児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪と3項製造罪は観念的競合っぽい判決(東京高裁H21.9)

 併合罪だという判断の場合は、「前提とする観念的競合だという主張が間違っている。所論は前提を欠く」と言われるんですが、「仮に,両訴因に掲げられた罪が科刑上ー罪の関係にあるとの所論を前提としてみても,」と判示しており、そうは言わないわけです。

 同一機会の同一児童に対する児童淫行罪と3項製造罪の事案。
 高裁レベルの判例では観念的競合なので、無理に地裁と家裁に分けて起訴するよりも、観念的競合として家裁に全部起訴すれば丸く収まるから、家裁も訴因変更命令出すべきだったという主張です。
 検察官が事物管轄を間違えて起訴したら、違法だとして、管轄違の判決になることもあるのだから、この点の検察官の主張を検察官の専権だとか言って絶対視するのはおかしいと思います。

東京高裁H21.9
 原裁判所が訴因変更を命じなかった点に関する訴訟手続の法令違反の主張について
論旨は,要するに,本件訴因(児童淫行罪)と,地方裁判所に起訴された別件3項製造罪の訴因は,科刑上一罪の関係にあり,原裁判所は,平成2年法律第71号による改正前の少年法37条2項により,両者を併せて審理すべきであり,別件被告事件の訴因を原審の訴因に含めるための訴因変更を命ずべき義務を負っていたのに,これをせず,その結果,被告人の併合審理の利益等を奪ったものであるから,原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある,というものである。
 そこで検討すると,仮に,両訴因に掲げられた罪が科刑上ー罪の関係にあるとの所論を前提としてみても,検察官が,各事件をそれぞれ別の裁判所に起訴した上,原裁判所に対し,本件訴因に別件被告事件の訴因を追加する訴因変更をする予定はない旨明確に釈明していることに照らすと,原裁判所が検察官に対し,上記の訴因変更を命ずべき義務まで負うものでないことは明らかである。
 したがって,訴因変更を命じなかった原審の訴訟手続に違法はない。

 東京高裁ですが、9部ではありません。