児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

包括一罪の裁判例

 当時は、否定されまくっていた併合罪説ですが、いまでは判例になりました。裁判所が間違えますからこの法律は。
50回くらい唱えると信じてもらえるようです。
 個人的法益を重視するようになったとしか理由は考えられません。
 今度は1人1罪説を推していきます

平成21年7月7日最高裁判所第二小法廷
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,わいせつ図画販売目的所持,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090709090953.pdf

鳥取地裁刑事部
平成13年8月28日宣告 裁判所書記官
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,同販売目的所持被告事件

         理      由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
1 平成13年4月19日ころ,代金合計1万円を前払いしたFに対し,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したビデオカセットテープ1本及び男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ4本を,被告人自宅から,宅配便で,上記Fが指定した横浜市所在のF方にあて発送し,同月20日ころ,これをFに受け取らせ,もって,児童ポルノ及びわいせつな図画をそれぞれ販売し
2 販売の目的で,同年5月16日ころ,上記被告人自宅において,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したビデオカセットテープ9本及びCD−R6枚,18歳未満の児童を相手方とする又は児童による性交類似行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したビデオカセットテープ2本及びCD−Rl枚,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写し,かつ,これとは別に男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ3本及びCD−R3枚,男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ304本及びCD−R218枚を所持し,もって,販売の目的で児童ポルノ及びわいせつな図画をそれぞれ所持し
3 同年4月18日ころ,代金合計1万2000円を前払いしたIに対し,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写し,かつ,これとは別に男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ1本及び男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ5本を,上記被告人自宅から,宅配便で,上記Iが指定した大阪府にあて発送し,同月19日ころ,これを上記Iに受け取らせ,もって,児童ポルノ及びわいせつな図画をそれぞれ販売し
4 同月19日ころ,代金合計1万2000円を前払いしたJに対し,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したビデオカセットテープ1本,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により謬識することがでる方法により描写し,かつ,これとは別に男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ1本及び男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ4本を,上記被告人自宅から,宅配便で,大阪府上記J方にあて発送し,同月21日ころ,これを上記Jに受け取らせ,もって,児童ポルノ及びわいせつな図画をそれぞれ販売し
5 同月25日ころ,代金合計1万2000円を前払いしたSに対し,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写し,かつ,これとは別に男女の性交場面等を露骨に撮影収録したCD−Rl枚及び男女の性交場面等を露骨に撮影収録したCD−R5枚を,上記被告人自宅から,宅配便で,上記Sが指定した大津市所在の株式会杜にあて発送し,同月26日ころ,これを上記Sに受け取らせ,もって,児童ポルノ及びわいせつな図画をそれぞれ販売し
6 同月30日ころ,代金合計2万6000円を前払いしたTに対し,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したビデオカセットテープ2本,衣服の全部又は一部を着けない18歳未満の児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写し,かつ,これとは別に男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ1本及び男女の性交場面等を露骨に撮影収録したビデオカセットテープ10本を,上記被告人自宅から,宅配便で,大津市上記T方にあて発送し,同年5月1日ころ,これを上記Tに受け取らせ,
もって,児童ポルノ及びわいせつな図画をそれぞれ販売したものである。

法令の適用)
罰条
児童ポルノ販売,同販売目的所持の点
包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条1項,2項
わいせつ図画販売,同販売目的所持の点
包括して刑法175条
科刑上1罪(観念的競合)
刑法54条1項前段,10条(重い児童ポルノの罪の刑で処断)

(弁護人の主張に対する判断)
 所論は要するに,児童ポルノの罪は被撮影者の個人的法益に対する罪であるとし,これを前提として,
(1)本件訴因変更は公訴事実の同一性がないから許されず,変更後の訴因2ないし 6は審判の対象になっていない。
(2)被撮影者の児童1名につき1罪が成立するのに,本件においては,被害者の数 すら特定されていないから,訴因不特定(法256条3項)による公訴棄却を免れない。
(3)児童の実在が構成要件要素であるのに,公訴事実からそれが窺われないから,法339条1項2号(起訴状に記載された事実が真実であっても,何らの罪となるべき事実を包含していないとき)により決定で公訴を棄却するか,無罪判決を すべきであるし,そうでないとしても,「実在」に該当する具体的事実をできる 限り特定すべきであるのに不十分であるから,法338条4号(公訴提起の手続 がその規定に違反したため無効であるとき)により判決で公訴を棄却すべきである。
(4)被撮影者が児童(18歳未満)であることの立証も,被告人が年齢を知ってい たことの立証もない上,本件児童ポルノは静止画像ではCGや合成写真である可 能性があり,撮影時点で被撮影者が実在しているとはいえず,被告人が実在性を 認識していない。また,保護法益が個人的法益である以上,被撮影者は犯行時に 実在ないし生存していることが必要であるのに,この点の確実な証拠もない。
(5)本件ビデオのうち2号ないし3号児童ポルノとされるものについては,いずれ も全体から見て,ストーリー性や学術性,芸術性などを有している上,少数の児 童ポルノ愛好家でなく一般人が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらな いから,児童ポルノとはいえない。
(6)保護法益が個人的法益であるから,被害者の同意があれば犯罪の成立は阻却される。
などと言うのである。                             ′ ところで,児童ポルノ(児童回春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の俸護等に関する法律2条3項に定義された児童ポルノをいう。)を販売等する行為は,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に事大な影響を与えるものであるから,かかる行為を規制,処罰することとしたものであって,対象とされた児童の保護を主たる目的としているとはいえ,このことから当然に被撮影者の児童1名につき1罪が成立するものではなく,罪数を決するに当たっては,その構成要件的評価によるべきところ,児童ポルノの販売ないし販売目的による所持は,反復継続する行為を予想するものであるから,同一の意思のもとに行われる限り,個々の販売や所持は,これを包括して1罪と解するのが相当である。そうすると,本件訴因変更は適法であり,起訴状ないし訴因変更請求書において被害者数を明らかにしなかったからといって,訴因の特定に欠けるとも言えない。
 また,児童の実在性については,描写されている者が実在する児童,すなわち「18歳未満の者」であることが立証されなければならないが,それ以上に,描写された被害児童がどこの誰であるかが訴因の特定のために必要であるとは解されない上,被撮影者が18歳未満の実在する児童であることは,鑑定書等挙示の関係証拠によって十分認定でき,これがCGや合成写真であることを疑わせる状況はない。また,被告人の知情の点についても,合理的な疑いを差し挟む事情は見い出せない。(5),(6)の点についても,本罪の立法趣旨に鑑みると,これらが法の定義する児童ポルノに該当することは明らかというべきであり,また,被害者の同意によって違法性が阻却されるものでもない。 弁護人の主張は,いずれも採用できない。

(量刑の理由) 

大阪地裁H13.2.21
児童ポルノ法違反に関する弁護人の主張に対する判断)
第一 憲法違反の主張について
 一 児童ポルノ法二条一項の憲法一三条、二一粂違反について
  1 弁護人は、児童ポルノ法七粂一項が前提とする同法二条一項について、婚姻可能年齢は民法上男子一八歳、女子一六歳とされており(民法七三一条)、また、刑法上の性的行為に同意することが可能な年齢は一三歳とされているから (刑法一七六条、一七七粂)、少なくとも一六歳以上の女子には法律上、性的な行為に同意する能力があり、性的な自己決定権があるというべきであるから、児童ポルノ法二条一項で年齢別の区別も婚姻についての例外も設けられておらず、一律一八歳未満を児童として取り扱っている点で、性的な表現を含むビデオに出演するという児童の自己決定権を侵害するから、憲法一三条に達反すると主張する。
 しかし、児童ポルノ法は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、児童ポルノにかかる行為等を処罰するとともに、これらの行為などにより心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的としているところ、児童ポルノに描写することは、その対象となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときは、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであるから、児童ポルノ法は、直接的には児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであるが、間接的には児童一般を保護することをも目的としていると解される。このような同法の立法趣旨に照らすと、一八歳未満の者を一律に児童とした上で、児童ポルノを規制する必要性は高いというべきであり、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに児童に淫行させる行為等児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律である児童福祉法においても、対象者は一八歳に満たない者であることにも鑑みると、いわゆる児童の性的自己決定権が制約されることになったとしても、その制約には合理的な理由があるというべきであるから憲法一三条に達反するとは言えない。
  2 弁護人は、児童ポルノ表現の自由の範疇であるところ、憲法の保障する基本的人権の中でも特に重要視されるべきものであって、法律をもって制限する場合には、より制限的でない他の手段をとらなければならないが、児童ポルノ法は、年齢別の区別も婚姻についての例外も設けられておらず、一律に一八歳未満を児童として扱っている点において、表現の自由に対する過度に広範な規制であり、憲法二一条に達反すると主張する。
    しかし、児童ポルノ法の立法趣旨とその規制の必要性に鑑みれば、同法二条一項が表現の自由に対する過度に広範な規制を定めたものとは言えない。
 二 児童ポルノ法二条三項の憲法二一条、三一条違反について
  1 弁護人は、児童ポルノ法七条一項が前提とする同法二条三項により規制される児童ポルノは、被撮影者である児童の人権を救済し、保護するという目的に照らすと、同法二条三項の定義の中に具体的な子供が被写体となっている場合に限る旨を規定する必要があるのに、そのような限定がないので明らかに過度に広範な規制であるから、意法二一条に達反すると主張する。
    しかし、児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、同法が児童ポルノに描写される児童自身の権利を擁護し、ひいては児童一般の権利をも擁護するものであることに照らすと、児童が架空の人物ではなく、実在する人物であることは必要であるが、それ以上にその児童を具体的に特定することは必要ないと解すべきであって、そのような規定が設けられていないからと言って同法二条三項が過度に広範な規制であるとは言えない。
  2 弁護人は、「①児童ポルノについての定義である同法二条三項二号、三号には視覚的描写を限定するため「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件を付しているが、この要件は、客観的判断が困難であり、判断基準は曖昧である。よって、限定が曖昧なので対象が広がるおそれがある。②刑法上のわいせつの概念である「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道徳概念に反するもの」という要件と対比すると「いたずらに」という限定がないため規制の対象が広がっている。これらの点で過度に広範な規制であるから、憲法二一条に達反する。」と主張する。
    しかし、わいせつ図画におけるわいせつ概念と比較しても「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件が基準として曖昧であるとは言えない。また、わいせつ物頒布等の行為を規定した刑法一七五条は、社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるが、児童ポルノ法は、直接的には、児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護することを目的とするとともに間接的には、児童一般を保護することをも目的としているから、その射程範囲には自ずから相違があり、わいせつ図画の場合におけるほど性欲を興奮させ又は刺激させるものでなくても児童に与える影響を鑑みると、処罰する必要性が高いと言うべきであるから、「いたずらに」という限定がなくても、同法二条三項二号及び三号が表現の自由に対する過度に広範な規制であるとは言えない。
  3 弁護人は、「児童ポルノについての定義である同法二条三項二号、三号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かを客観的に判断することは困難である。通常人は、児童の裸体等に性的興奮を覚えたり、それから刺激を受けたりしないのであるから、通常人を基準としてこれを判断するのであれば、児童ポルノに当たるものはなくなるし、また、子供の性に対して特別に過敏に反応する者を基準としてこれを判断することは、通常人を名宛人とする法規範の解釈としては許されない。このように同法二条三項二号、三号は漠然不明確な規定であるから、憲法二一条に違反し、限定が曖昧すぎて刑罰法規として不明確であり、憲法三一条に達反する。」とも主張する。
    しかし、わいせつの概念が「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめかつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義概念に反するもの」のようなものであるにもかかわらず、刑法一七五条が憲法二一条や三一条に達反するものでないとされていることなどからしても、本条の規定が漠然として不明確であるとは言えず、その判断が困難であるとは言えない。
  4 弁護人は、児童ポルノ処罰規定は被撮影者の意思に反するものであることを要件とすべきであるのにそれを欠いているのはいずれも立法目的に照らして合理的関連性を欠くから、過度に広範な規制として憲法二一条に達反すると主張する。
    しかし、児童ポルノ法の立法趣旨、目的、ことに同法が児童ポルノに描写された児童の保護だけでなく、児童一般の保護をも目的としていることなどに照らすと、法二条三項各号が児童ポルノで描写された被撮影者の意思に反することを要件としていなくても立法目的と規制手段との間に合理的関連性を欠くとは言えない。
  5 その他、弁護人は、児童ポルノ法が憲法に達反するとして縷々主張するが、いずれの主張も採用できない。
第二 公訴棄却の主張について
   弁涛人は、児童ポルノ販売罪について、販売したビデオテープに複数の被撮影者がある場合、被撮影者のうちどれが児童ポルノの対象児童であるのか特定する必要があるのに、本件では、単に一ビデオタイトルごとの特定しかなされておらず、複数の被撮影者のうちどれを「児童」として審判の対象としているのかが不明確であり、訴因の特定を欠くから、公訴棄却されるべきである旨主張する。
   しかし、児童ポルノ販売罪は、児童ポルノという「物」を販売することが構成要件とされるもので、児童ポルノ法二条三項所定の描写が含まれるビデオテープその他の物であれば、犯罪の客体となるから、披撮影者のうちどの人物が同罪における児童ポルノの対象児童であるのかについてまでは具体的に特定する必要はない(なお、本件児童ポルノ販売罪の犯罪客体であるビデオテープについては、タイトル及び録画内容によりその内容(描写部分)は特定されている。)。
   弁護人は、児童ポルノ法は、被撮影者たる個々の児童の権利擁護のために制定されたのであり、同法の保護法益に照らして、披撮影者のどれが「児童」に当たるのか訴因上特定する必要がある(罪数も描写された「児童」の数によって決定される。)旨主張する。
   しかし、前述したような同法の立法趣旨に鑑みれば、本罪の保護法益から当然に披撮影者のどれが「児童」に当たるのか訴因上特定すべきことになるとは解されない(また、児童ポルノ販売罪の罪数は描写された「児童」の数によって決定されるものとも解されない。)。
   よって、この点についての弁護人の主張は採用できない。
第三 訴因変更の可否について
   弁護人は、児童ポルノ販売罪については、被撮影者たる個々の児童の権利が保護法益であり、被撮影者ごとに犯罪が成立するところ、当初の起訴状訴因の事実(判示二、四の販売事実)と六月一六日付け訴因変更請求書記載の事実(判示一ないし五の販売事実)は公訴事実の同一性を欠くから訴因変更を許可されるべきではなかった旨主張する。
   しかし、児童ポルノ販売罪は、被撮影者である児童ごとに犯罪が成立するものではなく、基本的には、児童ポルノ販売行為を基準に罪数が判断されるうえ、本件のような形態の事案については、販売の日時、場所、相手方、販売対象のビデオテープが異なっても全体として包括一罪と解すべきであるから、当初の訴因と変更請求された訴因との公訴事実は同一であり、前記弁護人の主張は採用できない。
   その他、弁護人が訴因変更に閑し主張する点はいずれも採用できない。
第四 事実認定について
 一 本件各ビデオテープの被撮影者である児童の「実在性」
   弁護人は、本件各ビデオテープに撮影された児童について、その実在性の証明がないと主張するが、本件各ビデオテープを見るに、被撮影者が実在の児童であることは、一見して明らかであるから、弁護人の右主張は採用できない。なお、本件各ビデオテープ販売時に当該児童が実在していることは証拠上明らかでないが、前記立法趣旨に鑑みれば、販売時に当該児童が実在していることまで法が要求しているとは解されない。
 二 本件各ビデオテープの被撮影者の「児童性」
   弁護人は、本件各ビデオテープの各被撮影者の発育程度は推定できるが、成長期に発育が障害される小人症や第二次性徴の発現が遅滞ないし欠如する思春期遅発症の女性が存在することを考慮すると、各被撮影者が一八歳以上である可能性が皆無であるとは言えないから、被撮影者が小人症や思春期遅発症の非児童である可能性について合理的な疑いが残り、本件被撮影者が児童であるとは認定できない旨主張する。
   しかし、本件各ビデオテープの映像から窺われる各被撮影者の容貌、体格、発育状況などに照らすと、本件各ビデオテープの撮影当時において、各被撮影者は一見していずれも児童と認められる(被撮影者が小人症等である非児童であると窺わせるような点は認められない。)のであって、この点について、合理的な疑いを入れる余地はないと言うべきである(なお、本件販売行為当時においても、被撮影者が児童であったことまで要求されるものとは解されない。)。
 三 検察官が児童ポルノ法二条三項二号及び三号に該当すると主張するビデオテープについての児童ポルノ該当性
   弁護人は、検察官が児童ポルノ法二条三項二号及び三号に該当すると主張するビデオテープ(タイトルが「名古屋小学2年3年4年パート8」、「ロリータ名古屋小学2年3年4年パート3」、「ロリータ(美少女痴戯オナニー)」のもの)について、同法二条三項二号及び三号の「性欲を興奮させ又は刺激する」という要件の判断基準は、少数の児童ポルノ愛好家ではなくあくまでも一般人であり、右各ビデオテープは一般人を基準とすると、性欲を興奮させ又は刺激するものとは言えないので、右各号に該当しないと主張する。
   しかし、本件証拠によれば、右ビデオテープは、児童が大腿部を開き、自己の陰部をビデオカメラに向けている姿態や児童が他人の性器に触れている姿態等が撮影されているものであると認められ、一般人を基準としても性欲を興奮させ又は刺激するものといえるから、これらが右各号に該当する児童ポルノであることは明らかである。
 四 被害者の承諾による犯罪成立阻却事由について
   弁護人は、児童ポルノ販売罪の保護法益は被撮影者たる児童の一身専属的な権利であるところ、本件児童ポルノについては、強いて被撮影者の姿態を撮影した物はなかったので、撮影については被撮影者の承諾があり、さらに、本件各ビデオテープはタイトルが付けられ販売、頒布用に作成された物だから、被撮影者は販売についても包括的に承諾を与えているのであるから、本件児童ポルノ販売行為には、いずれも被害者である被撮影者の承諾が存在し、構成要件該当性あるいは違法性が阻却されるので、児童ポルノ販売罪は成立しないと主張する。
   しかしながら、前述のような児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、児童ポルノに描写された児童の権利を擁護し、ひいては、児童一般の権利を擁護するものであることに照らすと、被撮影者の承諾があったとしても構成要件該当性あるいは違法性が阻却されるものとはみられず、同罪の成立に影響しないと解すべきである。