児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ製造罪と強制わいせつ罪の関係

 強制わいせつ+製造罪の場合には、法条競合で強制わいせつ罪のみ説。

阪高裁 平成14年9月10日
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成14年4月26日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官出席の上審理し,次のとおり判決する。
第2訴訟手続の法令違反の主張について(控訴理由第4,第7,第11)
論旨は,②被告人は,被害児童の撮影を自己の性欲を満たすために行ったものであり,しかも,被害児童は6歳であるから,暴行脅迫がなくとも,これを裸にして撮影した被告人の行為は強制わいせつの実行行為にあたるところ,強制わいせつ罪は親告罪であり,公訴を提起するには,被害児童ないしその保護者の告訴が必要であるが,本件においては被害児童の保護者は犯人を告訴しない旨供述しているのであるから,強制わいせつ罪より法定刑の軽い児童ポルノ製造罪で起訴して処罰することは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨に反し許されないのに,被害児童の保護者の告訴のないまま起訴した点において(控訴理由第7),・・・原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,というものである。
しかしながら,②についは,児童ポルノ製造罪の保護法益は上記第1記載のとおりであり, この処罰の目的は,個人の性的自由を保護法益とする強制わいせつ罪のそれとは異なることは明らかであり,児童ポルノ製造罪が強制わいせつ罪の構成要件の一部とはいえず,また,児童ポルノ製造罪が親告罪とされなかったのは,親告罪とすると,加害者やその背後の組織からの報復を恐れて告訴できなかったり,あるいは保護者に対する金銭的な示談で告訴を取り下げさせたりすることが通常の性犯罪以上に予想され,所期の目的が達成ができないためであり,従って,本件において,被害児童の保護者に被告人を告訴する意思がないのに本件公訴を提起したことは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨を潜脱することにはならない。