児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノは併合罪、わいせつ物は包括一罪で、かすがい現象(大阪高裁H18.10.20)

  10/1 わいせつ図画兼児童ポルノ販売
  10/20 わいせつ図画兼児童ポルノ販売
という場合の罪数処理。
 東京高裁と同じ処理で、これで決まりです。
 極悪児童ポルノ犯の場合は、わいせつ図画を起訴しないで併合罪加重するということで調節するようです。わいせつ図画が起訴されなかった場合は警戒してください。

阪高裁H18.10.20
第3 「控訴理由第3」の法令適用の誤り・訴訟手続の法令違反の主張について
所論は,要するに,原判決は,原判示1から3までについて,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春等処罰法」という。)7条4項,5項に係る3個の罪(以下これらを「本件児童ポルノに係る罪」という。)を併合罪としながら,それぞれと観念的競合の関係にある刑法175条前段及び後段に係る3個の罪(以下これらを「本件わいせつ図画に係る罪」という。)を包括一罪とし,いわゆるかすがい関係として,原判示1から3までの全体を包括一罪としているが,本件わいせつ図画に係る罪を包括一罪とするのは誤りであり,また,仮に本件わいせつ図画に係る罪が包括一罪であるとしても,かすがい関係を認めて本件児童ポルノに係る罪を含めて包括一罪とするのは誤りであるから,原判決の法令の適用には誤りがあり,また,併合罪の関係にある所為について訴因変更を許した原審手続には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
しかし,数個のわいせつ図画の販売及び販売目的所持は,同一の犯意に基づいて行われる限り,包括一罪となり,また,数個の児童ポルノの提供及び提供目的所持等の罪は,それぞれの罪と観念的競合の関係にある数個のわいせつ図画に係る罪が包括一一罪である場合には,いわゆるかすがい関係により,それらを含めて全体が包括一罪になると解される。所論は,自説と同旨の罪数処理をした裁判例が多数存在する旨主張しているが,数個のわいせつ図画に係る罪が包括一罪と評価できるかどうかはもとより事案によるのであり,判決文を見ても同一の犯意に基づくものかどうかなどは不明であるから,これを併合罪とした裁判例があるとしても,原判決の罪数処理と相容れないものかどうかは判断できない。また,確かに,所論指摘の裁判例の中には,数個のわいせつ図画に係る罪を包括一罪としながら数個の児童ポルノに係る罪との間にかすがい関係を認めなかったと解される裁判例もあるが,判決文を見ても,あえてそのような見解を採るべき根拠は何ら示されておらず,当裁判所において是認するところではない。原判決のこの点に関する罪数処理には何ら問題はなく,訴因変更を許可した点にも訴訟手続の法令違反はない。

棄却したわりには、原判決はあちこち訂正されています。