児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪と児童ポルノ製造罪とに公訴事実の同一性はないとされた事例(大阪高裁H18.9.21)

 一事不再理効の範囲、二重起訴の有無、管轄違の有無という点で、公訴事実の同一性が問題になったんですが、撮影行為(製造罪)が起訴されていないことを理由として、いずれの問題についても、公訴事実の同一性がないとされています。
 なお、撮影行為(製造罪)が起訴されている場合について、東京高裁H17.12.26は観念的競合とします。

阪高裁H18.9.21
そこで,記録を調査して検討するに,本件児童ポルノ製造罪の訴因(訴因変更後のもの)は,平成年月日ころから同年月日ころまでの間,18歳に満たない児童合計××名を相手方とする性交等に係る姿態等を撮影した画像データを,DVD等に記録させて児童ポルノを製造したというものであり,他方,別件淫行罪の訴因をも平成年月中旬ころから同年月日までの間,18歳に満たない児童合計○○名を相手方として口淫,性交等をさせ,もって児童に淫行をさせる行為をしたというものであるところ,
確かに,両罪のうち,△△名については被害児童が共通しており,かつ,関係証拠によれば,これらの児童については,別件淫行罪におけるその画像データを基に本件児童ポルノ製造罪における児童ポルノを製造したという事実関係も認められる。
しかし,被害児童を共通にする両罪の上記訴因を比較しても,両訴因が自然的観察の下に社会的見解上1個の行為と見ることはできないし,その罪質上の通例として,手段結果の関係にあると見ることもできないから,両罪は科刑上一罪の関係にあるとは認められず,また,もとより両訴因の公訴事実が同一であるとも認められない。論旨は,いずれもその前提を欠くというべきである。

 一事不再理効は、そもそも訴因(A事実)に記載されていない事実(B事実)にも、実体判決の効力が及ぶかという問題であるから、一事不再理効が及ぶかどうかが問題となるB事実が、訴因(A事実)に記載されていないことは当然の前提ですよね。撮影行為が訴因に記載されてないから一事不再理効も及ばないというのは、無茶だと思います。
 大阪高裁は、だいたい東京高裁H17.12.26がおかしいと思ってるんでしょうね。奥村もそう思います。