児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

P2P児童ポルノが検挙されない理由

 犯意の立証が難しければ過失犯を検討すればいいんですけどね。
 そもそも児童ポルノ法はP2Pの時代(H16)に改正されたのに、サイバー犯罪条約への対応がやっとで、P2Pの規定を置かなかったのが原因です。立法者の情報収集能力に問題があるのか、頭の回転がよろしくないのかという感じです。
 そうなると現場が混乱するわけで、いまだに、P2Pで拡散させる行為が、公然陳列罪なのか、4項提供罪(不特定多数)なのかは判例でも一定しません。
 さいたま地裁奈良地裁にはP2Pを提供罪とした地裁裁判例がありますが、京都地裁・大阪高裁H21.9.2は提供罪を否定しています。

金沢地裁小松支部H19.2.28提供罪(WEB掲載型)
長野簡裁H20.12.16公然陳列(LIMEWIRE
奈良地裁H20.10.15提供目的所持(うたたね)
奈良地裁H21.1.29提供目的所持(うたたね)
奈良地裁H20.7.10提供目的所持(うたたね)
奈良地裁H20.4.4提供目的所持(うたたね)
川越簡裁H20.11.26提供目的所持(EMULE
川越簡裁H20.12.2提供目的所持(EMULE
川越簡裁H21.3.3提供目的所持(EMULE
川越簡裁H20.11.25提供目的所持(EMULE
津地裁H20.11.27提供目的所持(うたたね)
京都地裁H21.5.11公然陳列罪(share)
阪高裁H21.9.2公然陳列罪(share)

阪高裁平成21年9月2日宣告
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画陳列被告事件
弁護人奥村徹(私選)
一審判決京都地方裁判所平成21年5月11日宣告
理由
また,弁護人は,本件は,児童ポルノ公然陳列罪ではなく,児童ポルノ提供罪が成立する旨主張するが,本件が児童ポルノ公然陳列罪に該当することは,一審判決が「補足説明」の項で正当に説示するところである。
なお,弁護人の主張にかんがみ,付言するに,児童ポルノ法の平成16年改正で,電磁的記録の提供(同改正後の同法7条4項後段)を新たに処罰の対象として新設し,かつ,児童ポルノの定義(同法2条3項)に「電磁的記録に係る記録媒体」を明記した趣旨は,同改正前の同法において,児童のポルノに係る電子データを記録媒体に記憶させ,これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧させた場合には,上記電子データが記憶・蔵置された記録媒体を有体物としての児童ポルノとし,その公然陳列があったとして,児童ポルノ公然陳列罪が成立すると解されていたところ,これを前提として,同改正前の同法では処罰の対象として含めることに疑義があった電子メールにより児童のポルノを内容とする電磁的記録を送信して頒布する行為の処罰を新設するとともに,この改正に伴い,解釈上の疑義が生じないように児童ポルノの定義中に「電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明示したというものである。このような同法の改正の趣旨にかんがみれば,本件が児童ポルノ提供罪に当たらないことは明白である。
以上のとおり,一審判決に法令の適用の誤りはない。弁護人の主張は,採用できない。

 これが現在の日本の判例です。被告人・弁護人の無知にも助けられて、こんなんで懲役刑を執行している。
 規制を求める人たちは、もっと学習してこういう穴をふさぐように求めるべきだと思います。現行法や既存の法律・判例を知らないで新罪を作ることにばかり集中しているとこうなります。

[親は知らない]PART5(4)幼い裸 無限に拡散(連載)2010.05.03 読売新聞
 「これほど大量の児童ポルノを送信し続ける者が、なぜ摘発されないのか」。ニィジラを開発した情報セキュリティー専門家、高木浩光氏(43)(産業技術総合研究所主任研究員)は憤る。

 P2Pに絡む児童ポルノ事件の摘発件数は5年間でわずか17件。児童買春・児童ポルノ禁止法では、ただ画像を持っているだけの「単純所持」は禁じておらず、提供する目的で所持していたことを問わなければいけない。ただ、代表的なP2Pのウィニーの場合、集めたファイルが自動的に送信される仕組みのため犯意が立証しにくく、起訴されたケースはない。

 「広めるつもりはなかった。興味本位で見ていただけなのに」。別のP2Pを使って2008年、同法違反(提供目的所持)容疑で埼玉県警に逮捕された広島県内の会社員の男(38)は、自分が児童ポルノの拡散に加担していたとの意識は今もない。

 男が流した児童ポルノの中には、「古典」と呼ばれる画像があった。1990年代後半、小学生とみられる姉妹が肉親によって数年間にわたって撮影されたとみられるわいせつ画像。姉妹はもう成人しているはずだが、幼い裸体はネット上をいつまでも漂流し続けている。ニィジラで見つかった九州の人物も公開していた。

 「ネット上の違法画像を何度削除しても、ファイル交換ソフトの利用者が画像を持つ限り、ネット上に逆流して永遠に流れ続ける」。児童ポルノ問題に詳しい後藤啓二弁護士は指摘する。

 警察庁によると、1日当たりのP2P利用者は13万5000人。送信ファイル数は85万を数える。その多くは児童ポルノを含む違法、有害ファイルとみられる。