児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<強姦致傷>異例 さらに10年求刑 強殺未遂で懲役25年

 審理が分離されるといろいろ不都合が出てきます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100420-00000126-mai-soci
東京地裁(林正彦裁判長)の裁判員裁判で、東京地検は20日、異例の懲役10年を求刑した。強盗殺人未遂罪と合わせ有期懲役刑の上限(30年)を超えるが、検察側は「事件に見合う刑を科すべきで、懲役5年以下は軽すぎる」と主張した。
 刑法は判決確定前に犯した複数の罪を「併合罪」として扱い、有期刑の場合は最も重い罪の上限の1.5倍までしか科されない。有期刑の上限は20年のため、併合罪の上限は30年。刑法や法務省規定で、これを超える分の刑は執行されない。

有価証券偽造・同行使、詐欺未遂、殺人、建造物侵入幇助、非現住建造物等放火未遂幇助、Bに対する殺人、詐欺未遂各告事件
東京高等裁判所判決平成6年9月16日
高等裁判所刑事裁判速報集平成6年107頁
判例時報1527号154頁
控訴趣意第二(法令適用の誤りの主張)について
所論は、要するに、原判決は、被告人Bに対する法令の適用において、殺人の罪について有期懲役刑を選択し、同罪と詐欺未遂罪との併合罪加重に当たり刑法一四条の制限を判示していなから、確定裁判のあった罪との間での併合罪処理に当たり、同条の適用ないしその趣旨を何ら顧慮することなく、同被告人を懲役二〇年に処しているが、これは、一般論という意味でもさることながら、本件の具体的な結論としても妥当とは思われず、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、というのである。
 記録によれば、被告人Bには、原判決挙示の確定裁判(賭博開帳図利罪により懲役一年二月、四年間執行猶予)があること、原判決が所論指摘のとおりの法令の適用により被告人Bに対し懲役二〇年に処したことが認められる。所論の趣旨は、要するに、確定裁判のあった罪と本件の殺人罪及び詐欺未遂罪とが同一の審理で行われれば、殺人罪で有期懲役刑を選択した場合、併合罪加重しても刑法一四条の制限により上限は二〇年であるところ、別々の審理で行われたことにより、原判決のように、本件の殺人罪及び詐欺未遂罪について併合罪加重し刑法一四条の制限内で懲役二〇年に処すると、これと確定裁判のあった罪により処された刑とを合わせて受けることになり、結果として同一の審理が行われた場合との間で不均衡が生じ、かつ、刑法一四条の趣旨が生かされなくなるのではないかと指摘するものと思われる。
しかし、併合罪につき数個の裁判かあったときは、その執行に当たっては、併合罪の趣旨に照らし、刑法五一条ただし書のほか、同法一四条の制限に従うべきものと解するのが相当であり、したがって、有期の懲役又は禁錮の場合に、通じて二〇年を超えて刑の執行を受けることはなく、所論のように宣告刑の刑期において調整をしなければならないものではないというべきである。したがって、所論は採用することができない。
 論旨は理由がない。

刑法
(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
第十四条  
1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
2  有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。
併合罪に係る二個以上の刑の執行)
第五十一条  
1 併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。
2  前項の場合における有期の懲役又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。


実際に執行する場面については研修に説明がありました。

扇谷俊春「執行事務(3)」研修652p118
そこで,二以上の自由刑の執行を同時に指揮する場合において,刑法51条2項の適用があるときは,執行することができる刑期に満ちるまで,最も重い刑から順次その刑期を加えてそれぞれ執行すべき刑期とし,これを明らかにして(順次執行すべき刑期を定め,これを執行指揮書に明記して)執行を指揮します。
具体的には,刑法51条l項本文は,併合罪につき二個以上の裁判があったときは,その刑を併せて執行する旨規定していますが,この併執行を無制限に行うと,併合罪の同時審判における科刑の制限(刑法47条,14条前段)を超えて刑を執行するという結果を生ずることとなる場合が考えられます。そこで,刑法51条2項は,併合罪の関係にある有期懲役刑又は禁銅刑を執行する場合には,その最も重い罪につき定めた刑(注1)の長期にその半数を加えたものを超えることができない旨規定して,併合罪に係る刑については,その執行面においても科刑の限度に執行をとどめています。さらに,有期刑の執行は,通じて20年を超えることはできません(刑法14条前段)(注2 すなわち,執行することができる刑期は,併合罪中の最も重い罪につき定められた刑の長期にその半数を加えたものがその限度であり,その限度が20年を超えるときは,刑法14条の趣旨により20年が最高限度となります。
例えば,懲役10年以下の罪につき懲役10年、禁錮10年以下の罪につき禁錮10年の言渡しがあった場合には,重い懲役10年の長期10年にその半数を加えた15年が執行することができる刑期となります。15年に満ちるまで重い刑から順次その刑期を加えると,懲役刑10年と禁鋼刑5年が執行すべき刑期となります。