児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪の公訴事実には「姿態をとらせて」を記載しましょう。

 全部、奥村事件なんですが、福岡高裁H21.9.16も他の記載からわかればOKとしています。
 要するに、福岡高裁H21.9.16や金沢支部の事案は、姿態をとらせる行為が別罪(児童買春罪、青少年条例違反)として起訴されているので、それと合わせ読めば(借用してくれば)「姿態をとらせ」たことは、法廷に出ているというわけで、東京高裁H17.12.26(一審地裁浜松支部)の事案は、児童淫行罪が別途家裁に起訴されていて地裁の起訴状・判決には別罪(性犯罪・福祉犯)の事実が記載されていないので、合わせ読むとか、借用してくることができなかったのだと理解しています。

上田 哲 「刑事関係 平成18.2.20,3小決 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為と同法7条3項の児童ポルノ製造罪の成否 」(最高裁判所判例解説--平成18年2,3,10月分 平成19年2,3,10月分) / 法曹時報. 61(8) [2009.8]
(注2) なお,本件においては,起訴状の公訴事実や1審判決の罪となるべき事実に「姿態をとらせ」との記載が存しなかったところ,原判決はこれを論難する所論に対し、確かに。公訴事実には「姿態をとらせ」に当たる事実の記載がなく,それを明確に記載するのが望ましいとはいえるものの・・・起訴状では,第1で被害児童と性交するなどして児童買春をした旨の記載があり。それに引き続き第2 の事実が記載されており,罰条について法7条3項が挙げられていることからすると被告人の言動等によってi 当該児童が性交に伴う「姿態」等をとったとことは上記起訴状記載の公訴事実の記載から理解することができる。したがって「姿態をとらせ」の文言が記載されずそれに該当する事実が明示されていなくても。訴因が特定されていないとはし・えずこれをそのまま認定した原判決に違法な点があるとまではいえない。」と判示していた。
他方,東京高判平17.12.26は,本件と同様に起訴状の公訴事実や1審判決が認定した犯罪事実に「姿態をとらせ」との記載がなかった事案においてそのことを理由に1審判決には訴訟手続の法令違反等があるとする弁護人の所論に対し、訴因が不特定であるとはいえないとする一方。法7条3項は「児童に姿態をとらせ」という行為を犯罪構成要件として規定しており, この行為が他の不可罰的な行為とを画する重要な行為要素であることなどにかんがみれば, これが欠けた罪となるべき事実の記載には理由の不備があるというほかはないとして1審判決を破棄し,改めて罪となるべき事実を次のとおりに認定している。「省略」
上記判決と本件原判決とを比較すると「姿態をとらせ」の記載がないことが訴因の不特定とはいえないとする点では共通するものの。判決の罪となるべき事実の記載として理由不備といわざるを得ないかとうかについては。見解を異にしているようにも見えるが, いずれにせよ、本件原判決も「姿態をとらせ」に当たる事実を明確に記載することが望ましいとしているものであり,実務の運用としては,判決書の罪となるべき事実はもとより起訴状の公訴事実においても。これらを明確に記載するよう心掛けるべきことは当然であるといえよう(阿部健一参照)。