児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

6〜8歳の女児3人を「・・・あげる」などとアパートの階段に誘い出した場合と児童買春罪

 児童買春罪の被害者年齢の下限というのを考えています。
 児童買春罪の「対償供与の約束」というのは、真意を問わずに形式的判断(金沢支部H14.3.28 大阪高裁H15.9.18)なんですが、
 いくら何でも、↓の事例のように、6才、8才と「対償供与の約束して」「基づく性交等」を児童買春罪というのは、常識はずれだと思うのですよ。やっぱり、強制わいせつ罪とか強姦罪一本ですよね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051229-00000190-mailo-l35
女児わいせつ:被告に実刑判決−−地裁宇部支部 /山口
6〜8歳の女児3人を「写真を撮ってあげる」などとアパートの階段に誘い出し、わいせつな行為をした。
12月29日朝刊
毎日新聞) - 12月29日17時26分更新

 この調子で、

  • 5才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 6才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 7才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 8才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 9才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 10才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 11才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 12才とは「対償供与の約束」が可能か?
  • 13才とは「対償供与の約束」が可能か?

と考えていくと、
①手堅い考え方としては、刑法176、177の性的承諾年齢に従って13才未満か以上かで線引きする。
②場当たり的ですが具体的判断能力が備わっていれば年齢に関係なく「対償供与の約束」かできる。
ということになります。

 上記裁判例によれば、ここで内心の意思とか意思能力を問題にしてはいけませんから、やっぱり①によりますよね。

 とすれば、13才未満の場合は児童買春罪は成立しないことになりますね。
 条文と裁判例を組み合わせた結果ですが、なんか文句ありますか?

名古屋高等裁判所金沢支部平成14年3月28日
第1 控訴趣意中,事実の誤認の論旨(控訴理由第19)について
 所論は,原判決は,原判示第2,第3の1及び第4の各児童買春行為について,対償の供与の約束をしたことを認定したが,証拠によれば,被告人にはこのような高額な対償を支払う意思はなく,詐言であったことが明らかであるとし,このような場合には児童買春処罰法2粂2項にいう代償の供与の約束をしたことには当たらないから,同法4条の児童買春罪(以下,単に「児童買春罪」という。)は成立しないという。
 しかしながら,児童買春は,児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであることから規制の対象とされたものであるところ,対償の供与の約束が客観的に認められ,これにより性交等がされた場合にあっては,たとえ被告人ないしはその共犯者において現実にこれを供与する具体的な意思がなかったとしても,児童の心身に与える有害性や社会の風潮に及ぼす影響という点に変わりはない。しかも,規定の文言も「その供与の約束」とされていて被告人らの具体的意思如何によってその成否が左右されるものとして定められたものとは認め難い。対償の供与の約束が客観的に認められれば,「その供与の約束」という要件を満たすものというべきである。関係証拠によれば,原判示第2,第3の1及び第4のいずれにおいてもそのような「対償の供与の約束」があったと認められる。所論は採用できない(なお,所論は,形式的な「対償の供与の約束」でよいというのであれば,準強姦罪で問うべき事案が児童買春罪で処理されるおそれがあるとも主張するが,準強姦罪は「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて姦淫した」ことが要件とされているのに対し,児童買春罪では対償を供与することによって性交等する関係にあることが必要であって,両者は明らかにその構成要件を異にするから,所論を採用することはできない。)。

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/WebView2/27642C03FB01140B49256E6700180854/?OpenDocument
阪高裁 H15. 9.18
しかしながら,①については,被告人は,捜査段階において,携帯電話機を買ってやる約束をしたが,被告人名義で契約するわけにもいかないし,時間もないので,携帯電話機の代わりに現金を交付するつもりであったとの供述をしており,その内心の意思いかんにかかわらず,被告人がAに対して携帯電話機を買い与える約束をして性交に応じさせたことは関係各証拠に照らして明らかであるから,対償の供与の約束があったというべきであり,また,仮に携帯電話機の本体価格が無料であったとしても,取得するには契約手数料等が必要である上,携帯電話機にはその通信回線利用の権利が伴っているから,経済的価値が認められることもいうまでもないところであって,原判決が対償の供与の約束があったと認定したことに誤りはない。