児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

高木浩光@自宅の日記「Winnyによる児童ポルノ流通の実態と児童ポルノ法改正の方向性」

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20090712.html#p01

 もっともな問題提起だと思います。
 規制推進側の団体・国会議員もよく知らないのだと思います。
 だいたい、児童ポルノのファイル共有が何罪かについては、H16改正でも、局付検事が「公然陳列罪か、4項提供罪か、その混合的包括一罪になる」って、はっきりしてませんから。立法者(森山・野田)はもともと刑法知らないし。
 奥村は4項提供罪のみでいいはずだと考えていますが、裁判所は公然陳列罪のみ説。

島戸検事「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57巻08号p99
その際、不特定多数の者が、当該画像データを閲覧するために、当該ハードディスクにアクセスして、その児童ポルノの画像データを自己のコンピュータにダウンロードした場合に、当該不特定多数の者の行為を介して、同人らのコンピュータに児童ポルノを内容とする画像データを提供したこととして、児童ポルノを内容とする電磁的記録の提供罪が成立するか否かについては、様々な考え方があり得るところであるが、混合包括一罪として児童ポルノの公然陳列罪一罪の法定刑の範囲内で処理されることになると考えられる。

 島戸検事は「研修」では、4項提供罪説でしたがぶれてる感じ。

島戸 研修676号p90
④ 「提供」
「提供」とは,当該児童ポルノ又は電磁的記録その他の記録を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいう(刑法第163条の4,薬物四法による資金等提供,売春防止法第8条,第11条,第13条における「提供」と同義である。)。
具体的には,児童のポルノを内容とする電磁的記録を電子メールで相手方に送信し,プロバイダ内の相手方の受信箱に入れる行為,ホームページにアップロードする行為(もっともこの場合,公然陳列罪と一罪の関係に立つことが考えられる。)等がこれに当たる。

 h16改正前にもwinmxの判決もあるから、ファイル交換とか共有という現象はあったのに、明確にそれに対応する改正をしていないので何罪なのかがわからないのです。
 島戸検事を信じて、「提供罪」だと主張するとどうなるかというと、某地裁にはこういう判決があって、屁理屈だと言われます。

某地裁
1 弁護人は,被告人がパーソナルコンビュータのハードディスク内に記録された児童ポルノに該当する画像情報をファイル共有ソフト「」の共有機能に組み込み,インターネットに接続した状態で同機能を作動させた行為は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。) 7条 4項の公然陳列罪にあたらず,同項の提供罪に該当すると主張するので,以下,検討する。
2 刑法 175条にいうわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいう(最高裁平成 11年(あ)第 1221号同 13年 7月 16日第三小法廷決定・刑集 55巻5号317頁参照)が,児童ポルノ法 7条4項にいう児童ポルノを「公然と陳列した」もこれと同義に解するのが相当である。
 被告人がパーソナルコンピュータのハードディスク内に記録された児童ポルノに該当する画像情報をファイル共有ソフト「」の共有機能に組み込み,インターネットに接続した状態で同機能を作動させた行為は,児童ポルノを不特定又は多数の者が認識できる状態に置いたということができるから,児童ポルノ法7条4項にいう児童ポルノを「公然と陳列した」ということができる。
3 弁護人は,児童ポルノ法 7条4項の「陳列」は相手方から再拡散することはないことを予定しているが,本件では閲覧者からさらに拡散するおそれがあるから同項の「陳列」には当たらないと主張する。しかし,相手方から再拡散される場合には「陳列」に当たらないと解する根拠は見当たらないから,弁護人の主張は採用することができない。
 その他弁護人が縷々主張する点も,独自の見解であって採用することができない。

 こういう擬律問題を解決しないことは、包丁が錆びている・研がれていないようなもので、取り締まりが鈍ることになります。
 この法律はそういう問題点がたくさんあって、下級審が右往左往しているので、いちいち、最高裁が判断しています。