児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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松原芳博「ハンス・ヨアヒム・ヒルシュ「行為主義刑法−十分に尊重されている基本原則であろうか?」」

論文名 ハンス・ヨアヒム・ヒルシュ「行為主義刑法─十分に尊重されている基本原則であろうか?」
掲載誌など 早稲田法学
巻/号,頁 79巻4号
発行年月 2004年 9月
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/2603/1/A03890546-00-079040237.pdf
〔外国文献紹介〕
        松原芳博「ハンス・ヨアヒム・ヒルシュ「行為主義刑法−十分に尊重されている基本原則であろうか?」」
 ところで、近時の日本の刑事立法においても、危険社会論を背景にして、抽象的危険犯という形式による処罰の早期化傾向が顕著となっている。ここでは、本来の法益侵害との関係では予備ないしそれ以前の段階にとどまる行為が独立の抽象的危険犯として処罰の対象とされ、しばしば犯罪に用い得る一定の物ないし情報の提供・取得や所持・保管を構成要件化する立法形式が採用されている。
 たしかに、これらの立法でも外部的な身体の動静は必要とされている。しかし、こういった「所持」や「保管」等に代表される前置化された構成要件が、真に行為の社会的外界への作用としての法益の侵害・危殆化を処罰根拠とするのか、それとも行為者の悪性を処罰根拠とするものなのかについては、なお慎重な検討を要するであろう。「所持」や「保管」は、本来、社会的外界に顕現する以前の私的領域にとどまるものであって、その犯罪化には行為主義との関係で特別の正当化を必要とするように思われる。(15)

(10)行為概念の2つの含意については、松原芳博「所持罪における『所持』概念と行為性」佐々木史朗先生喜寿祝賀『刑事法の理論と実践』(2002年)25頁参照。

(15)所持の犯罪化が行為主義との関係で問題を含んでいることにつき、松原・前掲注(10)26頁参照。特に児童ポルノ禁止法の改正をめぐって議論されている単純所持・保管の犯罪化には問題があるように思われる。なお、「所持」の行為性については、行為主体の関与という観点からも問題がある(松原・前掲注(10)26頁以下参照)。