児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

13歳未満の児童に対する強制わいせつ罪と3項製造罪とが観念的競合で起訴されたときの論点(併合罪説)

 こんな事件多いですね。
 量刑重いので、大前提として、誤りのない法令適用で服役してもらう必要があります。
 一審でこんなこと言ったら絶対だめですよ。
 裁判例をつなぎ合わせると、結構説得力ありますよね。勇み足っぽいですが東京高裁H19.11.6もありますし。
 一審が併合罪だったら、観念的競合を主張するわけですが、それもまた、裁判例をつなぎ合わせると、結構説得力あります。
 「どっちやねん」という感じですが、そういう判例状況なんです。

第1 3項製造罪(姿態とらせて製造)の解説
1 (3項)製造罪の保護法益=社会的法益が主で、個人的法益は従(反射的利益)である。
(1)3項製造罪の保護法益を社会的法益としたもの
①大阪地裁h17.7.15
(2)5項製造罪(販売目的製造罪)は被害児童数にかかわらず包括一罪
奈良地裁H18.1.13
札幌地裁H15.8.27
横浜地裁H13.3.7
前橋地裁H13.12.27
さいたま地裁熊谷支部H18.2.9
横浜地裁H18.12.8
横浜地裁H19.3.1
横浜地裁H19.1.10
和歌山地裁H14.8.27
神戸地裁尼崎支部H17.7.4
千葉地裁H14.12.10
大阪地裁H14.4.25
金沢地裁H16.4.9
長野地裁H17.8.31
岡山地裁H16.12.14
(3)数回の児童ポルノ罪を包括一罪とする裁判例
福岡高裁那覇支部H17.3.1
②販売罪 大阪地裁H13.2.21
③販売罪 鳥取地裁H13.8.28
④公然陳列罪 東京高裁H16.6.23
2 「姿態をとらせ」る行為は実行行為ではないこと
最高裁h18.2.20
②実行行為性に疑問を呈した東京高裁H19.11.6
判例タイムズ1206号p93のコメント*
山口裕之「最高裁刑事破棄判決等の実情(上)−平成18年度−」判例時報第1980号
⑤ 大阪地裁H20.12.24
第2 撮影行為は強制わいせつ罪の実行行為ではない
1 わいせつ行為=身体的接触を伴う行為である
2 公然わいせつ罪との区別
3 盗撮行為(迷惑条例違反)との区別
第3 媒体への記録行為は強制わいせつ罪の実行行為ではない
第4 撮影行為が強制わいせつ罪と評価される場合は、3項製造罪(姿態とらせて製造)は成立しない
1 3項製造罪の趣旨
①島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
衆議院法制局第二部第一課 井川良「児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」法令解説資料総覧(第一法規、2004)
③森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P99
3 新旧製造罪の比較
第5 訴因不特定
1 3項製造罪(姿態とらせて製造)と強制わいせつ罪の関係=併合罪
(1) 刑法54条1項の「一個の行為」の意味について
(2)3項製造罪(姿態とらせて製造)と強制わいせつ罪の構成要件の重なり合い
名古屋高裁金沢支部H17.6.9
最高裁h18.2.20
東京高裁H19.11.6
(3)保護法益を考えると、社会見解上一個の行為とはならない。
(4)判例併合罪
阪高裁H14.9.10
東京高裁H15.6.4
東京高裁H19.11.6
名古屋高裁金沢支部H17.6.9
名古屋高裁金沢支部H14.3.28
東京高裁h20.9.18
2 併合罪関係にある数個の事実を一個の公訴事実として記載すると、訴因不特定
(1)検察講義案・判決起案の手引が推奨する記載方法
(2)判例
①東京高裁h12.6.27
②東京高裁H6.8.2
③高松高裁S27.10.9
④東京高裁S27.10.16
⑤東京高裁S27.6.9*
(3)学説
(4)本件公訴事実
(5)公訴事実記載例
さいたま地裁h19.2.5
和歌山地裁h17.1.25
神戸地裁尼崎H17.7.4
奈良地裁H18.1.13
第6 児童ポルノに該当しない画像〜「性欲を興奮させ又は刺激するもの」にあたらない。
1 性欲刺激要件
2 一般人基準では児童ポルノに該当しない。
3 一般人基準の不都合
4 判例(大阪高裁H14.9.10、大阪地裁h14.4.26)
5 医学書の写真

第7 製造罪は包括一罪
1 (3項)製造罪の保護法益=社会的法益が主で、個人的法益は従(反射的利益)であるから、被害者数にかかわらず包括一罪となる。
(1)3項製造罪の保護法益を社会的法益としたもの
①大阪地裁h17.7.15
(2)5項製造罪(販売目的製造罪)は被害児童数にかかわらず包括一罪
奈良地裁H18.1.13
札幌地裁H15.8.27
横浜地裁H13.3.7
前橋地裁H13.12.27
さいたま地裁熊谷支部H18.2.9
横浜地裁H18.12.8
横浜地裁H19.3.1
横浜地裁H19.1.10
和歌山地裁H14.8.27
神戸地裁尼崎支部H17.7.4
千葉地裁H14.12.10
大阪地裁H14.4.25
金沢地裁H16.4.9
長野地裁H17.8.31
岡山地裁H16.12.14
阪高裁H18.9.12
(3)数回の児童ポルノ罪を包括一罪とする裁判例
福岡高裁那覇支部H17.3.1
②販売罪 大阪地裁H13.2.21
③販売罪 鳥取地裁H13.8.28
④公然陳列罪 東京高裁H16.6.23
2 かすがい現象

 
こういうときは、両罪立てるとしても、観念的競合になっても併合罪になっても訴因不特定と言われないように、強制わいせつ行為と3項製造行為とを第1、第2と書き分けて起訴する必要があります。