児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

控訴審判決の宣告手続に,判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない地方裁判所判事補が関与した違法があるとして,原判決が破棄され,原裁判所に差し戻された事例(最高裁h19.7.10 原審札幌高裁h19.2.27)

 気がつかないで言い渡してしまったのがあったんですね。
 でも、弁護人・被告人は上告してないようですね。
 原審は札幌高裁h19.2.27平成18(う)353ですが、奥村は、札幌高裁平成18(う)339の弁護人だったので、公判で「裁判官そろってますか?」と聞いてしまいました。イヤミな奴です。

平成19年07月10日
原判決を破棄する。
本件を札幌高等裁判所に差し戻す。
理由
札幌高等検察庁検事長中尾巧の上告受理申立て理由は,要するに,原判決の宣告手続には,法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があり,これは,判決に影響を及ぼすべき法令の違反で,原判決を破棄しなければ著しく正義に反する,というのである。
そこで検討すると,記録によれば,原審第2回公判期日において原判決を宣告した原審裁判所の構成には,判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から札幌高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない札幌地方裁判所判事補が加わっていたことが認められる。したがって,原判決の宣告手続には,裁判所法18条等の法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があることが明らかであり,これは判決に影響を及ぼすべき法令の違反であって,かつ,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから,刑訴法411条1号,413条本文により,原判決を破棄し,本件を原裁判所に差し戻すのが相当である。

 報道によれば、判決は2件あるようです。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/37195.html?_nva=23
二件の裁判のうち一件は、帯広市の男(60)がいとこの胸をナイフで刺した殺人未遂などの罪に問われ、一審判決は懲役五年。もう一件は札幌の男(48)が盗んだクレジットカードでバッグをだまし取ったなどとした詐欺などの罪で、一審判決は懲役四年六カ月とした。二被告とも控訴したが、札幌高裁は棄却。しかし、検察側が「控訴審判決の宣告手続きに違法がある」として上告していた。

最高裁発令受けず判事代行 札幌地裁判事補 高裁側「うっかりしていた」
2007.03.06  朝日新聞社
同高裁は2月19日付で、誤って判事補の職務代行を発令。判事補は5日までに、(1)控訴審の第1回公判4件(2)判決言い渡し2件(3)保釈の許可か却下を決める抗告事件3件(4)勾留(こうりゅう)更新決定12件、の計21件にかかわった。
 (1)については無効と判断して審理をやり直すという。

手続きミス、審理やり直し 最高裁発令得ず職務代行 札幌高裁=北海道
2007.03.06 読売新聞社
判事補は今月2日までに、4件の第1回公判、2件の判決、3件の抗告、12件の拘置更新に、高裁合議体の一員として関与した。この判事補は任官5年以上で、最高裁が発令していれば問題なかった。最高裁は今月5日、判事補に改めて職務代行を発令した。
 こうしたミスは法律に想定がなく、同刑事部は4件の第1回公判をすべてやり直すことにした。うち2件の被告は拘置中で、ミスにより拘置期間が長引く可能性があるという。宣告後の判決などに、裁判所は関与できないため、必要ならば上告などの手続きを取るよう検察と弁護人に伝えた。拘置更新は、別の裁判官を加えて手続きをやり直し、影響はなかったという。

札幌高裁:無資格の判事補が代行、初公判4件やり直し
2007.03.06 毎日新聞社
 2日までにこの判事補がかかわったのは控訴審初公判4件、判決宣告2件など21件の審理や決定。関係する弁護人や札幌高検には事情を説明した。判決宣告2件の効力について法令上の規定がなく、検察、弁護側が無効と考える場合は各自上告するしかないという。

未決勾留の法定通算で実質刑期は短縮されます。

第495条〔未決勾留日数の法定通算〕
上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
②上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
一 検察官が上訴を申し立てたとき。
二 検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。
③前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
④上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。