児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

確定訴訟記録の閲覧不許可処分に対する準抗告申立事件の理屈

 刑事確定訴訟記録法における事件特定が、裁判所・事件番号・判決日で十分でないのなら、検察官が書面で引用している未公開判決なんて、確認のしようがないじゃないですか?
 特定できない事件の判決なんて引用されて、検事の主張も理由がない?
 篠崎検事も松井検事も大変勉強熱心な検事さんなんだけど、保管検察官にはこれじゃ、判決出せないって言われています。被告人氏名も引用しろとのことです。それはそれでえらいことですよね。

1 大阪高
 児童ポルノダウンロード販売に関する大阪高裁判決H15.9.18の検察官答弁書において、検察官(篠崎検事)は未公開判決を裁判所・判決日で特定して引用している。
 k支部の保管検察官によれば、これでは特定不充分だということになる。
 篠崎検事は、勉強熱心な検事であって、裁判例を調査した上で答弁書に引用されているのだが、これでも特定不能とは篠崎検事に失礼である。

上記の者に対する頭書被告事件につき,弁護人の控訴趣意に対し,下記のとおり答弁する。
平成15年5月1日大阪高等検察庁検察官検事篠崎和人
大阪高等裁判所第1刑事部殿
「・・・・」旨判示している(横浜地裁川崎支部平成12年7月6日判決【確定】。同旨判決として同年11月24日判決【確定】。なお,上記判決の裁判官とは異なる裁判官の判決である)。
 さらに,別の裁判所は,インターネットを利用して,わいせつ画像を不特定多数の者に有料で閲覧させた事案についてではあるが,「ここにおいて陳列されたわいせつ図画は,サーバーコンピューターではなく,情報としての画像データであると解するべきである。有体物としてのコンピューターは,何らわいせつ性のない物であり,これをわいせつ物であるということはあまりに不自然かつ技巧的である。<略>。科学技術が飛躍的に進歩し,刑法制定当時には予想すらできなかった情報通信機器が次々と開発されている今日において,わいせつ図画を含むわいせつ物を有体物に限定する根拠はないばかりでなく,情報としてのデータをもわいせつ物の概念に含ませることは,刑法の解釈としても許されるものと解すべきである。」旨判示している(岡山地裁平成9年12月15日判決・判例タイムズ972号280頁)。

2 新潟地裁長岡支部
 新潟地裁長岡支部(H14わ159・176)における松井正広検事の論告には、裁判所と判決日で特定した判決(事件名・被告人不明)が紹介されている。
 k支部の保管検察官によれば、これでは特定不充分だということになる。
 松井検事は、勉強熱心な検事であって、裁判例を調査した上で論告に引用されているのだが、これでも特定不能とは松井検事に失礼である。

また,被告人は, これらの物を販売する目的で製造しているもので, これは被告人も認めるところであり,販売の目的があったことも明らかである。
ところで,弁護人は,被告人が光磁気ディスクをバックアップ用として所持していたものであり, これ自体販売する目的がなかった旨主張するが,今日,パーソナルコンピューターの普及に伴って,光磁気ディスク又はハードディスクなどの磁気ディスクを利用し,原本の同一性を維持したまま複写が可能になっており,直接販売の対象ではなく,単に原本又はデータが破壊した場合のバックアップ用として利用する意思しか有しないとしても,ハードディスクと一体となったパーソナルコンピューター又は光磁気ディスクから複写物が生み出され,社会一般に流布される危険性は極めて高く, これを販売目的から除外する理由はない(同旨, 富山地裁平2 . 4 . 1 3 , 東京地裁平4 . 5 . 1 2 )。
以上より,弁護人の主張は全く理由がなく,排斥されるべきである。