児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

東京高裁h20.8.13が追認した原判決の罪数処理

  5項製造罪(不特定多数)と4項提供罪(不特定多数)は牽連犯
  製造目的の児童買春2回は包括一罪
だそうです。
10部は科刑上一罪の範囲を限定する方向だったのに、広がりましたね。
 弁護人は、「判例を変えろ」と言ってたんですが、判決文は行間に「やっぱり判例に従う」と書いてあるように、判例の引用がたくさんあります。

さいたま地裁川越支部H20.3.11
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,(変更後の訴因 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,わいせつ図画販売目的所持),組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
(犯罪事実)
 被告人は,
第1(児童買春)
 1 7月27日,A子当時17歳と児童買春した。
 2 9月4日,A子当時17歳と児童買春した。
第2(児童ポルノ製造)
   不特定若しくは多数の者に提供する目的で,
 1 9月1日,被告人方において,前記A子(撮影当時17歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,同児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録である児童ポルノのDVD−R1枚 を製造した
 2 同月18日,前記被告人方において,前記同様の電磁的記録であるDVD−R4枚を製造した
 3 同年12月12日,前記被告人方において,前記同様の電磁的記録であるDVD−R8枚を製造した
第3(児童ポルノ提供・同提供目的所持,わいせつ図画販売・同図画販売目的所持)
 1 別紙一覧表1記載のとおり,前後16回にわたり,4か所に宅配するなどの方法で,4名に対し,児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した児童ポルノであり,かつ前同様のわいせつ図画であるDVD−R合計21枚及び男女の性交場面等を露骨に撮影録画したわいせつ図画であるDVD−R合計67枚を代金合計11万2300円で売却し,もって不特定又は多数の者に販売して提供した
 2 5月31日,前記被告人方において,児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した児童ポルノであり,かつ前同様のわいせつ図画である DVD−R合計20枚並びに男女の性交場面等を露骨に撮影録画したわいせつ図画であるDVD−R合計136枚を不特定若しくは多数の者に提供又は販売する目的で所持した
第4(犯罪収益の取得についての事実の仮装)
(法令の適用)
◇罰条
・判示第1の所為    包括して,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
・判示第2の所為    包括して,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項前段
・判示第3の所為のうち,
 児童ポルノ提供,児童ポルノ提供目的所持の点
            包括して,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項後段,5項前段
 わいせつ図画販売,わいせつ図画販売目的所持の点
            包括して,刑法175条
◇科刑上一罪の処理   
刑法54条1項前段・後段,10条(判示第3の児童ポルノ提供とわいせつ図画販売,児童ポルノ提供目的所持とわいせつ図画販売目的所持は,それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,判示第2の児童ポルノ製造と判示第3の児童ポルノ提供・わいせつ図画販売,児童ポルノ提供目的所持・わいせつ図画販売目的所持との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として刑及び犯情の最も重い児童ポルノ提供目的所持の罪の刑で処断)

(弁護人の主張に対する判断)
2 本件の罪数について
  この点,弁護人は,本件各罪は,結局全部が科刑上一罪となる(仮に,本件について犯罪収益仮装罪が成立するとしても,同罪を含め本件各罪の全部が科刑上一罪となる。)旨主張しているので,以下検討する。
 判示第1(児童買春)の罪数についてみると,本件児童買春(2件)は,被告人が,被害児童との性交等の状況を撮影した画像を収録したDVD−Rを不特定多数人に販売する目的で,1か月余りの間に同一の被害児童に対し繰り返し敢行した犯行であり,同一の犯意に基づいて比較的短期間に反復された犯行であるから,犯意の継続性や犯行態様の同一性等に照らし,包括一罪になると解するのが相当である。
  判示第2(児童ポルノ製造)の罪数についてみると,本件児童ポルノ製造(3件)は,被告人が,不特定多数人に販売する目的で,同一の被害児童との性交等の画像を収録したDVD−Rを繰り返し製造したというものであり,相当期間にわたり反復累行された犯行の一環であることにも照らせば,包括一罪になると解するのが相当である。
  判示第3(児童ポルノ提供・同提供目的所持,わいせつ図画販売・同図画販売目的所持。以下「児童ポルノ提供等」ということがある。)の罪数についてみると,本件児童ポルノ提供・同提供目的所持は,反復累行された営業的な犯行の一環であるから,犯意の継続性や犯行態様の同一性等に照らし,包括一罪であると解される。また,本件わいせつ図画販売・同販売目的所持も,同様に包括一罪であると解される。
  そして,本件児童ポルノ提供・同提供目的所持と本件わいせつ図画販売・同販売目的所持の中には観念的競合の関係に立つものも含まれているので,結局,判示第3(本件児童ポルノ提供等)は全体が科刑上一罪になると解するのが相当である。
  判示第4(犯罪収益仮装)は,児童ポルノの販売を営業的に行っていた被告人が,他人名義の預金口座に代金を振り込ませるという犯罪収益の仮装行為を反復累行していたものであり,犯意の継続性や犯行態様の同一性等に照らし,包括一罪になると解するのが相当である。
  判示第1(児童買春)と判示第2(児童ポルノ製造)との罪数関係についても,同様に,両者は,罪質上通例手段結果の関係にあるとまではいえないので,両者は併合罪になると解するのが相当である。
  判示第1(児童買春)と判示第3(児童ポルノ提供等)の罪との罪数関係についてみると,被告人は,被害児童との性交等の状況を撮影した画像を収録したDVD−Rを不特定多数人に販売する目的で,上記の各犯行に及んでいるが,両者は,罪質上通例手段結果の関係にあるとまではいえないので,両者は併合罪になると解するのが相当である。
  判示第2(児童ポルノ製造)と判示第3(児童ポルノ提供等)との関係についてみると,両者は,罪質上通例手段結果の関係に立つので,両者は牽連犯になると解するのが相当であり,結局,これらの罪は科刑上一罪となる。

 じゃあ、当分これで実務やってください。