児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

jaipa「児童ポルノブロッキングについての当協会の見解」

 無条件に受け入れるわけではないということです。

http://www.jaipa.or.jp/comment/100423_jipo.pdf
2010年5月18日
児童ポルノブロッキングについての当協会の見解

社団法人日本インターネットプロバイダー協会
1. 児童ポルノに対しISPが行なうネットワーク上のブロッキングについては、通信の秘密の保護を規定した電気通信事業法に抵触するのではないかという問題がかねてより指摘されていたが、今年3月に安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策部会法的問題検討サブワーキングの報告で「児童ポルノは、(中略)違法有害情報の中でも別格というべき類型ということができ、検挙や削除が著しく困難である場合に、より侵害性の少ない手法・運用で、著しく児童の権利等を侵害する内容のものについて実施する限り、児童ポルノブロッキングにつき、緊急避難として、現行法のもとでも許容される余地はあると考える。ただし、その実施にあたっては、電気通信事業法を所管する総務省の見解も踏まえつつ、その手法、ブロッキングの対象等について通信の秘密や表現の自由の不当な侵害が生じないよう、十分な配慮が求められるだけでなく、今後、電気通信事業者等が、緊急避難に基づいて自主的取組としてのブロッキングを実施するに際しては、その対象や手法等について、可能な限り明確性と透明性が確保されることが必要であることから、事業者や利用者、法学者等の幅広い関係者の参加を得て、引き続き検討していくことが望ましい。」と整理された。

2. ISPブロッキングを行うかは、個々のISPが自主的に決める問題。通信内容に事業者が踏み込む点で好ましいことではないが、児童ポルノの被害の重大性、児童ポルノを取り巻く内外の動向や世論を熟慮の上、各社がネットワーク上のブロッキングを事業者の事業の一環として行うのはやむをえない判断であると思われる。

3. ISPは個々のコンテンツの児童ポルノ該当性を自ら判断することはできないので、第三者機関が作成した児童ポルノ掲載アドレスリストに基づきブロッキングを行うことになる。ISPはリストの中身については関知しない。(個別のISPが個別のリスト掲載サイトの妥当性等について説明責任を負うことはない。)実際のブロッキングは実証実験やトライアル試行等の準備を踏まえ、運用フローを関係者間で構築した上で行なわれる必要がある。現時点においてブロッキングのリスト作成団体は決まっていないが、中立性・透明性が確保されることは必要最低条件である。

4. 児童ポルノブロッキングには多大なコストがかかるものであり、単にISPのみが負担するのではなく、ブロッキングの効果的な普及に向け、中小事業者などへの支援など、今後公的、民間による幅広い負担も検討されるべきと考える。

5. ISPによるコンテンツのブロッキングは、児童ポルノに限り容認されるものであり、児童ポルノ以外の違法情報や著作権侵害コンテンツなどに決して拡大されるべきではないと考える。

以上

児童ポルノ対策としてのISPによるブロッキング検討の経緯及び当協会が考える問題点
インターネット上での児童ポルノの流通防止については、各電気通信事業者とも、発信者が公開しているファイルの迅速な削除などにより、積極的に取り組んできたところである。

 2008年度に「インターネット上の違法・有害情報への対応の在り方に関する検討会」および総合セキュリティ対策会議において、ISPがネットワーク上でブロッキングを行うことについて検討すべきであるとされた。これを受け、通信の秘密との問題を中心に法的問題が検討された結果、今年3月に安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策部会法的問題検討サブワーキンググループの報告書が発表され、緊急避難として実施できる余地があると結論付けられた。

この報告書により、今後各社において、これまでより踏み込んだ形で検討が行われることとなる。
当協会としては、ブロッキングを実施すべきかどうかは各社の判断を尊重すべきであると考えるが、各社が可能な範囲で児童ポルノ流通防止対策に取り組むことができるよう、引き続き努力してまいりたい。
なお、ネットワーク上でのブロッキングについては、児童ポルノと一切関係のない一般の利用者の通信についても、一度はその宛先をブロッキングのために確認することとなるのであり、利用者全員の通信の秘密を一度は侵害することが避けられないことについても、十分な配慮が必要である。2010年1月に実施された「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン」への意見募集に際しても、ブロッキングに期待する意見の一方で、懸念を示す意見も多数寄せられたことは、通信の秘密の保護への国民の強い要請の表れであり、決して軽視できるものではない。

ブロッキングは技術的には児童ポルノ以外のコンテンツに対しても適用が可能であり、実際に他の分野の情報もブロッキングの対象になっている国もある。仮にわが国において児童ポルノブロッキングが実施されるとしても、その範囲がなし崩し的に広がってはならないことは当然である。一般的な違法情報、著作権侵害コンテンツ等にしても、被害児童に自己の画像が流通すること自体に怯えることを余儀なくさせるような児童ポルノとは根本的に異なるものであって、ブロッキングの対象とすることは許されない。

ブロッキングのこのような重大性(国民全体に対する通信の秘密の侵害)に鑑みると、ブロッキングが適用される局面は緊急避難に当たる限られた場合であるとした、安心ネットづくり協議会の報告書の立場は、現時点における考え方としては、極めて妥当なものであると考える。

以上