児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性犯罪社者の再犯率「罪と罰」第44巻1号 日本刑事政策研究会

 処遇論としては施設内処遇をしっかりやる。
 原因論としては、家庭内の児童虐待防止。

国民は,性犯罪者,とりわけ小児性愛者(pedophiles)の再犯率はかなり高いものであると信じる傾向にある。しかし,諸外国の統計を見る限り,必ずしも小児性愛者に限定したものではないが,一般的に言って,性犯罪が特別に他の犯罪類型に比べて再犯率が高いとはいえないようである。もちろん,刑事施設で性犯罪者プログラムによる処遇を受けた者とそうでない者とを比べた場合,圧倒的に,性犯罪者プログラムを受講した者の再犯率が低いことは,各国における性犯罪研究の示すところである。
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我々が地域社会に提供することができる最笹の刑事政策は,カナダはもちろん,我が国においても,何よりもまず,「性犯罪の防止」であることはいうまでもない。ジョン・ハワード協会(JohnHowardSociety)は,性犯罪を防止するための最も効果的な方法は,家庭(homes)や家族(families)における性的虐待や性的暴力の周期を断ち切ることであると述べている。カナダでは,連邦刑務所に収容されている男性受刑者の50%は,児童虐待の被害者か,家庭内暴力の被害者であるといわれている.カナダの児童福祉ワ-カ-は,早期の介入や初期の段階での迅速な問題点の改善がなされておれば,成人になって,性犯罪者にはなっていなかったであろうと思われる多くの性犯罪者に遭遇すると述べている。そうしたことから考えれば,結論は,我々が性的逸脱を示す児童や青少年に集中して働きかけることが早ければ早いほど,成人の性犯罪者を生み出すことを防止することになるようである。性犯罪者の再犯防止を考える以前に,我々は, ドメスティック・バイオレンスや性的児童虐待を耗滅することに,最優先順位を与えなければならないのではあるまいか。(中央大学法学部教授)