児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ製造:小4長女の裸撮影 容疑のブラジル人逮捕

 こういうのは強制わいせつ罪でいいと思うんですが。
 撮影は認めているのに否認ということは、目的製造罪ですかね。
 こういう事例を集めると、場が沈みます。知らないまま生きたい。

http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20090901ddlk22040209000c.html
児童ポルノ製造:小4長女の裸撮影 容疑のブラジル人逮捕−−磐田署 /静岡
 磐田署は31日、小学4年生の長女(9)の裸を撮影して私有パソコンに保存していたとして、ブラジル国籍で愛知県豊橋市に住む無職の男(45)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑(児童ポルノ製造)で逮捕した。同署は、販売やインターネットへの流出の有無を調べている。同署によると、男は「写真が趣味で撮影した」と容疑を否認しているという。


 強制わいせつ罪を立てたとして、強制わいせつ罪は併合罪ですが、数回の製造罪は包括一罪ですから、
  1/1 撮影=強制わいせつ+製造
  2/1 撮影=強制わいせつ+製造
  4/1 撮影=強制わいせつ+製造
  5/1 撮影=強制わいせつ+製造
の場合、
  1/1 撮影=強制わいせつ+製造
                    |
  2/1 撮影=強制わいせつ+製造
                    |
  4/1 撮影=強制わいせつ+製造
                    |
  5/1 撮影=強制わいせつ+製造
となるので、科刑上一罪になります。
判例です。

 最近の判例を紹介しておきます。

仙台高裁H21.3.3(上告棄却)
主張
①原判決は,被告人が各被害児童の陰部をデジタルカメラ等で撮影した行為をわいせつな行為と評価しているが,刑法176条のわいせつな行為は身体的接触を伴うものに限定されるから,上記各行為に同条後段を適用した原判決には法令適用の誤りがある,

判断
①については,刑法176条のわいせつな行為は,法文上,態様について限定がなく,また,自己の裸体を他人の目に触れさせたくないという気持ちは,人間の本質的部分に由来するものであるから,強制わいせつ罪の保護法益である性的自由には,自己の裸体を他人に見られたり写真等に撮影されたりしない自由を含むものと解される。そうすると,自らの性的欲求を満足させるために,各被害児童の陰部をデジタルカメラ等で撮影した被告人の行為が,同条にいうわいせつな行為に該当することは明らかというべきである。所論は,公然わいせつ罪の主たる保護法益が善良な風俗であるとしても,多少なりとも見せられた者の性的自由が害されているから,強制わいせつ罪と公然わいせつ罪とを区別するためには,強制わいせつ罪については身体的接触を要件とすべきであるなどとも主張するが,所論も認めるとおり,公然わいせつ罪は善良な性的風俗の侵害を本質とするものであり,わいせつ行為を見せられた者の性的自由を侵害する場合があるとしても,それは副次的なものにすぎず,直接的な性的自由の侵害を本質とする強制わいせつ罪とは行為態様において大きな違いがあるといえるのであって,身体的接触を強制わいせつ罪の要件としなければ両者を区別し得ないものではない。所論は独自の見解に基づくものであって採用の限りでなく,この点において原判決に法令適用の誤りはない。
②については,上記のとおり被害児童の陰部を撮影する行為は,刑法176条のわいせつな行為に該当するというべきところ,撮影の際に電磁的記録であるその画像データが携帯電話機やSDカードに同時に記録されるような場合には,このような記録行為も撮影行為と不可分なその一部と評価できるのであるから,原判示第2から第4までの各事実における各記録行為も撮影行為の一部としてわいせつな行為に該当するということができる。したがって,この点においても原判決に法令適用の誤りはない

主張
②原判決は,各被害児童の陰部をカメラ機能付き携帯電話やデジタルカメラで撮影した電磁的記録を携帯電話機やSDカードに記録した行為をも強制わいせつ罪の実行行為としているが,仮に撮影行為がわいせつな行為と評価されるとしても,撮影後に記録媒体に記録する行為は,いかなる意味においても対人的行為ではないし,性的自由を害するものではなく,強制わいせつ罪の実行行為とはいえないから,これらの行為をわいせつな行為として同条後段を適用した原判決には法令適用の誤りがある,

判断
②については,上記のとおり被害児童の陰部を撮影する行為は,刑法176条のわいせつな行為に該当するというべきところ,撮影の際に電磁的記録であるその画像データが携帯電話機やSDカードに同時に記録されるような場合には,このような記録行為も撮影行為と不可分なその一部と評価できるのであるから,原判示第2から第4までの各事実における各記録行為も撮影行為の一部としてわいせつな行為に該当するということができる。したがって,この点においても原判決に法令適用の誤りはない

主張
③原判決は,強制わいせつ罪と児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項の児童ポルノ製造罪の両者の成立を認めているが,上記児童ポルノ製造罪は,同条2項所定の目的がない場合に成立するものであるから,同項の児重ポルノ製造罪とは法条競合の関係に立ち,上記の目的がある場合には同条3項の児童ポルノ製造罪は成立しないところ,このことは同罪と強制わいせつ罪との関係においても同様であるから,原判決には法令適用の誤りがある,

判断
③については,強制わいせつ罪は,被害者の性的自由を保護するものであるのに対し,児童ポルノ法7条3項の児童ポルノ製造罪は,児童ポルノの製造が児童に対する性的搾取や性的虐待の手段等となって,児童の心身に有害な影響を及ぼすことにかんがみ,そのような行為を規制することによって児童の保護を図るものであり,両者は規制の趣旨,目的を異にするものであって,法条競合の関係に立つものではないから,強制わいせつ罪とともに上記児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決に法令適用の誤りはない。
付言するに,各被害児童の陰部を撮影する行為は,強制わいせつ罪のわいせつな行為に当たるとともに,児童ポルノ製造罪の実行行為にほかならないから,両罪を観念的競合として処理した原判決に法令適用の誤りはなく,また,原審の訴訟手続に所論のいうような法令違反はない。