児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノの購入者や管理者が捜索差押を受けることはあるか?

 いまでも、単純所持罪がなくても、可能です。
 捜索差押の要件は「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」だけで「捜索先自身の容疑(所持罪とか)」は必要ありませんから、現行法でも、児童ポルノ提供罪の譲受人や児童ポルノ公然陳列罪のサーバー管理者は「他人に対する容疑」で、捜索されることはありえます。被疑者扱いしているわけではありません。
 
 児童買春の在宅・身柄の被疑者も「差し押えるべき物:児童ポルノ・わいせつ物等」で家宅捜索受けて、児童ポルノがあれば押収されることがあります。
 捜査機関が「差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを認めるべき資料」(規則156条3項)を提供して必要性を疎明すれば、令状が出ます。
 
 実際のところは、提供目的所持の現行犯で被疑者を逮捕して、押収した帳簿類から販売先を特定して、出来れば公務員なんかを選んで、「協力しないと令状取って捜索押収しますよ」と協力を強く促して、「任意」提出させています。参考人としての取調もありますし、さらに提供などしていると、被疑者取調に切り替えられるので、その点も追及されます。
 要するに提供犯人の販売リストを根拠にして捜索されることがあります。

刑事訴訟法
第218条〔令状による差押え・捜索・検証〕
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押、捜索又は検証をすることができる。この場合において身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
第219条〔差押え等の令状の方式〕
前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押えるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
2第六十四条第二項〔氏名不明のとき特定するに足る事項の記載〕の規定は、前条の令状についてこれを準用する。

刑事訴訟規則
第156条(資料の提供・法第二百十八条等)
前条第一項の請求をするには、被疑者又は被告人が罪を犯したと思料されるべき資料を提供しなければならない。
2 郵便物、信書便物又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するもの(被疑者若しくは被告人から発し、又は被疑者若しくは被告人に対して発したものを除く。)の差押えのための令状を請求するには、その物が被疑事件又は被告事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料を提供しなければならない。
3 被疑者又は被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所についての捜索のための令状を請求するには、差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを認めるべき資料を提供しなければならない。

 単純所持罪が創設されると、購入者=所持罪の被疑者にもなるわけだから、被疑者として捜索差押を受けることになって、「差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを認めるべき資料」(規則156条3項)は不要になるので、捜索差押の要件が緩くなります。
 このとき、単純所持罪として立件して有罪にするために、児童ポルノが不可欠かというと、法律上は必ずしも必要ありません。死体なき殺人事件と同じで、立証の問題です。所持罪を構成する児童ポルノそのもの以外の方法で立証すれば足ります。児童ポルノが現存する場合よりも立証は困難なことは確かです。
 怖い話ですが、これが刑事訴訟法です。
 これに対抗するには、単純所持罪の施行後は、所持しないことです。
 さらに、児童ポルノなき児童ポルノ単純所持事件の立証に対抗するには、施行前に所持をやめたこと=廃棄したこと(譲渡はできませんから)を証拠化しておくことでしょうね。
 それをどうするかは、そのときが来たら警察か弁護士に相談してほしいと思いますが、警察だと入手先などについて取調があります。

 単純所持罪の結末はこうなるでしょうね。
 現に、児童ポルノなき3項製造罪の被疑者がいるそうですし、児童ポルノには触れないことです。