児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春周旋罪の成立には、被周旋者(遊客)が児童であることを知っている必要はない。

 1人の家裁裁判官が数件連発していたようです。

【参照条文】児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律5
【参考文献】家庭裁判月報57巻4号100頁
      判例時報1883号153頁
 (弁護人の主張に対する判断)
 弁護人は、被周旋者であるDには被害児童が一八歳未満の者である旨の認識がないので、本件につき児童買春周旋罪は成立しない旨主張する。
 たしかに、児童買春周旋罪は、児童買春をしようとする者と児童との間にたって、児童買春が行われるように仲介することによって成立するものであるが、被周旋者において児童買春の認識(相手方が一八歳未満の児童であることの認識)を有していることまでは要しないものと解するのが相当である。すなわち、児童買春等処罰法は、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童の権利を擁護することを目的として制定された法律であるところ、児童買春を周旋する行為は、被周旋者において児童買春を行う認識があるか否かを問わず、周旋行為自体により、児童に対する性的搾取及び性的虐待のおそれを生ぜしめるものであり、そのために、児童買春罪から独立し、同罪よりも重く処罰しているものと解されるところであり、児童買春罪に該当する行為を助長拡大する行為のみを処罰の対象としているものとは解しがたい。また、児童買春周旋罪が成立するためには、被周旋者において相手方が一八歳未満の児童であることの認識を要するものと解すると、周旋者が児童の年齢を偽ることにより安易に同罪の適用を免れることになるが、かかる結果が法の趣旨と合致するものとは考えがたい。
 以上のとおりであるから、被告人両名につき、児童買春周旋罪が成立するものと解される。

 積極説の実刑判決もありましたが控訴していません。消極説の東京高裁h15.5.19他があるんだから、控訴すべきですよね。

【事件番号】東京高等裁判所判決/平成15年(う)第103号
【判決日付】平成15年5月19日
【参考文献】高等裁判所刑事裁判速報集平成15年72頁
      家庭裁判月報56巻2号171頁
      東京高等裁判所判決時報刑事54巻1〜12号32頁
      判例時報1883号153頁
第3 職権による判断
  職権により調査すると,原判決は,罪となるべき事実において,本件公訴事実2及び同3と同旨の事実を認定し,児童淫行罪及び売春周旋罪のほかに児童買春等処罰法5条の罪(以下,便宜的に「児童買春周旋罪」という。)の成立を認め,これらを科刑上の一罪として取り扱い,児童淫行罪の懲役刑及び児童買春周旋罪(同法5条2項)の罰金刑で処断することとして,被告人を懲役1年2月及び罰金50万円に処したことが明らかである。
 ところで,児童買春周旋罪が成立するためには,周旋行為がなされた時点で,被周旋者において被害児童が18歳未満の者であることを認識している必要があると解するのが相当である。すなわち,児童買春周旋罪は,児童買春をしようとする者とその相手方となる児童の双方からの依頼又は承諾に基づき,両者の間に立って児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成立するものであり,このような行為は児童買春を助長し,拡大するものであることに照らし,懲役刑と罰金刑を併科して厳しく処罰することとしたものである。このような児童買春の周旋の意義や児童買春周旋罪の趣旨に照らすと,同罪は被周旋者において児童買春をするとの認識を有していること,すなわち,当該児童が18歳未満の者であるとの認識をも有していることを前提にしていると解されるのである。実質的に考えても,被周旋者に児童買春をするとの認識がある場合と,被周旋者が前記のような児童の年齢についての認識を欠く結果,児童買春をするとの認識を有していない場合とでは,児童買春の規制という観点からは悪質性に差異があると考えられる。もっとも,このように解することについては,客観的には児童の権利が著しく侵害されているのに,周旋者が児童の年齢を18歳以上であると偽ることにより児童買春周旋罪の適用を免れることになって妥当ではないとの批判も考えられるが,このような場合でも周旋者を児童淫行罪や売春周旋罪により処罰をすることが可能であるし(なお,児童の年齢や外見によっては,そもそも18歳以上であると偽ることが困難な場合も考えられる。),前記のような児童買春の周旋の意義や児童買春の規制という観点からすると,被周旋者において,前記のような児童の年齢についての認識を有しているか否かは,やはり無視することができない事情である。
  以上を前提として,本件について検討すると,関係証拠によれば,被告人らは被害児童を原判示の遊客3名に引き合わせるに当たり,同児童の年齢を告げておらず,また,当時17歳の同児童がその外見から18歳未満であることが明らかな状況にあったともいえないことが認められるのであり,参考人として取調べを受けた前記遊客らの司法警察員に対する各供述調書謄本(甲21,23,26,33,34)の内容にも照らすと,前記遊客らが被害児童が18歳未満の者であるとの認識を有していたとは認められず(なお,当審における事実取調べの結果によれば,前記遊客らについては,児童買春をしたことの容疑による立件がなされていないことが認められる。),この点について,原判決が前記と異なる事実認定をしているとは認められない。したがって,本件では,被周旋者である前記遊客らが前記のような児童の年齢に関する認識を欠いているので,被告人らについて児童買春周旋罪は成立しないというべきである。
  そうすると,原判決は,児童買春等処罰法5条の解釈適用を誤って児童買春周旋罪(同法5条2項)の成立を認め,被告人に対して罰金刑を併科したものであり,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,この点でも原判決は破棄を免れない。