児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

武田 誠「猥褻物頒布・販売罪--刑法175条」

 刑法175条について、文言上公然性が要求されていないのにという指摘があります。
 児童ポルノ罪は、法益が違いますから、不特定多数性・公然性は必ずしも要求されません。
 その意味で、現行法が公然性を要求しない陳列罪を設けなかったのは、規制漏れですね。 
 電磁的記録が客体になりましたから、公然性も各々の電磁的記録毎に要求されます。このデータはaのみに、このデータはbのみにというと公然性がないことになり、潜脱できます。

論題 猥褻物頒布・販売罪--刑法175条
著者 武田 誠 (タケダ マコト)
請求記号 Z2-17
雑誌名 関西大学法学論集
The Law review of Kansai University
The Hogaku ronshu
出版者・編者 関西大学法学会 / 関西大学法学会 編
巻号・年月日 39(6) [1990.03]
ページ p1595〜1649

ISSN 0437-648X
本文の言語コード jpn: 日本語
記事分類コード B62
雑誌記事ID 131694100

若干の考察
判例によれば、頒布、販売とはそれぞれ不特定または多数の人を相手にする無償、有償の交付、公然陳列とは不特定または多数の人の観覧することのできる状態におくことを意味することが、これまでの考察で明らかになった。頒布、販売については文言上公然性が要求されていないのであるから、特定の一人を相手に一度の無償あるいは有催の交付がおこなわれたとしても、頒布、販売罪が成立すると解釈されても不思議ではないはずである。にもかかわらず判例の解釈によれば、嶺布、販売についてもその相手方が不特定または多数人であるとされている。そのように解釈する必要があるとされる根拠についてもすでに明らかにしておいた。すなわち、たとえば⑦判決によれば、刑法一七五条の保護法益である社会生活上の秩序の維持のため猥喪物が公表されることを禁止する必要がある、つまり、それが広く社会にいきわたることを禁止する必要がある。そこで販売罪(ならびに頒布罪)が成立するためには公然性が要求されるというのであった。結局判例によれば、社会生活における性秩序の維持という前提のもとに、それが抽象的にも危胎化されれば処罰が必要である、という論理が提示されているもののように思われる。