児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑の変更クイズ

 実務家にはどの事件の話かばれてしまうと思います。
 児童ポルノの販売は禁じられていますが、実務家からいわせてもらえば、法令適用がわからないから、特に、新旧児童ポルノ法にまたがるような児童ポルノ販売はしないでください。
 今年の改正で、刑の変更がありました。(旧法の販売罪は新法の提供罪に包摂されるという。那覇地裁H16.10.15)
 それについては刑法6条。

刑法第6条(刑の変更)
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
大判昭6・11・26刑集10-634
包括一罪には、その完成前に刑の変更があっても、これを分割することなく、その全体に対して新法を適用する。

 で、児童ポルノ販売行為に適用しようとすると、

①説 併合罪として、改正前の行為には旧法(懲役3年)、改正後の行為には新法(懲役5年)を適用する。
②説 包括一罪として、改正前の行為にも改正後の行為には新法を適用する。

のいずれかになりますが、そもそも改正前から、児童ポルノ販売罪の罪数については、高裁レベルで判断が分かれています。
http://dolus.blog01.linkclub.jp/index.php?itemid=18050
 高裁がいま、一罪説を書いても判例違反、併合罪説を書いても判例違反です。
 高裁レベルでも、罪数もわからないのにに、地裁レベルでよく有罪判決が書けると思います。

改正前
児童ポルノ頒布等)
第七条  児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
3  第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

改正後(H16.7.8施行)
児童ポルノ提供等)
第七条  
1 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
4  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。

 例えば児童ポルノ販売者が
  H16.7.1販売
  H16.8.1販売
という行為をすると、とりあえず新旧の児童ポルノ法を適用すると、
  H16.7.1販売 旧法販売罪(懲役3年)
  H16.8.1販売 新法提供罪(懲役5年)
になります。
 
①説によれば、両罪は併合罪、刑法6条が適用されて、処断刑の上限が7.5年。
②説によれば、両罪は一罪、刑法6条が適用されず、処断刑は5年。

 結局、刑法6条の話というより、児童ポルノ販売罪の罪数問題で解決できそうです。