児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

多数回の性犯罪・福祉犯をかすがいする児童ポルノ製造罪

 併合罪説の東京高裁H19.11.6について説明しておきますね。

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20071115/1195096622
東京高裁H19.11.6
本件の2項製造罪においては,児童の姿態等の撮影とこれに伴う第1次媒体への記録により第1次媒体(児童ポルノ)を製造したものとされているにとどまるが,2項製造罪においては,第1次媒体の製造に引き続き,電磁的記録の編集・複写,ネガフィルムの現像・焼き付け等の工程を経て,第2次媒体や第3次媒体の児童ポルノを製造する行為も実行行為に包含されるのであり,事案によっては,相当広範囲にわたる行為に(包括)一罪性を認めざるを得ないであろうが,児童買春罪との観念的競合関係を肯定するとすれば,いわゆるかすがい作用により,科刑上一罪とされる範囲が不当に広がる恐れも否定できないように思われる(強姦罪等との観念的競合を肯定するとすれば,その不都合はより大きいものとなろう。)。

設例
1/1 被害児童A 強制わいせつ+3項製造罪(デジカメのメディア)
2/1 被害児童B 強制わいせつ+3項製造罪(デジカメのメディア)
3/1 被害児童ABの画像をHDDに複製

の場合、観念的競合説だと、
被害児童Aの関係では
  1/1の強制わいせつ+3項製造罪は観念的競合。
  1/1の製造と3/1の製造は包括一罪
で、
被害児童Bの関係では
  2/1の強制わいせつ+3項製造罪は観念的競合。
  2/1の製造と3/1の製造は包括一罪
で、
  3/1のAに対する製造とBに対する製造罪は観念的競合
だから、
結局、3/1の製造罪がかすがいになって、Aに対する強制わいせつ+製造とBに対する強制わいせつ+製造とが科刑上一罪になりますね。
 個人的法益に対する強烈な侵害である強制わいせつを1/1と2/1に犯して、それが科刑上一罪というのは絶対おかしいですね。
 AB並べて交互にわいせつ行為しても併合罪なんですよ。
 なのに、後日のダビング行為がかすがいになるんですよ。

 この理屈だと、(致傷がない)強制わいせつが併合罪加重されると、処断刑は15年ですが、

第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 100回強制わいせつして、強制わいせつのついでに写真撮っておいて、時々、被害者全部まとめてHDDに複製すれば、科刑上一罪だから、処断刑期は10年になります。1000回でも同じ。
 まるで、こういう行為を推奨しているかのような罪数処理なんですよ、観念的競合説は。
 観念的競合説は、検察官殿の御主張なので、抗議は検察官へどうぞ。
 奥村個人は併合罪説です。ここ当分。