児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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176条後段の強制わいせつ2罪について保護観察付執行猶予とした原判決を破棄して実刑判決とした事例(宮崎支部H21.3.31)

 刑事確定訴訟記録法で閲覧しましたが、判例秘書にも搭載されました。
 検察官控訴事件で、控訴趣意書に強制わいせつ罪1罪の量刑一覧、2罪の量刑一覧が添付されています。
 ユニセフに寄付したそうです。

福岡高等裁判所宮崎支部判決平成21年3月31日
       主   文
 原判決を破棄する。
 被告人を懲役1年8月に処する。
 原審における未決勾留日数中130日をその刑に算入する。
 原審における訴訟費用は被告人の負担とする。
論旨は,本件は,いずれも,1人で下校する小学校低学年程度の女児を対象とした性犯罪であって,被害女児両名及びその親権者が受けた現在,将来両面における身体的,精神的被害は極めて甚大であり,被害女児両名及びその親権者の処罰感情はしゅん烈である上,近隣住民等に著しい不安感を及ぼすなど社会的影響も大きく,犯情は極めて悪質であり,いずれの犯行も被告人の根深い犯罪傾向によるものであって,再犯のおそれが極めて大きいなど,その矯正には施設内での徹底した教育が必要,不可欠であり,実刑を科すべきであるのに,被告人に対して保護観察に付して刑の執行を猶予した原判決の量刑は著しく軽きに失して不当である,というのである。
 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果も併せて検討する。
 本件は,共犯者と共謀し,下校途中の当時8歳の被害女児に対し,落とし物にかこつけた虚偽の事実を申し向け,被害女児を付近のアパート2階通路に誘い込み,わいせつの目的で被害女児を誘拐し,その通路で,下着等を脱がし,手指で陰部をもてあそぶなどするわいせつな行為をしたわいせつ誘拐,強制わいせつの事案(原判示第1の犯行),さらに,単独で,下校途中の当時8歳の別の被害女児に対し,公民館便所前で,その下着等を脱がせて下半身を露出させ,しゃがませるわいせつな行為をした強制わいせつの事案(原判示第2の犯行)である。
 被告人は,成長途上の女児の陰部を見たいなどとの性的欲求を抑えきれず,被害女児両名に与える被害の大きさなどを何ら考えることなく,その身勝手極まりない自己の性的欲求を充たすために本件各犯行に及んでいるのであり,それぞれの犯行の経緯,動機に酌量の余地は全くない。原判示第1の犯行では,共犯者が下校途中の被害女児に声を掛ける役割を担っているが,誘い込んだ人目に付かないアパート2階通路で,共犯者が見張りをしている間に,被告人において,被害女児の下着等を脱がし,陰部を手指でもてあそび,自己の陰茎を被害女児の陰部に接触させて射精する行為にも及んでおり,強制わいせつの犯行は,他人が通行する場所で比較的短時間に行われたものではあるものの,その犯行態様は誠に劣悪であり,また,原判示第2の犯行では,被告人において,下校途中の被害女児を見掛け,先回りをして声を掛け,被害女児が小学2年生であることも聞き出し,その年齢であれば自己の思いどおりになるなどと考え,被害女児を執拗に誘って,人目に付きにくい公民館便所前で被害女児の陰部を露出させるなどの犯行に及んでおり,それ以上の行為に出なかったのは,不審を抱いた近隣住民に声を掛けられて被告人がその場から逃げ出したことによる結果であって,その犯行態様が比較的軽微であるとすることはできず,やはり卑劣で悪質というべき犯行である。しかも,これらの犯行は2年5か月余の間に繰り返されており,それぞれの犯行が偶発的犯行とすることはできず,被告人のこの種犯罪性向が根深いものであることも否定することができない。そして,原判示第1の犯行の被害女児は,被害に遭ったことから,1人になるのを嫌がり,友達とも遊ばなくなり,男性教諭を怖がって担任を女性教諭にする措置がとられるなどもしており,なお,診断書(意見書及び資料添付,当審検1)によれば,犯行から約3年3か月が経過した時点の被害女児は,トラウマによる後遺症に苦しみ,心理治療を要する状態であることが認められ,また,原判示第2の犯行の被害女児も,被害に遭った後,1人での登下校を嫌がり,夜1人で眠れないでいるなど,被害女児両名の被った精神的被害はいずれも甚大であり,いずれの犯行にあっても,帰宅した被害女児からおおよその被害状況を聞き取った両親の驚き,不安,衝撃は計り知れず,おぼろげながらも自身の被った被害を理解した被害女児両名,さらには,その両親がこぞって被告人に対する厳しい処罰を求めているのは当然であり,本件各犯行が地域住民に与えた不安も大きいと考えられ,以上からすると,被告人の刑事責任は重く,年少の被害者に対する性犯罪を抑止すべき一般予防の見地からしても,被告人に対して実刑をもって臨む必要があるというべきである。

 そうすると,他方で,原判示第2の犯行について,慰謝料として30万円を支払うなどして,被害女児の親権者父との間で示談が成立していること,被告人の父において,被告人の指導,監督を約していること,被告人において,被害女児及びその両親に与えた精神的苦痛に思いを致し,各犯行の責任が重大であることも自覚し,反省を深めていること,反省及び償いの証として,原審の勾留段階から,家族の援助も得てユニセフへの寄附を毎月続けるなどしていること,また,被告人の父において,日本弁護士連合会及び宮崎県弁護士会に50万円の贖罪寄附をしていること,被告人に交通事犯を除いて前科,前歴がないこと,さらには,原判決後,被告人において,反省を更に深め,更生の意欲も強めていることなど,被告人のために酌むべき事情ないし量刑上有利に考慮すべき事情もあるが,これらの事情を十分に考慮しても,原判決の上記量刑は,保護観察に付したとはいえ,その刑の執行を猶予した点において,軽きに過ぎると認められる。