児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

13未満にわいせつ行為をするのは、強制わいせつ罪ではないのか?

 青少年条例違反の公訴事実なんですけど、そのままでも強制わいせつ罪(176条後段)ですよね。

公訴事実
被告人は
平成21年4月6日午後4時10分ころ,A県B市内ホテル1234号室において,C(当時10年)が18歳未満の者であることを知りながら,単に自己の性的欲望を満たす目的で,同女の乳房をもむなどした

 こんなの、強制わいせつ罪で裁けばいいものを、青少年条例違反で起訴されています。条例は法律に反することができないから、こういう行為を強制わいせつ罪で処罰するという刑法にも反してはならないと思うのですが、どうなんでしょうか?

 そういう棲み分けというか守備範囲論に注目すると、強制わいせつ罪(176条前段)では意思に反してわいせつ行為を行う程度の暴行脅迫が要件となっていることと比べると、条例の場合は「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う「わいせつ行為」のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような「わいせつ行為」」だとして被害者の自由意思がある程度残っている場合というのだから、強制わいせつ罪(意思に反してわいせつ行為を行う程度の暴行脅迫が必要とされる)との重複を避けるために、条例の「わいせつ行為」が限定されているように読めますよね。

 最高裁大法廷昭和60年10月23日
事件名 福岡県青少年保護育成条例違反被告事件
本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。
けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。このような解釈は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うものであり、「淫行」の意義を右のように解釈するときは、同規定につき処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから、本件各規定が憲法三一条の規定に違反するものとはいえず、憲法一一条、一三条、一九条、二一条違反をいう所論も前提を欠くに帰し、すべて採用することができない。