児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<児童ポルノ禁止法>改正案26日審議入り 衆院法務委

 変な法律で、文句を付けたらきりがなく、森山・野田説は最高裁から「反対説」と呼ばれている状況で、所持罪だけにピントを絞るのは納得できないのですが、究極の選択でどちらかと問われれば民主党案か。
 処罰範囲に大差ないし、民主党案でも(取得罪が効果無しとなれば)将来的には単純所持罪に発展する可能性はあるので、大差ないですよね。
 実際には、(買い受け捜査で提供犯を検挙して)提供犯人の顧客リストに基づいて、所持犯・取得犯を検挙していくのが典型パターンになると思われます。購入者の調書を流用できて、(購入者はたくさんいるので)件数が何倍にもなって、一粒で数度おいしいみたいな。

 水面下で妥協して、追記↓のような前例を踏んで委員長提案で即日可決みたいなことになるかも知れません。表現の自由も一応絡むので議論を省いたらダメですよ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090619-00000055-mai-soci
自民、公明両党と民主党がそれぞれ国会に提出している児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の 審議入りが19日午前の与野党協議で決まった。
18歳未満の性的な画像を所持することへの処罰強化が焦点だが、規制範囲が広い与党案と、 限定的な民主党案との隔たりは大きい。26日に衆院法務委員会で趣旨説明を行い、実質審議に入る。

 記者にも説明したのですが、処罰範囲の差としては、施行前の取得したものが処罰できるかどうかです。民主党案では取りこぼしがでる。
 与党は、「そこの被害児童を見殺しにするのか?」と反論するでしょうが、これまでの運用上、提供事件の被害児童の存在は重視していませんので、被害者がいる罪なのかいない罪なのかわからないような法律だけ作って予算もつけずに救済せずに見殺しにしてきた訳で、取得罪による「取りこぼし」についてだけ、そこまで強く批判できるのかと思います。
 むしろ、「いい加減な議員立法をして調査研究保護救済もせずにいいかげんに小手先の改正して10年も維持して済みませんでした。今度こそ、ちゃんと児童を保護・救済する法律を作ります」と全員で起立して(良心の緊張状態で)反省してから、警察か厚生労働に所管を決めて、作り直すべきだと思います。


追記
H16改正の国会審議なんてこれだけでした。
6/1に明らかにされて、6/11にそのまま法律になりました。

H16.3.12 与党案 衆議院提出
H16.6.1 衆議院 青少年問題に関する特別委員会・・・委員長案提案→可決

159 - 衆 - 青少年問題に関する特別… - 5号 平成16年06月01日
○武山委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件について調査を進めます。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、意見の一致を見ましたので、委員長において起草案を作成し、委員各位のお手元に配付をいたしております。
 本起草案の趣旨及びその内容につきまして、委員長から説明申し上げます。
・・・
○武山委員長 お諮りいたします。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付しておりますとおりの起草案を委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○武山委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 なお、ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○武山委員長 次に、児童買春、児童ポルノに関する件について決議をいたしたいと存じます。
 本件に関しましては、各党間において協議が調い、案文がまとまりました。
 便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえたいと存じます。
    児童買春、児童ポルノに関する件(案)
  本委員会は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案を提出することに決した。本案は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律について、その施行状況、児童の権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、児童買春及び児童ポルノに係る犯罪の法定刑を引き上げるとともに、電気通信回線を通じて児童のポルノを記録した電磁的記録等を提供する行為等を犯罪化する等の改正を行うものである。
  児童買春、児童ポルノに係る行為が被害児童の人権を著しく侵害し、かつ、児童を性の対象とする風潮を助長するため、これが児童の健全育成の大きな障害となっていることは改めて述べるまでもない。それにもかかわらず、近時においても、児童買春に係る事件が大幅に増加したほか、児童ポルノに係る事件も跡を絶たないところであって、本委員会もこれを深く憂慮するものである。
  このようななか、国連において「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」が、また欧州評議会において「サイバー犯罪に関する条約」がそれぞれ採択されるなど、国際的にも児童買春、児童ポルノに係る行為に対して厳しい態度で臨むことが求められており、本案はこれに応えるものでもある。
  その一方、児童ポルノの所持一般を違法化すべきか否かについて、本委員会では必ずしも意見の一致をみなかった。しかし、違法化の是非はともかくとして、少なくとも児童ポルノの所持が一般に、児童の権利侵害と関連する行為であることは何人も否定できない事実であり、本委員会としても児童ポルノが根絶されることを願うものであって、このような所持を減少させるための取り組みも必要である。そのためには、成人の意識を高めるとともに児童に対する教育を充実させ、問題を根本的に解決することが求められているところであって、政府は、児童の権利に関する国民の理解を深めるための社会啓発、教育について万全の措置を講じ、児童ポルノの根絶に努めるべきである。
  右決議する。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
 採決いたします。
 児童買春、児童ポルノに関する件を本委員会の決議とすることに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

H16.6.3 衆議院本会議・・・衆院可決
H16.6.10 参議院法務委員会・・・可決

159 - 参 - 法務委員会 - 23号  平成16年06月10日
衆議院議員武山百合子君) ただいま議題となりました児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は、国内における援助交際や東南アジアにおける買春ツアー等が社会問題となっていた中、児童買春、児童ポルノに係る行為を処罰し、児童を保護するため、平成十一年に議員立法により制定されたもので、同法附則においては、施行後三年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものと規定されております。
 同法の施行状況を見ますと、児童買春に係る事件が大幅に増加しているほか、児童ポルノに係る事件も後を絶ちません。
 また、同法の施行後、国連において児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書が、欧州評議会においてサイバー犯罪に関する条約がそれぞれ採択されるなど、児童の権利の擁護に関する国際的取組がより一層進展しております。
 本案は、このような状況を勘案し、これらの行為について、厳格な処罰を行うことができるように法定刑を引き上げる等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、第一は、児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえた立法であることを明示するとともに、児童の権利の擁護を目的とすることをより直接的に表現することとしております。
 第二は、児童買春及び児童ポルノに係る犯罪の法定刑を見直し、懲役刑及び罰金刑の上限を引き上げるとともに、新たに一定の類型について懲役刑と罰金刑を併せて科すことを可能にすることとしております。
 第三は、条約上の義務に対応し、電気通信回線を通じて児童のポルノを記録した電磁的記録等を提供する行為及び特定かつ少数の者に対して児童ポルノを提供する行為並びにこれらを目的として児童ポルノを製造、所持等し又は児童のポルノを記録した電磁的記録を保管する行為、児童に姿態を取らせて児童ポルノを製造する行為等を新たに処罰することとしております。
 第四は、この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行することとしております。
 第五は、この法律の施行後三年を目途として、改正後の法律の施行状況、児童の権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすることとしております。
 以上がこの法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
・・・・・
(中略)
○委員長(山本保君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

H16.6.11 参議院本会議・・・成立