの女子高生の裸も撮影した」と供述。約5年前から同様の行為を繰り返したといい、自宅のパソコンから10代後半とみられる約10人のわいせつな画像が発見されたという。
 逮捕容疑は5月16日午後、埼玉県戸田市のホテルで、都内に住む私立高3年の女子生徒(17)が18歳未満であると知りながら、現金2万円を渡すと約束し、わいせつな行為をした疑い。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100615-00000048-mai-soci
同課によると、容疑者は5年前から、モデル募集掲示板で知り合った女子高生ら約10人について、ヌード撮影やわいせつな行為をしたことを認めているという。
 逮捕容疑は、5月16日、埼玉県戸田市のホテルで都内の私立高校3年の女子生徒(17)に2万円を渡してわいせつな行為をしたとしている。容疑者は「若い子の写真を撮りたかった」などと容疑を認めているという。

 この事件には騙しの要素がありますから、処罰感情が強く出てくるはずです。
 現職教員の場合は量刑が少し重くなっています。
 某地裁の実刑判決が高裁で破棄されてぎりぎり執行猶予になっていて(極めて希)、この辺が実刑・執行猶予の分水嶺だと思います。この程度で、弁護人が手を抜くと実刑になります。また、これより多くなると、いくら情状を積んでも実刑を免れない感じです。

主文
被告人を懲役1年10月に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、
第1
平成20年11月23日、大阪市所在のホテル「大阪商人」において(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、被害児童Aに対し.現金4万円の対債を供与して被害児童Aと性交し、もって児童買春をした
第2
同日、前記場所において、被害児童Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、被害児童Aをしてその乳房及び陰部を庶出させるなどの姿態をとらせた上、これをデジタルカメラで撮影し、その画像データを記憶させ、同日ころ、同市所在の被告人方において、上記画像データをコンピューターに記憶、蔵置させ、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像デ−タ20画像を製造した
第3
平成21年3月16日、同市所在のホテル「オオサカン」において、(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、被害児童Dに対し、現金2万円の対債を供与して被害児童Dと性交し、もって児童買春をした
第4
同年4月29日、大阪市所在のホテル「プチ・おおさか」において、(当時16歳。)が18歳に満たない児童であることを知りながら、被害児童Bに対し、現金2万円の対償を供与して被害児童Bと性交し、もって児童買春をした
第5
同年8月8日、大阪市所在の立体駐車場屋上(3階)に駐車中の自動車内において、(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、被害児童Cに対し、現金8000円の対債を供与して被害児童Cと性交し、もって児童買春をしたものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
判示第1、第3から第5までの所為は.いずれも児童買春.児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条.2条2項1号に、判示第2の所為は同法7条3項.1項、2条3項2号、3号に.それぞれ該当するが、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法45粂前段の併合罪であるから.同法47条本文.10条により刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役1年10月に処し、同法21条を適用して未決勾留日数中20日をその刑に算入することとする。
(量刑の理由)
被告人は、平成元年4月から大阪市内の中学校に社会科教諭として勤務していたものであるが、その性欲解消のため、携帯電話のいわゆる出会い系サイトを利用して知り合った被害児童らに対価を供与して相次いで性交を重ね(判示第1、第3から第5まで)、あるいはその際に児童ポルノを製造した(判示第2)ものであって、その自己中心的な動機に酌量の余地はなく、その性犯罪に対する犯罪性には憂慮すべきものがある。
また、被告人は、児童生徒を善導すべき立場にある教育者でありながら被害児童らの健全な成育に悪影響を及ぼす行為に及んでいたもので.本件各犯行は、強い非難に値する。
 他方、免職・報道・・・などの事情が認められる。しかしながら、これらの事情をもってしても、被告人に対してその刑の執行を猶予するには足りないと言うはかなく、主文のとおり判決する次第である。
(求刑懲役2年6月)
平成22年2月29日
×地方裁判所刑事部