児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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鹿児島の「踏み字」元警部補、反省しながら無罪主張

 事実を認めるけど犯罪不成立というのはよくやるんですけど、被告人に言わせると、「不合理な弁解」と量刑評価されそうなので、被告人には言わせません。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071122it02.htm
被告は罪状認否で、「踏み字行為を1回させたことは事実で、反省している」と事実関係を認めながら、「特別公務員暴行陵虐罪の陵虐や加虐的行為には当たらない」と無罪を主張。弁護側は「違法性が認められるにしても公務員職権乱用罪に当たり、すでに公訴時効(3年)が完成している」と述べた。
起訴状などによると、被告は03年4月16日、県議選旧曽於(そお)郡区で有権者にビールや焼酎を配った疑いがあるとして、ホテル経営さん(62)を志布志署で事情聴取。さんが供述を拒んだため、A4判3枚の紙に「お前をこんな人間に育てた覚えはない(父親の名)」「早く正直なじいちゃんになって(孫の名)」「娘をこんな男にやったつもりはない」と親族からの説得に見立てた文章を書き、さんの両足首をつかんで1回踏ませるなどして精神的苦痛を与えた。

 重い刑ですね。

第195条(特別公務員暴行陵虐)
1 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。
2 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。

 コンメンタールではこう書いてあるので、外形的な行為があって被害者が苦痛を受けたと言えば終わりみたいですね。

判例コンメンタール刑法第2巻P366
行為
「陵辱」とは、精神的に苦痛を与える行為を、「加虐」とは暴行以外の方法で肉体的に苦痛を与える行為を言うと解される。
ただし、実際の犯行は、一つの行為が暴行かつ陵辱のいずれにも該当することがあるので、これら3つを厳密に区別する必安性は乏しいように思われる。
他方、ここでいう苦痛は現実のものであることを要するか、あるいは被害者の承諾がある場合に成立するかという問題がある・・・

 結構量刑も厳しいようで、被告人がリスク覚悟でいろいろ主張するのも理解できます。

名古屋地方裁判所平成16年3月31日
 被告人を懲役2年に処する。
 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
(犯罪事実)
 被告人は,愛知県西加茂郡a町b丁目c番地所在の甲刑務所に刑務官として勤務し,平成13年4月からは,副看守長として,被収容者の処遇,戒護及び規律維持等の職務を担当していたが第1 同刑務所において同様の職務を担当していた副看守長であるAが,平成13年12月14日午後2時20分ころ,同刑務所保護房第2室において,同所に収容されていた懲役受刑者のB(当時43歳)に対し,その必要がないのに,同人の肛門部を目掛け,消防用ホースを用いて多量に放水する暴行を加え,肛門部裂創,直腸裂開の傷害を負わせ,よって,同月15日午前3時1分ころ,同刑務所病室棟集中治療室において,同人を直腸裂開に基づく細菌性ショックにより死亡させる犯行を行ったのに先立ち,前記保護房内及び前記Bの身体等に付着した汚物を除去する目的で同保護房内に立ち入った際,前記Aが前記Bの身体に対して前記のとおり放水する可能性があることを認識しながら,同人をうつ伏せにした上,同人のズボン等を引き下ろすなどし,もって,前記Aの犯行を容易にしてこれを幇助した。
第2 同刑務所において被告人と同様の職務を担当していた看守長であるC,副看守長であるDらと共謀の上,同刑務所に収容されていた懲役受刑者のEが,かねてから反抗的態度を示しているとして,平成14年9月25日午前8時15分ころから午前9時45分ころまでの間,同刑務所保護房第2室において,その必要がないのに,前記E(当時30歳)に対し,その腹部に革手錠(平成15年押第66号の1)のベルトを巻き付けて強く締め付け,腹部を強く圧迫するなどの暴行を加え,よって,同人に加療約70日間を要する外傷性腸間膜損傷等の傷害を負わせた。

東京高等裁判所判決平成15年1月29日
高等裁判所刑事裁判速報集平成15年44頁
判例時報1835号157頁
法学セミナー49巻7号121頁
  本件控訴を棄却する。
  当審における未決勾留日数中一〇〇日を原判決の刑に算入する。
 第一 理由不備、事実誤認及び法令適用の誤りの主張について
 一 論旨等
 論旨は、要するに、原判決は、神奈川県警察官であった被告人が、同県泉警察署警務課管理係員として、法令により拘禁された者(以下「被拘禁者」又は「被留置者」という。)を看守する職務に従事していた際、平成一三年一二月二九日から平成一四年一月一九日までの間に、同署留置場(以下「本件留置場」という。)内において、殺人等の罪により起訴されて勾留中であったB子を七回にわたって姦淫し、もって、それぞれ同女に陵虐の行為をしたと認定し、特別公務員暴行陵虐罪(刑法一九五条二項)の成立を認めているが、それぞれ前記のような立場にあった被告人とB子は、お互いに好意ないし恋愛感情を抱き、積極的に意欲して性交を重ねていたものであって、このような被告人の行為は警察官として許されないものではあるけれども、同罪の成否という観点からすると、被告人がB子に対し、同罪にいう「陵辱若しくは加虐の行為」(以下、便宜的に「陵虐行為」ともいう。)をした事実はないから、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、また、原判決挙示の証拠によっては認定できない陵虐行為を認定したという点では理由不備にも該当し、さらに、被告人の行為に刑法一九五条二項を適用して特別公務員暴行陵虐罪の成立を認めた点で、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りもある、というのである。
 そこで、原審記録を調査して検討すると、前記のとおり、被告人がB子に対し、特別公務員暴行陵虐罪にいう陵虐行為をしたと認定し、同罪の成立を認めた原判決の認定、判断に所論のような誤りがあるとは認められない。以下、所論にかんがみ、補足して説明する。