児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春罪と3号ポルノの3項製造罪は併合罪(東京高裁H20.9.18)

 ダビングも3項製造罪に入るし、3号ポルノは性行為しなくても製造できるし、ということで重ならないそうです。(10刑)
 強制わいせつ罪との観念的競合の事案は最近よくみますが、どうなんでしょう?
 判例は罪名別に考えるようですが、児童淫行罪の関係では性交・性交類似行為と1号ポルノ製造は一個の行為だというのが判例です。(9刑)

2 原判示第1の児童買春罪との罪数関係について
弁護人は,同一児童に対する,児童買春罪の実行行為と3項製造罪の実行行為とは,刑法54条1項前段の「1個の行為」と評価すべきであるとし,その根拠として,構成要件的重なり合いがなくても1個の社会的事象であれば,観念的競合となり得るところ,?性行為を含む性犯罪や福祉犯罪とその際になされる3項製造罪は,社会的見解上1個の行為である,?3項製造罪は,法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせて撮影等するものであり,性交・性交類似行為・性器接触行為がなければならないから,性交・性交類似行為と撮影行為は構成要件的に重なり合う関係にある,と主張する。
刑法54条1項前段にいう「1個の行為」とは,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上1個のものと評価を受ける場合をいうものであるところ,児童買春行為は,児童に対し性交等(性交,性交類似行為,性器接触行為)をすることを本態とするのに対して,3項製造罪に係る児童ポルノ製造行為は,児童にとらせた姿態を描写して児童ポルノを製造することを本態とするものであり,また,上記性交等に至らない「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」を描写した場合をも処罰範囲に含んでおり,さらには,上記性交等に係る姿態に関しても,前記(弁護人の主張に対する判断)1で見たとおり,そのような姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為も,3項製造罪に当たると解する以上,上記性交等のなされた時間場所とは異なる時間場所においてなされる,別の記録媒体に記憶させる場合も処罰範囲に含まれることになるから,上記の自然的観察のもとにおいては,児童買春行為と3項製造罪に係る児童ポルノ製造行為とは,社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを1個の行為とみることはできない。したがって,児童買春罪と3項製造罪とは,刑法54条1項前段の観念的競合の関係ではなく,併合罪の関係にあるものと解するのが相当である。
弁護人の上記主張は採用できない。

 結局、弁護人が観念的競合だといえば、併合罪で、併合罪だといえば観念的競合になります。
 東京高裁でいえば、9刑は観念的競合で、1刑と10刑は併合罪です。あてもんみたいです。