児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ、画像分析班を設置=根絶へ「重点プログラム」策定−警察庁

 奥村弁護士は画像上の被害児童を甲・乙と命名して、1人1罪で児童ポルノ罪を立てろと主張したことがあって、大阪高裁はそこまでせんでいいという判決を出しています。
 制服とか体操服から被害者を割り出すというのは前からやってますけど、全国版ということでしょうね。ラブホテルの壁紙とか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090618-00000043-jij-soci
インターネット上にあふれる児童ポルノの根絶に向け、警察庁は18日、取り締まりと流通防止、被害児童支援の3つを柱とした「重点プログラム」を策定した。また、ポルノ画像から被害者や容疑者の特定につながる情報を探し出す画像分析班を同日、庁内に設置した。
 児童ポルノ事件は2008年に676件を検挙、被害児童は338人で、いずれも過去最多。同庁によると、被害者の約1割が小学生以下で、最近は低年齢化が進み、ファイル共有ソフトの利用拡大などの傾向もみられる。

676件で被害児童338というのはおかしいですよね。
のこり338件にも必ず1人以上の被害児童がいるのに、カウントさえしてない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090618-00000036-mai-soci
被害児童支援策では、児童側から被害申告をしにくい実情を踏まえ、被害児童が特定できた場合の聴取方法や立ち直り支援について、臨床心理学の専門家らの協力を得て今後検討していくとした。

 10年前にできた法律に「児童を救済せよ」と書いてあるのに、今頃始めるのだから、「遅くなって済みません」と前置きして欲しいものです。

第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。


 民主党案で厚生労働・児童相談所が保護すると言い出したら、警察庁がやりますと言い出したようです。10年間やらなかったのに。10年間調査研究すらしなかったので、児童ポルノの害悪は具体的に何なのかが、いまだにわかりません。

http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen42/tsuutatsu.pdf
3 被害児童支援の推進
児童ポルノ事犯は、被害児童からの申告がなされにくく、被害が潜在化するおそれがあることから、被害を受けた児童の早期の特定が急務であり、また、当該被害児童に応じたきめ細やかな支援を行う必要がある。このような観点を踏まえつつ、
以下の対策を推進することとする。
(1) 警察庁が行う施策
① 被害児童の発見・保護活動の強化に向けた画像分析
児童ポルノ画像から被害児童を特定し、的確な発見・保護活動を行うため、警察庁における児童ポルノ画像の分析態勢の構築及び分析手法の検討を行う。
② 被害児童の心情に配意した聴取手法の検討
被害児童に対する事情聴取に当たっては、被害児童の心情や特性を理解し、二次的被害の防止に配慮しつつ、証拠能力及び証明力を確保する必要があることから、被害児童の心情に配意した具体的な聴取手法について検討を行う。
③ 被害児童支援の在り方に関する検討
被害児童の精神的ショックは大きく、継続的なカウンセリングのほか、事案発生時の的確な対処方策及び被害からの立ち直り支援について、被害児童の特性に配意した取組みの充実が求められることから、児童ポルノ事犯等の特性を踏まえた被害児童支援の在り方について検討を行う。
都道府県警察における被害児童支援態勢の強化
少年補導職員や少年相談専門職員等の被害児童の立ち直り支援に携わる職員の能力向上や被害児童からの相談受理態勢及び被害児童へのカウンセリング態勢の整備に関する検討を行うなど、都道府県警察による被害児童に応じたきめ細やかな支援態勢の強化を推進する。
(2) 都道府県警察が行う施策
① 被害児童の発見・保護活動
更なる被害の防止や立ち直り支援に資するため、捜査において得られた情報を活用するとともに、少年相談の利用を促進するなどして、被害児童の発見・保護活動に努める。
② 捜査過程における被害児童の二次的被害の防止・軽減
被害児童が警察の事情聴取により受ける精神的な負担を緩和するため、女性警察官による事情聴取を行うことができるよう、福祉犯捜査能力や少年の特性等の専門的知識を有する女性警察官の育成及び活用を進めるなど、被害児童が捜査過程で受ける精神的な負担の緩和に努める。
③ 被害児童に対する継続的支援の実施
被害児童の精神的打撃の軽減を図るため、少年補導職員、少年相談専門職員等により、個々の被害児童の特質に応じた計画的なカウンセリングの実施や、家庭、学校等と連携した環境調整等による継続的な支援を行う。支援に当たっては、関係部門間の連携を図り、継続的な支援が必要な被害児童に関する情報が少年警察部門に集約されるような仕組みを整備する。
④ カウンセリング態勢の充実
被害児童の精神的打撃の軽減を図るための継続的な支援は、担当の職員のみでは対応が困難な場合も多いことから、あらかじめ臨床心理学、精神医学等の専門家を委嘱しておくなど、必要に応じて部外の専門家の助言を受けることができる態勢を整備する。
また、被害児童の症状に応じて、部外の専門家のカウンセリングが直接受けられるよう少年警察部門と被害者支援担当部門の間で緊密な連携を図る。
⑤ 遠隔地に居住する被害児童の支援
遠隔地に居住する被害児童について、地域等と一体となった継続的支援が必要と認められる場合その他の場合で、他の都道府県警察における継続的支援が適当と認めるときは、被害児童の住居地を管轄する警察に継続的支援を引き継ぐなど必要な措置をとる。


 被害者数が増えたのは、ほとんど3項製造罪です。
 援交シリーズの製造事件で被害者を特定して人数をカウントしても、同じ画像が他府県で提供事件として登場したときは、氏名がわからないので、被害者数をカウントしていません。

http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen42/jousei.pdf
○ 送致件数、送致人員、被害児童数のいずれもが過去最多
○ 検挙例
ファイル共有ソフト利用事犯
・DVDの大量販売事犯
・携帯電話カメラによる単純製造事犯
○ 被害児童の特定されない児童ポルノ画像が多数存在

追記
 児童をある程度(番号とかで)特定する必要があると言えば、裁判所は特定する必要がないといって、実務もそうなっています。

阪高裁平成14年9月12日
判決
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)違反被告事件について,平成14年4月24日京都地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官坂田米雄出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
本件控訴の趣意は弁護人奥村徹作成の控訴趣意書(平成14年7月1日付け),控訴理由補充書及び控訴趣意補充書3通に,これに対する答弁は検察官作成の答弁書に各記載のとおりであるから,これらを引用する(なお,弁護人は,控訴趣意書中に理由不備とあるのは,理由そごの趣旨である旨釈明した。)。
第1控訴趣意中,訴因逸脱認定の主張について
論旨は,訴因として全くあるいは具体的に主張されていない児童の実在性を認定した原判決には,審判の請求を受けない事件について判決をした違法がある,というのである。しかしながら,原判決は,その「犯罪事実」の項で,訴因と同じ事実を認定しており,何ら訴因を逸脱した事実を認定していない。論旨は理由がない。
第2控訴趣意中,理由そごの主張について
論旨は,(1原判決は,児童ポルノ販売罪(以下「本罪」という。)の保護法益が個人的法益であるとの立場に立っているから,①人相等の特徴で個々の被撮影者を特定しなければならない,②被撮影者が販売時に実在していなければならない,③本罪は被撮影者ごとに成立する,④被撮影者の承諾があれば,本罪は成立しない,⑤被撮影者の数,その承諾,被害の程度等が量刑の重要な要素になるとの結論にならなければならないのに,これらをいずれも否定したり,また,個々の被撮影者を特定する必要はないとしながら,その一方で,犯情の軽重を判断する際には被撮影者数を考慮したりしている,さらに,(2)原判示別紙一覧表番号4の事実について,児童ポルノに当たると問われているのは全被撮影者の写真であると考えられるところ,原判決は,訴因として個々の被撮影者を特定する必要はないとしながら,その一方で,Kや制服を着用している者の写真は児童ポルノに当たらない旨判示している,したがって,これらの点で原判決には理由にそごがある,というのである。
しかしながら,(1)の点については,原判決は上記⑤の結論を否定していない上,児童ポルノが本件のように複数の写真が掲載された写真集である場合には,そのうちの1枚の写真が児童ポルノ法2条3項3号の要件を満たしてさえいれば,その余の写真がその要件を満たしているか否かを問わず,その写真集は児童ポルノに当たると解すべきである(なお,所論は,写真集も児童ポルノに当たると解すれば,表現の自由を不当に侵害するし,複数の写真が一冊にまとめられることによって児童の保護も後退すると主張する。しかしながら,1冊にまとめられた複数の写真は,販売等の際には同じ運命をたどるから,これを一体のものとしてみることはその実態に適っている上,所論がいうように個々の被撮影者を特定しなければならないとすれば,そのために多大な時間と労力を要し,ひいては写真集を児童ポルノ法による規制から逃れさせることになり,かえって,児童の保護に適わず,不合理である。)から,本罪の保護法益が個人的法益であるからといって,上記①ないし④の各結論が当然に帰結されるものではないし,また,写真集が児童ポルノに当たり得るからといって,犯情の軽重を判断したり,刑を量定したりする際に,その要件を満たす写真や被撮影者の数を考慮することができないと考える根拠もない。したがって,原判決には所論のような理由のそごはない。なお,上記②の結論については,被撮影者が写真撮影時に実在していれば足りると解されるし,上記④の結論についても,原判決が説示するとおりである。また,(2)の点については,その前提が失当であることは既に説示したとおりである。この論旨も理由がない。
平成14年9月12日
大阪高等裁判所第4刑事部
裁判長裁判官白井万久
裁判官大西良孝
裁判官磯貝祐一