児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ販売+販売+所持を一罪とした事例(訴因変更許可) 熊本地裁H16.3.24

 奥村弁護士の事件では、併合罪説の高裁判決が相次いでいるにもかかわらず、熊本地裁は相変わらず包括一罪説。裁判官も検察官も「ポルノは一罪」と思い込んでいる。
 こんな訴因変更許可は無効ですから、所持罪は審判対象にならない。控訴していれば3の所持罪については「公訴棄却」のはずですね。被告人に有利な判決が出たはずです。信じられないかもしれないけど、罪数で救える事件もあるんですよ。

 何人もの被害児童がそういう姿態を何回も晒されているのに、「包括して」なんてよく言えるものだと思います。熊本の児童は軽い?

 しかし、なんで奥村弁護士の事件だけ併合罪なんだよ?おれが嫌いなのか?立法者意思の代弁者なのに。

H16.2.10付起訴状
被告人は
1 平成15年10月8日ころ,の郵便局から,Aに対し,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるCD−R2枚をA方に郵便により発送し,同月10日ころ,同所において,これを上記 に受領させ,もって,児童ポルノであるCD−R2枚を代金5000円で販売し
2 同月22日ころ,前記郵便局から,Bに対し,児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるCD−R1枚及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるCDR1枚を,郵便局に郵便により発送し,同月23日ころ,同所において,これを前記Bに受領させ,もって,児童ポルノであるCD−R2枚を代金3000円で販売し
たものである。

H16.3.5付訴因並びに罰条変更請求書
1 同上
2 同上
3 販売の目的で,平成16年1月21日,被告人方において,児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるC D−Rl枚及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるCD−R2枚をそれぞれ所持したものである。

判決H16.3.24 
(法令の適用)
1(1)罰条
包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関するする法律7条1項,2項

東京高裁H15.6.4 MAC判決 上告中(判決出ない)
 まず,①の点は,児童ポルノ製造罪及び同所持罪は,販売等の目的をもってされるものであり,販売罪等と手段,結果という関係にあることが多いが,とりわけ,児童ポルノの製造は,それ自体が児童に対する性的搾取及び性的虐待であり,児童に対する侵害の程度が極めて大きいものがあるからこそ,わいせつ物の規制と異なり,製造過程に遡ってこれを規制するものである。この立法趣旨に照らせば,各罪はそれぞれ法益侵害の態様を異にし,それぞれ別個独立に処罰しようとするものであって,販売等の目的が共通であっても,その過程全体を牽連犯一罪として,あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない。